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ネットワーク総合エンジニアリング企業を目指す
NTT-MEは、NTT東日本の子会社として99年に発足した。IP-VPN(インターネット・プロトコルによる仮想私設通信網)やIP電話、インターネット接続サービスなど、グループのIP事業の先駆者として、新しい領域を拡大してきた。そして、05年夏のNTT東日本の事業再構築のなかで、NTT-MEには、グループ各社との連携による事業開拓という新たな役割も与えられた。新体制で目指す事業の方向を大木一夫社長に聞いた。聞き手は千野俊猛日刊工業新聞社社長。

ワンストップでサービス提供
千野:
NTT-MEは05年7月に大きな組織改革をしましたね。

大木:

親会社のNTT東日本が本格的な光ファイバー回線、インターネット・プロトコル(IP)時代に対応することを目指した組織の大幅な見直しをしました。そのなかで、NTT東日本にいたエンジニアリング部隊の一部が移管され、当社がNTT東日本のネットワーク構築や運用を担ううえで、重要な役割を果たすことになりました。
千野:
新しい事業コンセプトとして、「ネットワーク総合エンジニアリング企業」を打ち出しました。

大木:

当社には、大きく二つの柱があります。一つはNTT東日本の基幹ネットワークを構築し、24時間365日保守することを目的とするネットワークサービス事業。もう一つは、その技術を生かして法人ユーザー様にシステム、ネットワークのインテグレーション、運用・保守をトータルでサポートするネットワークビジネス事業です。どちらも共通するのはネットワークの技術を中核にしてシステムとネットワーク、その後のオペレーション、メンテナンスをトータルでサービスする総合的なエンジニアリング力を基礎としていることです。ネットワーク構築を企画から運用・保守までトータルで行える会社はそう多くはありません。また、全国のグループ会社を通じて全国をワンストップで提供できることも強みです。
千野:
売上高とその内訳はどうなっていますか。

大木:

約1000億円の売上高のうち、NTT東日本からの受託と、外部の法人顧客からの売り上げがほぼ半分ずつです。今後は法人顧客向けで新しい領域を開発し、売り上げも拡大させていきたいと考えています。高信頼なインフラ技術を法人向けに発揮することが、NTTグループ全体の戦略としても求められています。
▲NTT-MEの企業コンセプト

法人向けソリューション事業を強化
千野:
法人向けのネットワークビジネス事業には、どう取り組みますか。

大木:

お客さまの今抱えている経営上の課題を理解し、それを当社のIT技術で経営変革のお手伝いをするという発想で取り組んでいます。なかでも、広域ネットワークの提供は、ユーザー拠点の構築は場合によっては全国何千カ所も必要で、日々の運用の監視やトラブルがあればその対応もします。そのためにユーザー拠点に当社のエンジニアを常駐させる対応もしています。今はフルアウトソーシングだとか、顧客のサーバを預かるデータセンターが普及しています。餅は餅屋にまかせようという発想が顧客に普及しています。それだけに、お客さまの立場にたったサポートをするところまで輪を広げていることが求められています。
千野:
法人顧客向けへの取り組みとして、ソリューション事業強化を掲げていますね。

大木:

ソリューションで大きな存在感のある企業になっていくことを目指しています。そのなかでも、『セキュリティー』、『地図情報』、『金融情報』、『マンション光化』の4分野を重点ソリューションとして強力に推進していくことにしています。
千野:
セキュリティー分野ではどういう展開があるのですか。

大木:

顧客のネットワークの脆弱(ぜいじゃく)性を診断し、必要な対策を提示するコンサルティングからはじめ、具体的なサービスの構築から運用までをトータルで提案していきます。特に個人情報保護の観点から顧客情報を外部に持ち出したくないというユーザーが増えており、シンクライアント(ネットワーク経由でサーバと接続することで、端末側に情報が残らない仕組み)へのニーズが増加しています。
千野:
地図情報ソリューションはどういうものですか。

大木:

NTT-MEには、全国に加入電話網を整備するために独自に作成した地図情報を作るノウハウがあり、それを電子化した電子地図データベースがあります。住宅地図レベルで全国を網羅した国内唯一の電子地図といえるものです。このデータベースを活用して提供する地図情報ソリューション『GEOSPACE(ジオスペース)』は、地図に顧客側の情報を連携させることで、設備管理や位置確認ができるなど、ユーザーの目的に応じたカスタマイズ化にも対応するさまざまな活用が可能なシステムです。

NGNの実行部隊
千野:
今後新たに取り組む分野はなんですか。

大木:

NTTグループ全体で取り組むNGN(次世代ネットワーク)について、構築段階から積極的にかかわっていきます。NGNの運用、保守の多くは当社が担うことになるので、早い段階から技術に習熟することが重要だからです。  さらに、中期的にはNGN上で展開されるサービス、例えばFMC(固定と移動体通信の融合)や通信放送融合で生まれる新しいサービスの提供も進めていきます。技術的、制度的に難しいところも多い分野ですが、チャレンジしていきたいと思います。

将来見据えた人材育成
千野:
IP技術者を育成することが課題になりますね。

大木:

12月にNTTグループが始めるフィールドトライアルに開発段階から技術者を投入し、実践の場で鍛えていくつもりです。そういう人員がコアとなって、NTT-ME全体に技術を広げていきます。構想段階ですが、実技にたけた年長の技術者の技能を、研修やトレーニングを通じて若手に実践的に教えていくための社内のトレーニングセンターを充実させるなど、人材育成策も導入したいと考えています。技術者は一朝一夕には育成できないので、今の段階から先を見据えた対応が必要です。キャリアネットワークを構築するノウハウは、IPになっても電話ネットワークに取り組んできたベテランのノウハウが不可欠です。IP技術そのものではなく、どうオペレーティングをしていくのか、大規模ネットワークの高品質、高信頼性を維持するうえで留意すべきことは何なのか。こうしたノウハウを、若い人のIP技術と融合させていくことがポイントになる。IPのこの製品に詳しいというだけでは、キャリアの高信頼ネットワークは作れないのです。

活力がでる環境を構築
千野:
大木社長が課題として社員に訴えていることはなんでしょうか。

大木:

行動指針として、『お客さまの立場で自ら考え、お客さまのためにスピーディーに実践』、『自由闊達(かったつ)なコミュニケーションで新たな知恵を創出』、『組織の壁を乗り越え、課題解決にまい進』、『スキル向上へ常に挑戦』という4つの方針を掲げました。常にお客さまの目線を大事にしようと言い続けています。お客さまの立場になって今やっている仕事をチェックする。  こうあってほしいと思われていることを提案していく。これらを突き詰めていけば、自ら“変えていく”ということだと思うんですね。確かに変えることは大変ですが、変化を楽しむぐらいの気概を持ってやっていこうと。また、今は変化の時代であり、技術、サービスもどんどん変わっていきます。そういうときこそみんなの思っていることを言い合って知恵を出し合い、力を出し合って挑戦していかなければなりません。  NTT-MEはプロフェッショナルな技術者集団であり、プロの技術への挑戦をDNAとして持っています。  日々自分の技術力を高める努力を続けていこう。そしてそのことが社員一人ひとりにとっても向上につながることにもなります。

安心・安全・信頼で差別化図る
千野:
高い技術や技能を事業に生かしきることが必要ですね。

大木:

特にネットワークの技術変化が激しいので、それに向けた人をどう育てていくのかが課題です。電話技術は世界でもトップクラスですが、IP技術では安閑としてはいられません。NTTグループのブランドは安心、安全、信頼のサービスを提供することで成り立っているのですから。電話でもNGNでもそれが競合他社との一番の差別化につながります。社員も安心、安全、信頼へのプライドをいい意味でのDNAとして持っています。若い社員にも、是非それを引き継いでいきたいと思っています。
千野:
ますますのご発展を期待しています。本日はどうもありがとうございました。

千野 俊猛

日刊工業新聞社
社長 千野 俊猛

大木 一夫氏
株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー
社長 大木 一夫