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経営強化につながる 節電・省エネソリューション

5月18日(月曜日)付 日刊工業新聞 10面

 節電・省エネは東日本大震災以降、企業にとって重要なキーワードとなっている。電力料金の値上がりに伴う経費負担の軽減や二酸化炭素(CO2)排出量の削減など、持続可能な企業活動のためにエネルギー使用全体の在り方を考えることはますます重要な経営課題だ。厳しいグローバル競争に勝ち残るためにも、経営効率の向上と環境対策の強化の両立を図る手段として、継続した節電・省エネの取り組みが求められる。

競争力向上のカギ−継続した取り組みを

 経済産業省が2014年度の補正予算に盛り込んだ「地域工場・中小企業等の省エネルギー設備導入補助金」は、929億5000万円というこれまでにない規模だったが、申請開始から約1カ月で早くも申請額が予算額に到達、受付を終了した。同補助金は旧モデルと比較し年平均1%以上の省エネ性能向上が確認できる機器(A類型)や、省エネや電力ピーク対策の改修・更新(B類型)などを対象としたもの。

 15年4月から産業用モーター(三相誘導電動機)に省エネ型製品の普及を促進するための“トップランナー制度”が適用されたこともあり、省エネの設備導入に関心が高まっている。

 モーターの効率化は生産現場の電力コストとCO2排出量の削減につながる。現在、国内で稼働するモーターは1億台、国内総消費電力の55%を占めると言われている。その1台ずつが省エネ化していけば、大きな効果を生むことが期待される。

 経産省は15年夏季の電力需給見通しとして、沖縄電力を除く全国9電力会社が全ての原子力発電所を停止する中で、安定供給に最低限必要な予備率3%以上を確保できる見通しを示した。節電の数値目標は3年連続で設けない見通しだ。

 しかし関西電力と九州電力に関しては、予備率がそれぞれ0.8%とマイナス2.3%となり、中部電力と中国電力からの電力融通を受けることで3%の予備率を確保する。また老朽火力発電所の計画外停止が発生する可能性もあり、15年夏の需給状況も楽観視はできない。引き続き企業や家庭での節電の取り組みが求められる。

 継続できる省エネ対策として基本となるのは、どの時間帯にどれだけエネルギーを使い、それが適正かどうかを知る“見える化システム”。特に製造業では、各種機械設備の稼働時、停止時、高速運転時などきめ細かくデータ分析することが必要だ。

 モーターを使用している機械は起動時に電力を多く使う。そのため設備や機器を一度に起動させずに、順次起動させることで電力消費の平準化を図ると効果的だ。変圧器、インバーター、圧縮機といった各産業用電気機器の細かな使用方法の見直しも重要になる。

 14年4月から省エネ法ではエネルギー効率の改善だけでなく、電力需給バランスを意識したエネルギー管理が求められるようになっている。従来の昼間買電量と夜間買電量に加え、電気需要平準化時間帯(7〜9月、12〜3月の8〜22時)の買電量の報告が必要になった。そのほか電力のピークカットやピークシフトの取り組みがプラス評価されるようになった。

 三菱電機の「EcoServerIII」は、工場の電力エネルギー使用量を収集、分析、表示するデータ収集サーバーで、デマンド(需要)監視機能が付いている。時間帯別の実績管理ができるため、電気需要を平準化したり、省エネ法の定期報告に必要な時間帯別の買電量を簡単に把握したりできる。

 受電した需要電力と各所のエネルギー使用量はウェブ上で一括管理が可能。分析結果をもとに、稼働設備の見直しや輪番運転をすることでピークシフトやピークカットが図れる。
デマンド管理はエネルギー使用量の削減にもなるが、電気の基本料金を下げることにも有効だ。電力の基本料金は契約電力によって変わり、契約電力は過去1年間の最大デマンド(30分間の平均使用電力の月間最大値)となる。つまりデマンドを管理し、最大デマンドを抑えれば、基本料金を下げることもできる。

 オフィスなどでは業務効率を高めるためにも、快適性を追求した省エネが求められる。オフィス関連機器などを手がける内田洋行は、建物全体をフロアやブースごとにきめ細かく最適化できる中央監視・制御ソリューションを提供する。既設のインターネット・プロトコル(IP)ネットワーク上で統合し、メーカーが異なる設備機器もタブレット端末などで一元的に管理することを可能にした。

 “見える化”だけではなく原因データを収集し、ボトルネックを特定した上で最適なシステムを構築する。自動で最適化されたデータに、タブレット端末(携帯型情報端末)操作でより運用状況にあった判断を加えることもできる。

 オフィスや工場など各現場で省エネのために業務プロセスを改善し、生産性向上を図る取り組みは、企業成長をもたらすことにつながる。経営そのものの強化プロセスとして継続的な省エネへ導くことが求められる。

 

有力企業の製品・技術<順不同>

■三菱電機

 三菱電機福山製作所は1997年から同製作所で生産する計測機器に着目し、同製作所で本格的な省エネ活動を推進。2004年には電気料金1億円の削減を達成した。

 現在は14年度に発売した省エネデータ収集サーバー「EcoServerIII(デマンド監視機能付品)」を活用。空調制御機器と連動した電気料金の削減、電力計測ユニット(EMU)で計測したデータを用いた生産性向上、原単位管理によって、より一層のエネルギー削減を目指した活動を推進している。

■内田洋行

 働く場における課題は省エネはもちろん、生産性向上に寄与する環境が求められること。内田洋行の中央制御ソリューションは、ビル全体ではなくフロアやゾーン単位で設備の制御やエネルギーマネジメントを後付けで実現し、省エネと快適性を両立する。

 同ソリューションはオープンテクノロジーベースによる低コスト化、高い拡張性を実現している。同社はこのソリューションで、利用者視点での「ゼロ・エネルギー・オフィス」構築を実現していく。

 

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