さまざまな用途・分野で使用　キャスター

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さまざまな用途・分野で使用　キャスター

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4月20日（月曜日）付日刊工業新聞　10面～11面

　キャスターは対象物を安全かつ、容易に移動ができる基礎部品。省力化や省人化、省スペースなどに貢献しており、バッグや事務機器、産業機械、介護用品など、さまざまな用途で使われている。キャスターメーカーは、移動時の振動や走行音の抑制、静電気対策など多くの優れた機能を用意して顧客の要望に応えている。

安全性・機能性、デザインも進化

　キャスターは鋼材などを使った金属加工製品で、取り付け部や本体、車輪、車軸などから構成。対象物に取り付け、人力や動力で移動させる時に使われる。取り付け方法や旋回方法、車輪の素材、車輪のサイズなどで多くのバリエーションがある。

　取り付け方法の特徴でみると、取り付け部が平板になっているものや、ねじこみのもの、または角パイプや丸パイプに差し込むものが一般的である。

　取り付け部が平板なものの中には、走行方向が旋回する自在型と、走行方向が固定している固定型がある。さらにストッパーによって、車輪の回転を止めたり、車輪と旋回を止めたりできるものがある。　

　内村製作所（東京都北区）のキャスターと床に固定させる装置のフットがコンパクトな一体型となっている「105AF－N」は、車輪とフットが同一部に組み込んでおり、自由に旋回ができるタイプ。耐震性に優れたストッパーを採用することで、高い安全性も可能にしている。

　車輪に着目すると、床や地面に接するタイヤ部と、軸周りのホイール部からなり、それぞれ弾性のある素材、剛性の強い材料が一般的に適している。傷のつきにくいゴムをタイヤ部に採用したものもある。

　キャスターはスポーツ・旅行用カバンやスーツケース向けのほか、荷台、物流機器、蓄電装置、いすなどの事務機器・OA機器、家具、分別回収容器、医療機器、産業機器など、多様な用途で使われている。

　例えば飛行機に持ち込むバッグ向けでは、キャスターの取り付け部分を、本体に埋め込むタイプが採用されている。埋め込むことによってバッグのボディー底面を最大限下げて、機内への持ち込みサイズの範囲で収容空間を広げている。　

　また企業の研究開発活動の場所では、キャスター付きのテーブルや収納庫が使われている。そこでは、研究者らが自らの用途に合わせて作業スペースの構築、拡張、収納などを簡単に行えるよう工夫がされている。　

　一方オフィスなどで使われるいす用キャスターの場合ならば、カーペットのような柔らかい床に対し、それに適したハード（ナイロン）のものが採用されている。タイルやフローリングのような硬い床には、床に傷をつけにくいソフト（ポリウレタン巻き）のものが選ばれている。床の種類や材質によっては、転がり過ぎる時には、より転がりにくいゴムが使われることが多い。

　医療用製品で使われているキャスターでは、主に夜間など、患者や利用者が製品から出る微量な音でも、気になる場面で使われることを想定して製作されている。そのため、より静かさを追求した静音タイプのキャスターが、医療用具の作業ワゴンや点滴スタンドでは使われる。

　このうち医療用製品向けワゴンでは、入院患者に投与する医薬品を管理する配薬ワゴンのキャスターにゴム製を使うことで、夜間・昼間を問わず、施設内での移動時に音が出にくいよう工夫されている。

　介護用品向け製品でも、キャスターは重要な役割を果たしている。急加速時に自動的にブレーキがかかり転倒の危険性を防ぐ歩行車では、製品の真下に取り付けたキャスターの自在な動きにより、利用者が歩きやすく、自由な動きを可能にしている。ほかにも歩行が困難な人が使うための数多くの工夫を実施している。

　また産業機器では圧縮機や、冷水循環装置、集塵機などに、移動が便利なキャスターが取り付けられている。このうち、小型溶接作業用のポータブル集塵機の場合、キャスターを取り付けることで、工場内を自由に移動することが可能。そして溶接作業時に発生する微細な鉱物性粉塵を発生源で捕集することが可能。これらにより人体への害を防ぐほか周囲の汚れや臭いの予防にも役立つ。

　精密機器の製造工場や製薬工場などのクリーンルーム内では、静電気の停電やホコリの発散を防ぐために、天井や床、壁、そして家具にも、帯電防止や防塵の機能が必要となる。このためクリーンルーム内で使用するいすでは、床に接地するキャスターに導電性キャスターを装備し、着座動作などで発生する静電気の放電につなげている。

　機能性だけでなく、デザイン面での配慮もなされている。車輪に対して繊細なデザインや自然な風合い、あるいはキャスターを使った製品の色調にマッチしたカラーを取り入れている場合が多い。また製品の表面を変更して、欧州特定有害物質規制（RoHS）に対応するメーカーも出ている。

【有力企業の製品・技術（順不同）】

■ワコーパレット

　ワコーパレットのキャスター「エアーキャスター」は、鉄鋼メーカーと共同開発した超特殊強力鋼板を採用し、高耐久化と軽量化を両立した。

　従来の鋼材が最大でロックウェルCスケール硬さ（HRC）10なのに対し、エアーキャスターの鋼材はHRC45を実現。このため従来比約3分の1となる1ミリ－2ミリメートルの板厚でも3.5倍以上の強度を持つ。旋回抵抗が少ないため作業効率が良く、摩耗や騒音も少ない。長寿命化によってコスト削減効果がある。同社は物流機器全般での採用を期待している。　

■内村製作所

　内村製作所は「最高の品質こそ最大のサービス」という考えを持ち、永遠のテーマとしている。軽量用から超重量用までのキャスターを最高の品質というコンセプトで開発、販売している。同社では「浸炭熱処理」「二段カシメ」「フェルトパッキン」を用いて一つひとつの製品を作り上げている。そうすることによって品質の良い製品が出来上がる。

　その集大成が「Xシリーズ」である。車輪材にポリウレタン、ナイロンを使った超重量用キャスターでさまざまな業種から高い評価を得ている。

■東海キャスター

　東海キャスターは双輪キャスターのパイオニア。「TCマーク」の付いた同社のキャスターは、医療機器、ディスプレー什器（じゅうき）、OA機器などに採用されている。キャスターを通して、さまざまな分野で顧客のニーズに対応し、製品のコンセプトに合わせた最高の製品開発に貢献する。
これまで蓄積した経験と技術力で、ダストカバー付きの「CFシリーズ」をはじめ、サスペンション付きの「CTシリーズ」など、豊富な製品バリエーションを用意している。

■岡本工機

　岡本工機はダクタイル製キャスターや鋼板製キャスターに続く新たな柱とするため、デザイン性に富んだ「デザインキャスター」の開発、販売に力を入れている。

　特に医療・福祉分野での快適な使用をテーマとし、高機能なブレーキシステムを取り入れた医療用キャスターが好評だ。車輪にはサーモプラスチックゴムまたはウレタンを採用。走行跡が残りにくく、かつスムーズな走行性を実現している。

　特注品や小ロット品にも対応。確かな品質を提供することで小回りの利く会社として高い信頼を得ている。

■ハンマーキャスター

　ハンマーキャスターは金属の切削工場などで威力を発揮する、特殊ゴム車輪付きキャスターを開発、販売した。金属切削工場の床には切りくずが多く散らばるが、同製品は特殊ゴム車輪を採用し、車輪に刺さる切りくずの量を汎用ゴムやウレタン車輪の10分の1以下に抑えた。耐油性にも優れるため切削油に触れる環境でも使用できる。車輪軸受部にはラジアルボールベアリングを装着。適度なゴム弾性により硬質車輪にはないスムーズな走行が可能だ。車輪サイズは150ミリメートルと200ミリメートルを用意している。

■ユーエイキャスター

　ユーエイキャスターは一般的なキャスターの販売を中心に、多種多様な業種に対応するオーダーメードを行っている。

　開発や製造、販売までを一貫して行っているので開発、納期、価格面、サービス全般にわたり、顧客の要望に沿った対応が可能である。2月に「グッドカンパニー大賞　優秀企業賞」を受賞した。顧客の要望に全社で応えた結果が受賞につながったと考えている。

　2015年度も顧客の「こんなものが欲しい！」をもとに、新製品を開発中である。

■ちくま精機製作所

　ちくま精機製作所は特殊キャスターの組み立てと、アルミフレームで組み立てた各種装置の移動やレベル出しに便利なキャスターユニット、アルミ部品の開発・製造および販売をしている。

　これからの取り組みとして、現在高い評価を得ている同社製品のさらなる見直しを進め、安全・安心・確実・操作性に優れた製品に改良を重ねる。環境活動、顧客の要望に沿った商品開発もこれから進める。同社の製品は全て、欧州特定有害物質規制（RoHS）に対応している。

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