業界展望台
4月18日は発明の日 /知的財産教育の現場
-イノベーション 即戦力を育成-
4月17日(金曜日)付 日刊工業新聞 20面
イノベーションを進めていく上で知財立国を担う優れた人材の育成が欠かせない。知財の専門大学院では、経営戦略のコンサルティングや海外進出サポートなど、求められる知財人材像の変化に合わせ、教育プログラムも充実化がはかられている。ここでは即戦力や次代を切り開ける人材作りに取り組んでいる国士舘大学、大阪工業大学、金沢工業大学の取り組みを追った。
■国士舘大学大学院−経験豊富な実務家教員が講義
国士舘大学大学院総合知的財産法学研究科は、リーガルマインドをベースに知的財産の専門法律や技術、経営の知識を持ち、企業の規模に応じた知財戦略が提案できる人材の養成を目指している。
同研究科の飯田昭夫教授は「特許権だけでなく意匠権、実用新案なども合わせどう保護するべきなのか、全体像を見て判断できる素養を持つ人材を育てていきたい」と語る。
カリキュラムは法学をベースに、経営・工学系の科目まで網羅する。特許事務所経営者などの実務家教員が中核になっており、特許法や実用新案法、意匠法、商標法、著作権法、不正競争防止法などを教える。実際に特許事務所での実務研修なども行っている。また、海外からの特許侵害事件に対応するため、アジアの知的財産制度論や知財英語などの科目を配置し、国際問題への対応能力を養う。デジタルコンテンツ法などの著作権関係の科目を充実させているのも特徴的だ。
実務家教員は大企業だけでなく中小企業の案件に携わるなど幅広い経験を持ち、自らが体験した事例に基づいた具体的なトピックスを踏まえて講義する。講義には弁理士資格を持つOB、OGが聴講生として毎年多く参加している。飯田教授は「社会に出て働く中で必要性を感じて受講する。リピーターが多く評価が高い」と強調する。弁理士が受講する講義ということで「学生の意識向上にもつながる」(飯田教授)という。
サポート体制も充実している。有志のOBやOGらが、入試合格から入学までの期間を利用して、知財の基礎や知財に必要な民法の基礎などを教育。知的財産管理技能検定3級レベルまで押し上げる。
特許や意匠、商標の調査演習から分析力と報告力を習得する就業力増強講座や弁理士試験対策講座も行う。
■大阪工業大学大学院−長期履修制度で社会人支援
大阪工業大学大学院知的財産研究科は、西日本で唯一の知財の専門職大学院。入学者の将来展望や社会のニーズに応える充実したカリキュラムを通して、知財の専門家養成にあたっている。2015年度からは最長4年の在籍が可能な「長期履修制度」を新設、社会人が学びやすい環境づくりに力を入れている。
目指しているのは、知財の実務的なスキルを持ち、研究成果や製品デザインなどの権利保護・活用にあたる「イノベーション支援人材」や国際条約などに精通し、語学力を備え企業のグローバル展開を支える「グローバル知財人材」、知財活用のビジネス展開を担う「知財マネジメント人材」の育成だ。
このため、各タイプの人材育成に関わる領域と、意匠や商標など知財の基幹法領域を加えた4領域に合計60科目もの履修科目を用意。同研究科長の小林昭寛教授は、科目の多さに留まらず「特定の領域に偏らない、バランスがとれた構成も当大学院の魅力」と話す。
また、社会人支援として15年度から設けた長期履修制度には、履修期間が3年と4年のコースを設定。授業料総額は標準修業年限の2年分と同額にした。外国人留学生への対応も含めて14年度に秋入学制度も取り入れるなど、社会人のニーズに応える環境整備に積極的に取り組んでいる。
企業からも要請が強まるグローバル知財人材の関連では、英語による夏期集中講義を例年開講。海外の大学院生なども参加して行っている。
前回は台湾の提携大学からの受講者が増え、小林教授によると「宿泊先の確保に苦労したほどだった」と、夏期集中講義への関心が高まっている。
また、米国ワシントン大学の夏期特許集中講座や台湾の提携大学との交流に毎年、大学院生を派遣しており、海外知財研修も推進している。
■金沢工業大学 K.I.T.虎ノ門大学院 −社会人対象に東京で開講
金沢工業大学が東京・虎ノ門で開設する「K.I.T.虎ノ門大学院」の知的創造システム専攻は、働きながら学びたい社会人が対象。授業は平日夜間や土日に開催。講師陣は「弁理士や企業関係者、特許庁関係者など実務家100%」(加藤浩一郎専攻主任)がずらりとそろう。2004年の開講以来、輩出してきた250人以上の修了生は弁理士資格の取得をはじめ、特許事務所へ転職、企業で知財スペシャリストとしてキャリアアップなど多様な分野で活躍している。
加藤専攻主任は「知財マインドに強いビジネスパーソンを育てていく」と強調する。知財プロフェッショナル育成に留まらず、通常のビジネスの中で知財を経営に戦略的に取り入れイノベーション活動を担える人づくりを目指している。所定カリキュラムを履修し弁理士試験短答試験の一部免除が認められる知的財産プロフェショナルコースのほか、コンテンツ法務、テクノロジー、ブランド戦略といったテーマごとにコース選択ができる。
必修の修士研究ではゼミへの参加、発表、研究の実施や論文作成などが行われるが、各自の関心やキャリア構築に合わせた実務的なテーマ設定も可能。ディスカッション形式など、できるだけ双方向の教育プログラムに工夫されている。
同大学院には知的財産専攻と並びビジネス・アーキテクト専攻もあり、二つの専攻を柔軟に融合できるような体制をとっている。講義を部分的に受講したい人や入学検討中の人に向けた「科目等履修生制度」では、必要なスキルをピンポイントで受講することが可能だ。この制度を利用し大学院へ進む人も多いという。
交流会なども行われており、講師陣も含め多様な社会人が集う機会は修了後にも強いネットワークになっているという。
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