システム科学(東京都文京区、石橋博史社長、03・6632・7811)は7月15日に同社研修室で「業務プロセスの可視化で生産性アップ! 管理・間接部門の改善必勝法」(日刊工業新聞社・可視経営協会協賛)の体験講習会を開催。当日は全国から企業経営者やホワイトカラー層の管理職ら44人が参加。
セミナーでは「業務の見えない、測れない、改善できないの『3ない』の解消が重要」と指摘した上で、仕事をチャート化することで可視化、ムダを省いて生産性をあげる同社独自の手法「HIT法」の理論を石橋社長が解説。
午後は田代敏也取締役が具体的なツールについて実践的な講習会を開催。取り組んだ企業の中には、生産性が3倍にも向上した事例もあるという、当日の講習会の内容(一部抜粋)を紹介する。
今回の講習会のテーマは業務の3ない(見えない・測れない・改善できない)を解消することです。午前中は講義形式、午後はオペレーション業務を行って貰います。今回は日刊工業新聞社の皆さんにお手伝いをして貰っていますが、資料の中にある「工場管理」で4回の連載を行っています。時間の限られた講義となりますので、先ほど会場で放映していたDVDも「上司を説得できない」という参加者の要望に応えたもので、ぜひご活用頂きたいと思います。
本日は役員、部課長以上の方が30名、係長や主任が8名、担当者が6名が受講されています。導入を検討されている企業が24社、ニーズとしては業務の可視化が21社、意識改革・効率化・生産性向上・ムダとり改善が21社、マニュアル化と人材育成が4社となっています。
今は少子高齢化社会ですが、経営者は皆さんのような優秀な人材が欲しいと思っています。やりたいことが一杯あるが、人材がいない、外注するしかないと聞きます。「人材がいないのではなく育て、勉強や機会を与えていないのでは」と尋ねると、方法論が無いという話になります。
一昨年に『トヨタ方式 ホワイトカラーの業務改善 最少人数で最強組織をつくる(ダイヤモンド社)』を出版、出席者の中にも読んできたという方がいます。今回はそれにプラスして、「業務の3ない」を解決するHIT法を紹介します。
HIT(ヒット)法は野球でいう所のホームランではなく、単打を積み重ね、継続できるツールとなっています。今までの改善活動との違いは、自身の仕事を評価できる仕組みになっている点です。成功を組織三者(経営者・管理者・担当者)が同一目線、同一活動を行って情報を共有、成功を三者が同時に実感できる活動にしていかないと意味がありません。
次になぜ生産性が3倍になるのかというと、業務改善により1/2を創出、新規事業に投入することで可能となります。仮に会社で10人の社員がいた際に、仕事のミスマッチなどで2人は課長さんが不要と感じる人材です。そのまま削減するのがリストラですが、ルーティン業務を任せておくのに惜しい人材を新規事業に送り込むことで、人材の有効活用を図ることができるのです。
業務改善を進めていく上で大切なのが、繁忙期と閑散期をどう解決するかです。基本はOJT(実務訓練)など業務の多能化により応援体制を構築、全体の最適化を図ります。
HIT法では責任や役割を明確化、その分担が決まると権限の範囲が決定。個人完結という発生時点処理を行っていくと、ドラッカーは「2、3倍の仕事ができる」と評価してくれています。これから話すチャート方式では、管理や情報の流れが一気通貫で分かる仕組みとなっております。
基本的にこれからの話は部長・課長さんは裏方になって、「部課長さんが下手なら、社員が頑張ってやる」という演出が大切です。一緒にHIT法をやると、若い人たちはゲーム感覚で行い改善や意見を出してきます。
モノづくりの現場では、ラインの速さと機械の性能で能率・生産性・品質が決定します。ホワイトカラーの場合は、皆さんの頭に情報が蓄積されていますが、その情報がオープン化されていません。業務プロセスを可視化するには、文字・時間・図で表記します。
基本は1日8時間と決めて、8時間でどう使うかということです。業務の目的を時間で捉えることで、人数・コストが決定します。
常に締め切り時間に追われるマスコミ業界さんでは、その机は資料で溢れています。1日分の仕事を机の上に置いてすることで、発生した日に仕事の処理を行う発生時点処理がなされています。
学生時代の私は、試験勉強や提出書類など課題があっても「明日がある」と思ってアルバイトに一生懸命だった。その後悔が私のブレーキとなり、その日にやることはその日の内に行う努力を現在も続けております。
皆さんも若いころを思いだして、自分ができる行動モデルを作って貰いたいです。この処理単位が「1アウトプット」になります。これをどう管理・処理しているのかは当事者でないとわかりません。数時間も研修すればできることですので、社員の方にやって貰います。そして管理者である皆さんは、HIT.3sという統合ツールで体系を作成、全体把握を行って貰います。
1ドキュメントは作成・検査をしてファイリングするという一連の流れとなります。担当者が管理ファイルに入力、この一単位の工数時間を30分以内にすることが大切です。その際に6カ月以上業務に従事した経験のある社員が、中断せずにできる時間を「チャンピオン工数」とします。
人間は不完全な生き物です。仕事を30分継続すれば、一息が必要となります。また、ミスなども発生します。その際に前任者は仮に10分で行っていることが、後任が20分必要だとします。その差を年間目標や賞与に結び付けることで、改善などの競争原理も発生し、管理者が楽で担当者にも納得感のある管理となります。「この手法は機能的に正しく処理時間の比較ができる」とドラッカーは評価してくれています。
最後にHIT法を使った業務改善の事例をご紹介したいと思います。その会社は大手自動車部品のY社という会社で、北米の工場でこの仕組みを導入されました。日本からも応援するということになったのですが、会議では「人がいないので採用してください」という要望が出されました。その時に社長がこのデータを持って、半分の人員を国内から出すという方針になりました。私はシステム構築が不完全だったので猶予を求めましたが、待てないとの判断で国内は半分となりました。
けれど逆にそのことで役割・分担が明確化、「ちょっとこれやって欲しい」という目的外業務がゼロとなりました。また2カ月も経過しない内に「もっと私はこれ以上にできます」という意見が出され、収益構造や売上が向上。HIT法は国内人材を海外に向け、短納期を行うその改善活動の根拠となる武器にもなります。
午前中はHIT法の考え方を中心に石橋から講義があったと思いますが、午後はその特徴でありますシステムツールを紹介させて頂きます。ツールとしては①HIT手法の中核であるSチャートを使った改善技術、②業務体系図をベースとしたブロックチャート(Mチャート)、③会社全体の流れを再構築、システム開発につなげるBPR、④リスクマネジメント分析、個々の業務の役割分担やスキルを一覧化したスキルマトリクスなどがあります。パソコンを使ってツールを体験して貰いたいと思います。
最初に機能を把握するSチャートを体験して貰います。HIT法では、改善を行ってからマニュアル作成します。なぜSチャートというツールを使うのか、出席者の中でも関心が高い。では逆にツールがなかったらと仮定して「企画書を作成し、課長と協議する。修正した企画書を課長に提出する」という文があったとします。理解できないことはありませんが、改善を行う情報が不足しています。
例えば企画書はどんなソフト、参考資料は、協議の方法は、提出書類は紙か電子メールかなどです。
下図のようなSチャートを作成するには不足した情報が分からないと書けない仕組みになっているため、Sチャートを書くことで改善に必要な業務を可視化をすることができるのです。またSチャートの業務は人ではなく機能に付随するため、目的語・主語・動詞という「何に、誰が、どうする」という読み方をします。基本活動でSチャートは18の記号で表記。その中で記載、転記、検査、検索、運搬、押印サインがムダの着眼点となります。