ユニアデックス株式会社
代表取締役社長 高橋 勉

日本ユニシス・ソリューション株式会社
代表取締役常務執行役員 

◆IT投資も回復基調にあります。実感としてはどうでしょうか。

高橋:

景気も回復し昨年半ばあたりからIT投資も上向いてきている。情報通信技術(ICT)は経営に直結しており、企業の事業運営における重要性は高い。ただ、顧客からはITコストを削減したいという要求も高まっている。いかにコストメリットを出すかがベンダーの手腕にかかっている。

高木:

システム開発では特に流通・サービス業界と金融業界のIT投資は活況だ。技術者の人手不足が課題として顕在化するほど。特に上流のコンサルティングをできる人材などは不足している。

高橋:

ネットワークや保守・運用サービスなどは、中堅・中小企業を中心にアウトソーシング(外部委託)するニーズが伸びている。そのため、データセンター(IDC)需要は逼迫(ひっぱく)してきている。この傾向はこれからも進んでいくだろう。
◆投資が順調な一方、顧客ニーズも多様化し、対応するベンダーへの要求も複雑になっているように思います。

高木:

顧客満足度調査を見ても、『決して満足していない』というのがこの業界の評価になっている。これはITを導入することで、顧客のビジネスがどう発展するかのか、どんなメリットがあるのかを明確な形で提示できていないからではないか。IT業界全体が外部から見て、あまり良く映っていないようにも思う。

高橋:

顧客によってもニーズが異なる。1分たりとも止められないミッションクリティカルなシステムとそうでないシステムでは、求められているものが違う。当然、コストをかければ良いものができるが、投資対効果(ROI)もある。顧客が何を求めているかを理解し、顧客の要望に合致するサービスを提供することが重要であり、提供するサービスレベルを『サービス品質保証制度(SLA)』として厳密に結ぶことが必要となってきている。

高木:

IT投資が回復するなか、もっと“売り手市場”になっても良いはず。それが価格に反映されていない。構築したシステムに対して、きちんとした対価を得る仕組みを考えないといけないだろう。

◆ユーザー側はどうあるべきなのでしょうか。

高木:

メーンフレーム(大型汎用機)から、オープン系システムに変わるなか、顧客側にシステム開発の経験者がなく、必ずしもITを熟知していないケースも少なくない。顧客は納期と品質のみを発注するため、ベンダーと“ボタンの掛け違い”が起こる。何がリスクで、どんな影響を与えるおそれがあるのかなど、あらかじめ両者で決めておき、理解を共有して物事を進めることが必要だ。こちらも言うべきことは言わないといけない。実現するのは難しいが、理想は顧客の経営理念や戦略を共有することだ。
◆改めてITの品質が問われているようにも思います。

高橋:

日本ユニシスグループはサービス品質に特に重点をおいてきた。ISO9001を取得しマネジメントシステムをさらに強化するとともに、保守・運用業務においても培ってきたノウハウや仕組みを国際標準「ITIL」に準拠させることで、顧客にゆるぎない安心感を持っていただけるよう努めてきた。

高木:

当グループでも品質保証部を設置した。品質に関して規定を設け、規定に到達するよう努力している。これはシステム構築サービスで品質を高めるのが目的だ。ゆくゆくは営業品質や運用品質など、システムのライフサイクルに合わせて品質を高める取り組みをしていきたい。
システムエンジニア(SE)は言い換えると、専門的な技術をもった“宮大工”。技術をビジネスに結びつけるには、技術を共有する仕組みが必要だ。

◆もうひとつの課題として、人材不足が表面化していますね。有効な対応策をどう考えていますか。

高木:

人材は不足している。その人数確保の手段として、オフショア(海外委託)開発がある。技術を育成し、戦力として取り込みたい。だが、本当に必要なのは上流のコンサルティングサービスなどの部分。ここがボトルネックになっている。これには日本の商習慣や文化と密接にかかわっており、オフショアでは解決できない。やはり業界としていい人材を呼び込み、育成していかないといけない。

高橋:

アウトソーシングのニーズは高まるなか、保守・運用業務に関しては人材が生命線。技術は無論のこと顧客の要望を深い部分で把握できる人材が必要であり、人材育成を強化している。また一方で、良い人材が集まるようより魅力ある業界にしていきたいと思う。

高木:

人材を呼び込むにはやりがいや自己の成長が感じられるかどうか。開発スケジュールがタイトになるなか、プロジェクト終了後人材教育のスケジュールを組み、次のプロジェクトに一定期間割り当てないで育成するなどメリハリが必要だ。
◆内部統制の議論が盛んです。内部統制を実施する上で助けとしてITの役割は高まっています。一方でIT自体の信頼性も問われています。

高橋:

企業が内部統制を厳守するために、ITの役割は大きい。資産管理などを効率的に管理することにもつながるからだ。当社としても、顧客にとって何が最適化を提案していきたい。

高木:

企業が存続していくなかで、リスクをどうヘッジしていくか。それをITとしてやっていくことが重要だろう。ITの役割は増している。





上昇気流TOP