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業界展望台

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循環型社会実現を目指す 廃棄物処理技術

4月16日(木曜日)付 日刊工業新聞 12面〜13面

 環境と経済が両立した循環型社会を形成していくため、廃棄物の発生抑制「Reduce(リデュース)」、再使用「Reuse(リユース)」、そして再資源化「Recycle(リサイクル)」という三つの取り組み、「3R政策」が浸透しており、その効果は着実に現れてきている。3Rを進めるためには最終処分となる廃棄物をどれだけ減量・減容することができるか。循環型社会の実現に向けた廃棄物処理技術の開発が進んでいる。

ゴミ総排出量は減少−3R政策推進が効果

 環境省は2015年1月、13年度の全国における一般廃棄物の排出および処理状況についての調査結果を公表した。一般廃棄物のゴミ総排出量は前年度比0.8%減の4487万トンと減少。また、1人1日当たりのゴミ排出量は同0.6%減の972グラムと微減だった。

 一方、ゴミの総処理量は4237万トンだった。内訳は焼却、破砕・選別などによって中間処理された「中間処理量」が3968万トン、再生業者などへ直接搬入された「直接資源化量」が212万トン。中間処理量と直接資源化量の両者で減量処理率は98.6%。中間処理されずに直接最終処分された量は57万トンとなった。

 環境省が廃棄物の排出と処理における基本方針でベースラインとしている排出量は1998年度の5310万トン。この数値は9年連続で下回ることができた。また、中間処理後に最終処分量として残ったものと直接最終処分となったものの合計である「最終処分量」も454万トンで12年度比2.4%減となっている。これまでに3R政策に取り組んできた成果がでているといえるだろう。

破砕・粉砕や分離・選別−メーカー各社、ノウハウ生かす

 廃棄処分となった家電やOA機器などから、金属を取り出し、再資源化する「都市鉱山」をはじめ、生ごみなどの廃棄物を処理してバイオエタノールやバイオメタンを取り出す「都市油田」などの3R関連の取り組みは今後、さらに進むだろう。そうした中、カギとなるのは破砕・粉砕技術や分別・分離・選別技術だ。

 廃棄物処理施設で破砕対象となるものは金属から樹脂、木材、プラスチック製品など材質は幅広く、サイズや重量もさまざまだ。そのため、処理施設に設置されている一軸回転破砕機や二軸回転剪断破砕機、ハンマー破砕機などでは堅牢(けんろう)さのみならず、メンテナンス性の高さ、安全性の確保といったことも重要となる。機器メーカーはそれぞれ独自のノウハウを蓄積した製品開発を行っており、破砕対象物の材質・形状・サイズ・重量に最適な回転刃や固定刃の材質、形状、取り付け方法などに反映されている。

 一方、東日本大震災とその後の東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、エネルギーの安定供給は大きな課題となっている。そこで進められている取り組みの一つが、つくったエネルギーをつくった場所で使うという「エネルギーの地産地消」推進。都市においてはゴミ焼却場での発電施設の有効活用も検討されている。

 ゴミ焼却施設は13年末で全国に1172施設。そのうち、余熱利用を行っている施設は全体の66.4%で778施設。発電、施設内の暖房、給湯、施設外への温水や熱供給が挙げられる。

 焼却設備の中で、発電設備を持つ施設は328施設。全体の28%だ。13年度の発電能力の合計は1770メガワットで、総発電量は7966ギガワット時だった。発電施設量、総発電能力、平均の発電効率、総発電電力量のいずれも前年度比増であり、増加傾向にあるという。

 

【有力企業の製品・技術<順不同>】

■大達精工場

 破砕機メーカーの大達精工場は廃棄物処理、粉砕・破砕分野で57年の信頼と実績を築き上げてきた。破砕する工程では一瞬の衝撃が相当な負荷になる。この過酷な使用環境に同社の破砕機はユーザーが安心して長年使用できるように、頑丈で堅固、安全な機械づくりをモットーに生産されている。粉砕の用途は各種プラスチック、フィルムシート、ゴム、ペットボトル、容器、超大型容器、樹脂パレット、粗大ゴミ、プラチック廃棄物などが対象。

 また、日々新たな粉砕・破砕技術案件にも挑戦しており、未来のマテリアアルリサイクルを見据え、チャレンジ魂を持って、テスト材質の粉砕・破砕を行っている。テストの依頼にもスムーズに応える体制を整え、社会に貢献している。

■リサイクル

 リサイクルは1981年の会社設立以来、生産現場と直結した産業廃棄物処理システムを提案。「地域環境にやさしい産業づくり」をサポートしている。

 リサイクルグループは大阪府東大阪市、岡山県美咲町、福岡県久留米市、群馬県館林市に保管施設を保有し、沖縄県を除く都道府県で廃棄物収集運搬許可を取得している。

 同グループは全国2000社以上の取引実績を持つ。往路は工業薬品などの製品を納品し、復路は産業廃棄物を回収する循環型環境モデルを展開している。

 適正価格であらゆる顧客ニーズに迅速対応するサービスを実施。今後も地球環境の未来に向けて、広く社会に貢献し得る提案型企業を目指す。

■前川工業所

 前川工業所は破砕機・粉砕機・リサイクルプラント一筋に手がけてきた創業70年の老舗メーカー。耐久性と優れた破砕性能などを兼ね備えて、環境負荷低減に寄与している。
「ロールブレーカ」は混合廃棄物の高度分別処理や廃石膏ボードの石こう分離などにも利用されている破砕機。1962年の販売開始以来、納入実績は1000台以上と、好評を得ている。

 51年から製造販売する「ハンマークラッシャ」は木材、石膏などの軟質系廃棄物やコンクリート、ガラス類の硬質廃棄物の破砕に活躍。近年は環境リサイクルの用途で存在感を示している。

 同社は6月に大阪府大東市に技術センターを新設する予定で、破砕テスト設備の拡充により、大型機製造を積極的に進めていく方針だ。

■森鉄工

 森鉄工は鋳物鋳造業界へ、ユーザーの工場で発生した切り粉をブリケット化(固形化)し、溶解するためのブリケットマシンを数多く納入し、大きなコストダウンに寄与してきた。

 銑(ずく)ダライ、銅ダライといった加工時に出る切削くずをはじめ、銅、アルミなど、顧客のさまざまな「カタメル」ことへの相談を受け付けている。

 最近では、アルミダイカストの切り粉をブリケット化し、自社で溶解したいという声が大きくなってきた。同社では鋳物業界での経験を生かして、アルミダイカスト切り粉への対応を行っている。そこには大きな原料費削減というメリットが待っているという。

■ウエノテックス

 ウエノテックスは破砕機、粉砕機、揉砕(じゅうさい)機、シュレッダーなどの環境機器を製造している。

 1軸破砕機「UCシリーズ」は特許を取得した独自の破砕システムで、プラスチックや木くず、繊維くずなどをリサイクルしやすいサイズに細かくできる。全国に400台以上の納入実績を持つ。

 粉砕機の「UFシリーズ」は廃棄物のリサイクル専用に開発され、従来機よりパワーとタフさを兼ね備える。そのほかに、小型家電用破砕機「チェーンクラッシャー」も製造しており、小型家電を解体することによって金属類・レアメタルの回収に役立つ。

 また、昨年開発したタイヤ専用の破砕機「TSシリーズ」も好評で、タイヤを燃料化する前処理として活躍している。

■ホーライ

 ホーライは半世紀にわたり、剪断(せんだん)式粉砕技術によって環境保護に貢献してきた。あらゆる資源の効率良いリサイクルを推進することで循環型社会の実現を目指している。

 同社の粉砕機は作業現場での効率性を追求し、開発されている。2段式粉砕機「KR−2060、XI−2060」は自動車のバンパーや内装材などの大型プラスチック成形品の粉砕を目的に開発された。本体構造やモーターの取り付け方法に工夫を凝らし、投入口を低くして作業効率の向上を実現。コンパクト設計によって省スペースであることも特徴のひとつだ。その結果、小さな動力で大きな対象物を効率よく粉砕することで節電にも貢献。同社の破砕・粉砕技術は限りある資源を再利用するにあたり、重要で不可欠な要素技術であるといえる。

■タジリ

 タジリは、再資源化処理プラントを幅広く手がける。熱圧縮成形機「ウエストポーター」は、樹脂ゴミや紙ゴミなどを固形燃料(RPF)化する減容再資源化装置で、発売から23年を重ねたロングランヒット製品。RPFゴミを強く固められる、その圧縮減容能力が大きな特徴だ。破砕機では、可燃性の粗大ゴミを効率良く粗破砕するための2軸油圧式破砕機「マイティクラッシャー」をラインアップ。周辺機器としてのコンベヤーベルト、供給機などを含むプラント一式を全て自前で作れるのも強み。また、薪の代替品となる「ブリケット」の製造向けに、比較的荒切りの木くずや皮であっても機械的に圧縮成形できるブリケットプレス機「里山」を開発。近く、埼玉県秩父市に同実証プラントを開設する計画だ。

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