経費精算業務をIT化する企業が増加している。経費精算業務のIT化により、業務の効率化や労働コストの削減を実現し、社員の負担を減らすことで本来の業務に専念させ、企業成長をもたらすことができるためだ。また経費精算業務のIT化と同時に法人カードを導入し、経費精算システムと連携させることで、更なる精算業務の効率化や経費の透明化も可能になる。こうした魅力に注目する企業が増える一方で、まだまだ導入に踏み切れない企業も多い。本日は、そのような企業のために経費精算業務のIT化によってもたらされるメリットを詳しく解説する。
そもそも経費精算業務とは企業にとって、どのような意味があるのだろうか。一社員にとっては交通費や出張費など日々必要となる経費を経理部門に申請する、定期的かつ煩雑な作業といえる。時間のかかる手書きやエクセル入力の申請方法を採用している企業はいまだ多く、本来の業務に費やすべき時間を割いての業務になる。書き間違えた伝票を破り捨てたことは、誰でも一度ならずあるだろう。こうした業務は社員にとっては大きな手間になるため、申請の滞りも発生してしまう。
経理部門には手書きやエクセル入力された伝票が申請される。入力ミスや計算間違えもあるので、経理担当者は一つひとつチェックしていく必要がある。例えば、交通費の申請では最適なルートで申請されているか、定期区間が含まれていないかといった社員ごとの条件も加味しながらの確認作業となる。確認ができたら、それを基に会計ソフトへの入力などに移る。再び経理担当者によって申請内容と同じ内容が入力されるという手間が発生する。
経理部門の本来の役割は、「経営力強化」のための指針を提示すること。
グローバル化が進み、技術・製品の開発はスピードが勝負と言える時代になった。経営判断の意思決定には財務状況の把握があってこそ。そこで、迅速に経営判断に必要な情報を経営層にあげていくことが必要になる。経費精算業務は時間や手間など、経理担当者にかかる負荷が高い業務であるとともに、本来注力すべき業務への集中を妨げるため、効率化の見直しに取り組むべき重要な業務である。
クラウドサービスを提供するラクスが2013年に経理担当者800人に「経費精算業務のIT化」について調査した。その結果、経費精算業務をIT化している企業は2012年に2割だったが、2013年には3割に増加している。着実にIT導入企業が増えていることが分かる。一方、7割が手書きやエクセルで経費精算を行っているのも現状だ。
(2013年度)
経費精算業務のIT化で変わるのは、先ほども述べた通り、経費精算の単純作業の効率化だ。
例えば、交通費の計算をIT化すると、システムに内蔵されている乗換案内ソフトにより自動的に運賃が計算されるので、経理担当者は申請者から届いた申請内容を画面で確認して承認するだけで、計算の手間が一切なくなる。
こうした単純作業の煩わしさが低減されることで、本来の業務に時間を割け、集中できるようになる。そのため、仕事へのモチベーションにもつながり、時間や労力をより有効に活用できる。特に、人材が少ない中小企業にとって経費精算業務の効率化がもたらす効果は大きい。システムにはできない、人間だからこそできるクリエイティブな仕事にもっと重きを置ける。これらがもたらす効果は、IT導入のイニシャルコストだけでは計りきれない大きな可能性を持っているのではないだろうか。
業務の効率化を図れるにもかかわらず、手を付けていない企業は多い。その原因として、システム導入には高額なコストがかかると考えている企業が多いことが挙げられる。ただ、それはパッケージソフトや自社開発など高額になりがちなシステムだからではないか。
ラクスの経費精算システム『楽楽精算』は月額3万円からと低コスト。クラウドサービスのため外出先からもアクセスでき、利便性も高い。
価格だけでなく、機能にも注目してもらいたい。社員から上司に申請し承認を受け、経理担当者が精算・支払い処理、という一連のワークフローを全て電子化できる。承認は10ポイントまで設定が可能。例えば、役職や部署ごとに個人のワークフローを設定することや、申請内容の価格によって承認ポイントを分岐するなどの柔軟な設定も可能だ。
また、先ほどから述べている交通費の計算についても、乗換案内ソフトが内蔵されているため、交通費の計算作業の削減や、定期区間の自動控除が可能になる。加えて、交通系ICカードに対応しているので、カードリーダーに交通系ICカードをかざすだけで履歴を読み込め、申請データとして利用できる。申請されたデータは自動で仕訳され、会計ソフトに連携。会計ソフトに入力するための仕訳や銀行振り込みのためのデータ作成も自動化され、これまでの作業が大幅に改善できるのだ。
ラクスの井上英輔取締役・クラウド事業本部長は「当社も経費精算業務に無駄を感じていた。そこで、『楽楽精算』を開発・導入したところその当時の従業員数100名で年間570万円以上かかっていた経費精算業務コストが7割減の約160万円になった」と経費コストの削減を実証している。その後、会社の成長とともに社員数は3倍の300名に増えたが、経費精算コストは372万円にとどまっており、『楽楽精算』を導入しない場合にかかったであろうコストは年間1,457万円。それが約4分の1に圧縮され、1,085万円の削減効果が出ている。
導入する際の注意点として、井上取締役は「ITの知識が少ない人でも設定や操作がラクに行えることが重要。簡単に操作できるシステムが企業や社員にとっての使い勝手の良さ」と指摘する。新しくシステムを導入したことで、分かりづらい作業になってしまえば元も子もない。
このような問題に対し、『楽楽精算』は、直感的で使いやすい操作画面を提供し、誰でも簡単に操作できるようになっている。また、申請画面は高いカスタマイズ性を持ち、従来使用していた紙やエクセルの帳票体裁をほぼそのまま再現できるので、入力の際のストレスをできる限り低減することができる。
こうした利便性の高さから、『楽楽精算』の申込数は2013年と比較し、2014年は2倍以上に伸びている。現在、500社以上に導入され、5万人以上が利用している。井上取締役は「『楽楽精算』はクラウドサービスのため、月額3万円からで高機能なシステムが使える。導入コストとランニングコストの費用対効果は高い」と強調。限られた人材、時間、コストの中で、できるだけ多くの利益を出すための手段として評価され、導入実績を着実に積んでいる。
『楽楽精算』をより効率的に活用する手段として「法人カード」との連携が挙げられる。
法人カードには、法人一括請求「コーポレートカード」と使用者への請求「ビジネスカード」の2種類あり、どちらかを選択、または双方導入することが可能。企業のルールに応じて、選択できるよう柔軟性を持たせている。
コーポレートカードは仮払い廃止、内部統制強化などの課題を解決できるツールだ。コーポレートカードの導入により法人一括請求となるため、航空券やホテルの宿泊代などといった出張旅費費用における社員立替払いや仮払いの運用の削減が可能。現金管理のリスク軽減や振込手数料の削減が図れ、支払いのキャッシュレス化につながる。また、クレジットカード会社から明細書が還元されるので支払いが明確になり、経費利用が透明化される。
また、社員立替払い時に個人のクレジットカードを利用すれば、支払金額に応じてポイントやマイルなどが付加される。使う側にとってポイント・マイルなどは利用時の付加サービスであると同時に、企業が個人に利益をもたらすことにもなる。そのため、コーポレートカードを利用すれば企業から個人への利益供与を防止することができるなど、ガバナンスの強化を図れる。
一方、企業の規定により法人一括請求が合致しない、もしくは使い過ぎのリスクを懸念する場合は、使用者への請求のビジネスカードが最適。例えば、企業の出張ルールが「規定払い」の場合、実費と規定払いに差額が生じ、経理処理が煩雑になるので、「出張規定」に準じて経費として認められる金額を社員の口座に振り込む。
また、私的な利用、経費として認められない利用分の振込を省くことが可能。もちろん、ビジネスカードの利用明細を会社に提供するので、使用した内容が透明化される。社員の責任のもと、利用もしくは認められない利用分をクレジットカード会社が社員に請求するので、企業が負担することなく、懸念されるリスクを回避することができる。
他にも、海外出張時の両替の手間や手数料の削減、旅行傷害保険をはじめとする付帯サービスなど、社員や経理部門の効率化だけでなく、さまざまな場面で経費を抑えることができる。
こうした利点からも法人カードの利用企業は増加傾向にある。クレジットカード会社JCBの久保英朗東京支社首都圏営業一部部長は「法人カードの申込件数は内部統制、経費の透明性、そして業務の効率化などの課題解決により、前年比3割増加。経費申請の運用の見直しや透明化を図ろうと、法人カードを会社全体で導入する傾向が顕著になっている」とみる。
法人カードの利点を理解した上で、『楽楽精算』との相乗効果を説明する。JCBは『楽楽精算』と連携し、使い勝手を高めている。カードの利用日や利用金額などカードの利用明細の内容を、自動的に社員の『楽楽精算』申請画面に一覧で表示する仕組みを構築。社員は利用概要などの必要項目を補記して、申請を行なう。申請されたデータを経理担当者が確認し、承認するという流れである。JCBはカードの利用から原則、日次で『楽楽精算』と連携するため、最短で2営業日後には利用明細が反映されており、入力の手間を省き効率化ならびに精算の早期化を図れるのだ。
JCBと『楽楽精算』が連携することで、「そもそもの法人カードのメリットに付加価値をもたらすことができるので、相乗効果は高く、企業へのメリットはより大きい」(久保部長)。
経費精算業務の社内への負担を改めて見直すと、削減し効率化できる部分が多く見られる。業務改善を図り企業全体の効率を高めることが、企業価値の向上へとつながっていく。