日刊工業新聞


“大人が読みたい”シリーズ 
書籍ご紹介ページ

日刊工業新聞社より2017年春から秋にかけて発売となりました 『大人が読みたい ニュートンの話』、『大人が読みたい アインシュタインの話』、『大人が読みたい エジソンの話』(ジャーナリスト石川 憲二著)をご紹介する特設Webページです。

著者 石川憲二氏
ニュートンのリンゴ?
と石川憲二氏
知らなかったエピソードはまだまだある!
偉大な科学者に学ぶ “世渡り上手”への道

 お菓子やアニメ、玩具など子供を主な対象にしたマーケットに「大人向け」の商品投入が相次いでいる。たとえば、チョコレート菓子の場合は従来品に比べて甘さを抑え、香り高いフレーバーを用いることで高級感を出すといった具合だ。幼少時に慣れ親しんだ嗜好品が、大人向けにアレンジされることで新たな市場が創造されることになる。

 もしかしたら子供の頃、夢中に読んだ偉人たちの「伝記」も、その中の1つに位置づけられるかもしれない。多くのジャンルで先駆者を讃える読み物が残されているが、科学分野で最も人気のある伝記と言えば、エジソンをおいてほかには見当たらないだろう。

 数々の功績を残したエジソンは100年以上前の時代を生きた人だったが、いろいろなことを誇張しなければ勝ち抜いていけなかった当時の事情と面白おかしく伝えたい語り部の恣意的な作為により、伝記に書かれた内容が事実と異なることは多いという。これはエジソンに限ったことではなく、偉人の伝記は概して似たような傾向にあるようだ。

 そうした中、科学技術ジャーナリストの石川憲二氏は、従来の伝記とは異なる大人に読んでほしい伝記シリーズをまとめた。「子供がストーリーを理解するのを優先して、無理矢理エピソードに仕立てた”史実”が結構ある。さまざまな情報を照らし合わせて新しい見解を示すことは意義深いし、大人にとってタメになるだけでなく、新たな面白さに気づくような発信もあるはず」と着想の経緯を語った。

 シリーズに登場するのは、エジソン、アインシュタイン、ニュートンといずれも日本人に馴染みの深い科学者。3人とも並みのレベルの天才ではないが、努力や苦労も当然人知れず積み重ねている。そんな努力や苦労が長続きしたのは、類いまれな集中力に加え、一点集中ではなく他物にも執着する力と、その切り換えを自在にこなせた点が共通項という。いつまでも同じことにこだわっていると出世できないのは、その辺に理由があるのかもしれない。社会を支える大人にとっても新たなヒントが見つかる、心地良いほろ苦さを持った「大人の伝記」に注目したい。

 グリコのおまけではないが、アインシュタイン編には「10分でわかった気になる相対性理論」、ニュートン編には「重力について人類はどう考えてきたか?」とそれぞれ特別講座があって、ちょっぴり得した気分にもさせてくれる。

大人が読みたいニュートンの話 大人が読みたいアインシュタインの話 大人が読みたいエジソンの話
大人が読みたい ニュートンの話
ジャーナリスト石川 憲二が著す“大人が読みたい”伝記シリーズ 第3弾!

『大人が読みたい ニュートンの話』
万有引力の法則の「完成」はリンゴが落ちて22年後だった!?

偶然をチャンスに変え、必ず成果を引き出す人生力の磨き方

物理法則を中心に多くの功績を残したニュートン。その後は造幣局長官や国会議員を務め、女王から称号を授かるなど成功を収める。一度決めたら突き進む一途ぶりは、錬金術や魔術などに傾倒する要因にもなった。そんな偉大な科学者ニュートンの足跡を軽快に綴る。日本にもあるニュートンの「遺物」もコラムで紹介されています。

体裁 四六判 136ページ 
定価 1,296円(税込)
発売日 2017年9月

<第2章「万有引力の法則」発見に伴うエトセトラ>より 
「リンゴで発見」は本当か嘘か?

A School Compendium of Natural and Experimental Philosophy

1726年4月15日、83歳の老ニュートンは友人である作家のウィリアム・ストュークリという人物と昼食を共にした。食後、たまたまリンゴの木が植えてある庭でお茶を飲んでいたとき、突然、「今の状況は重力について考え及んだときと同じだ!」と話し始めたという。その内容はストュークリにとっても初耳だったため、慌ててメモを取った。そのときの様子を、1752年に出版された彼の著書『Memoirs of Sir Isaac Newton's Life(アイザック・ニュートンの人生回顧録)』から抜粋する。


after dinner, the weather being warm, we went into the garden, & drank thea under the shade of some appletrees, only he, & myself. amidst other discourse, he told me, he was just in the same situation, as when formerly, the notion of gravitation came into his mind.
“why should that apple always descend perpendicularly to the ground,” thought he to him self: occasion'd by the fall of an apple, as he sat in a comtemplative mood:“ why should it not go sideways, or upwards? but constantly to the earths centre? assuredly, the reason is, that the earth draws it. there must be a drawing power in matter. & the sum of the drawing power in the matter of the earth must be in the earths center, not in any side of the earth. therefore dos this apple fall perpendicularly, or toward the center. if matter thus draws matter; it must be in proportion of its quantity. therefore the apple draws the earth, as well matter; it must be in proportion of its quantity. therefore the apple draws the earth, as well as the earth draws the apple.”


食事のあと、暖かい日だったので私たちは2人だけで庭に出て、リンゴの木の陰でお茶を飲んだ。会話が続くなか、彼はこんな話をしてくれた。
 これはあのときの状況と同じだ。その昔、重力の概念が私の心の中で生まれたときと変わらない。あのとき私は、こんなふうに考えた……。

「なぜ、リンゴはいつも地面に対して垂直に落ちるのか? なぜ、横に行ったり上に行ったりせず、地球の中心部に向かって確実に落ちていくのか? その理由は、地球が引っ張っているからであり、そういった力がなければこんな現象は起きるはずがない。そして、この引力は地球の側面(地面?)ではなく中心部から発生しているはずだ。だから、リンゴは地球の中心部に向かってまっすぐに落ちていく。いや、引力というのであれば、地球がリンゴを引っ張っているだけでなく、リンゴも地球を引っ張っていると考えるべきだろう。そしてその大きさは量(質量?)に比例する」(筆者による意訳)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (中略) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ここまで調べ、考え込んでしまった。

 ニュートンの家にあったのは一般的なリンゴの木だと信じていたので、収穫の季節になる と真っ赤に熟した実がいくつも枝にぶら下がっている光景を勝手に思い浮かべていたのだが、どうも違うようだ。成っているのは料理にしか使えない地味な果実であり、そして、気が付かないうちにバラバラと地面に落ちている。

 ここまで調べ、考え込んでしまった。

 すると、こんな展開も考えられる。

 ある朝、ニュートンは窓を開けて庭を見た。夜中に強い風が吹いたのか、リンゴの実がいっせいに落ち、あたり一面に散らばっている。それはまるで地球に貼り付いているかのようだ。もしかすると、リンゴと地球は引きあっているのかもしれない……。

 もちろん、これは妄想であり、ニュートンが話した内容とも少し異なる。しかし、1年以上、ウールソープにいたのだから、こんな光景を目にしていた可能性は高く、そこから「落下とは何か?」と思いを巡らせたとしてもおかしくはないのである(「いきなり目の前に落ちた」よりはありそうなシチュエーションだ)。

 そんなわけで、リンゴのエピソードに関する筆者の見解は「1周回って意外とあるかも」である。少なくとも完全に否定できる話ではないし、身近なリンゴで説明するほうが子供たちにとっても馴染みやすいのだから、これはこれで「もう正解でいいです」としてしまい、先を急ぐことにしよう。

〈目次〉

【プロローグ】 ニュートンがリンゴで発見○○○○
【第1章】 ニュートンは松尾芭蕉と同時代の人
【第2章】「万有引力の法則」発見に伴うエトセトラ
【特別講座】重力について人類はどう考えてきたか?
【第3章】近代科学の父か、最後の魔術師か?
【エピローグ】エピローグ ニュートンに学ぶ人生設計術

書籍『大人が読みたい ニュートンの話』は、全国の書店や、各種オンラインのブックストアで購入いただけます。 下記はその一例です。

大人が読みたい アインシュタインの話
ジャーナリスト石川 憲二が著す“大人が読みたい”伝記シリーズ 第2弾!

『大人が読みたい アインシュタインの話』
エジソンの発明と相対性理論の意外な関係

笑わない天才が舌を出した理由、知っていますか?

孤高の天才と称されるアインシュタインだが、実は人並みはずれた集中力で天才に上り詰めた愚直な学者だった。天才らしからぬ子供時代や受験の失敗、女性トラブルなど人間臭い部分にも触れつつ巧みな処世術に迫る。これ以上はない、わかりやすい相対性理論の解説にも注目。カーナビやスマートフォンで利用されるGPSと相対性理論の関係とは?

体裁 四六判 136ページ 
定価 1,296円(税込)
発売日 2017年7月

『第2章 光への興味から始まった相対性理論への道』の本文から一部抜粋

 ところで、アインシュタインが、いつ、相対性理論につながる発想をしたのかという点に関して、多くの資料では「まだ物理学を志す前に光についていろいろ思いを巡らすようになったことがきっかけになった」と説明している。ただ、その時期はあまりはっきりしない。そこで、筆者なりに想像を巡らしてみたところ、このジェノバ行きが大きく関係しているような気がしてきた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (中略) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 若きアインシュタインにとってもジェノバの明るい光景は強い印象を与えてくれたはずだ。それまで見たことのない量の光が周囲に溢れ、イタリアらしい彩りのある町を包んでいく。まさに光のハーモニーであり、感受性の強い年代だったことを考え合わせると、感動は相当に大きかったと思う。

 ただしそこで「きれいな景色だなあ」とセンチメンタルに浸るのではなく、冷静に物理学的な考察を始めたのだとしたら、やっぱり彼は天才だったのだろう。そんなわけで、多少、強引な解釈ではあるものの、本書では「相対性理論の発祥の地はジェノバ」説を主張したい。

〈目次〉

【プロローグ】 笑わない天才が舌を出した理由
【第1章】 夢も希望も感じられない子供時代
【第2章】 光への興味から始まった相対性理論への道
【特別講座】 10分でわかった気になる相対性理論
【第3章】 アインシュタイン博士の日本旅行記
【第4章】 天才科学者の「晩年」はいつから始まったのか?
【エピローグ】 天才とは人生における「選択と集中」ができる人である
【参考図書/参考資料】
大人が読みたい エジソンの話
ジャーナリスト石川 憲二が著す“大人が読みたい”伝記シリーズ 第1弾!

大人が読みたい エジソンの話
 発明王にはネタ本があった!?

蓄音機や電話、電球などを生んだエジソン。幼少の頃に出会った一冊の技術解説書がその後、彼を発明人生に導いたことはあまり知られていない。天才肌で孤高の存在というイメージとはひと味違う、合理的で商才に長けた思考と行動の数々を痛快なタッチで綴る。

体裁 四六判 144ページ 
定価 1,296円(税込)
発売日 2017年3月

『第1章「未来へのレール」となった1冊の本』 の本文から一部抜粋

A School Compendium of Natural and Experimental Philosophy

■1冊の本との出会いが発明王への出発点

 

 子供時代にたくさんの本を読んだ(読まされた?)エジソンだが、当時の彼がもっとも興味をもち、大きな影響を受けたのがリチャード・グリーン・パーカーという著者の科学入門書『A School Compendium of Natural and Experimental Philosophy』(以下、『自然と実験の哲学』とする)であることは多くの資料が記している。ところが、それほど重要な1冊でありながら、これまで詳しく解説されることはなかった。このため、エジソンの生涯を探るうえでミッシングリンクのような存在になっていたのである。  

 ところが、今回、筆者はその本を入手することができた。したがって、ぜひ紹介していきたいのだが、その前に、ここに至る経緯を説明しておく必要があるだろう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (中略) ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 話を戻そう。

 『自然と実験の哲学』の最大の特色は、物理や化学の基礎からそれらの応用によって生まれる最新の技術まで幅広く紹介している点だ。もともとは高校あたりで教科書に使われることを想定して書かれたらしいが、特定の分野にこだわらない姿勢は斬新に感じる。

 さらに展開が見事で、読み進めるうちに「科学の知識があれば、それらを進歩させたり、それぞれを組み合わせたりすることで世の中を便利にする画期的な装置を生むことができる」と気づけるようになっている。もしかして著者は、将来の発明家に向けてこの本を書いたのかもしれない。

 しかも、一つひとつの項目は10行程度の短い文章で説明されているうえ、挿絵も多いので、おもしろそうなところだけ拾い読みすることができる。何にでも興味をもつエジソンにとっては、おあつらえ向けの本だったはずだ。

 彼がこの本を手にしたのは10歳のころだと思われる。高尚な文学書や難解な歴史書に飽き飽きしていたのか、すぐに夢中になり、何度も読み返しただけなく、書かれていることを確かめようと自宅の地下に実験室までつくってしまった。その後、電信技師として独り立ちしたあとも下宿に戻れば実験ばかりしていたそうだし、発明家になってからも実験室に泊まり込んで作業を続ける毎日だったから、エジソンの人生はこの本との出会いによって方向づけられたと言っていい。

〈目次〉

【プロローグ】虚像から実像へ、エジソンの真実に迫る
【第1章】 「未来へのレール」となった1冊の本
【第2章】 エジソンのエピソードは疑ってかかれ!
【第3章】 発明家としてのエジソン、実業家としてのエジソン
【第4章】 正しく知ろう「エジソンは偉い人」
【エピローグ】 天才は、ひらめきと努力でできている
【お問い合わせ】
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