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業界展望台

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新分野を開拓するエンジニアリング産業

5月27日(水曜日)付 日刊工業新聞 8面

エンジニアリング専業各社、海外で新市場開拓

 2014年後半から原油価格が下落したことでオイルメジャーや産油国国営石油会社によるエネルギー関連の設備投資計画は延期、中止が相次ぎ、世界的にプラントマーケットの先行きは不透明感が漂っている。こうした環境下、エンジニアリング各社はプラントビジネスにおける新分野の開拓や自社開発技術をてこにした新マーケットの創出に向けた動きを加速、さらなる成長への布石を打っている。

 エンジニアリング各社はエネルギー・化学プラントや医薬品工場、病院、環境設備などの設計・建設工事を通じて広範なエンジニアリング技術を培ってきた。そのレベルは世界でもトップクラスと位置付けられているが、それら技術や世界各国でのプロジェクト遂行経験をベースにプラントビジネスのさらなる拡大やプラントビジネス以外の事業分野の拡大に意欲的に取り組んでいる。

 日揮はプラントビジネス以外のコアビジネスの確立を目的とし、05年から投資事業に進出。これまでに発電・造水、資源開発、環境・新エネルギー、都市開発の4分野を主力分野と位置付けて展開。今やマーケットは日本国内はもとより世界に広がっている。

 15年1月に商業運転を始めた千葉県鴨川市の太陽光発電事業は、プラントビジネスとのシナジーを具現化した注目すべきケースだ。発電容量3万キロワット超の太陽光発電設備で20年間売電を行うもので、設備の設計・建設工事から事業運営まで日揮が一貫して行った。日揮にとって国内では大分市に次ぐ2番目の太陽光発電事業となった。今後は国内で太陽光発電設備の設計・建設工事に継続して取り組みつつ、中東など海外での事業運営を目指していく方針である。

 国内での実績、経験を生かして海外展開を図る動きとしては、日揮ではメディカル分野が一歩先行。日揮は国内で30年以上にわたり、病院など医療施設の設計・建設工事を行ってきている。さらに現在、東京都世田谷区の東京都精神医療センターでPFI(民間資金活用の社会資本整備)方式による施設の維持管理事業を運営。15年度中の開業を目指して現在準備を進めているカンボジアでの病院運営事業は、首都プノンペンで脳神経外科の分野で高度な医療を提供することを目的とし、産業革新機構の支援を受け、Kitahara Medical Strategies Internationalと共同で取り組む事業だ。

 自社開発技術をコアにした事業展開、新マーケットの創出も現在日揮が注力している重要戦略といえる。インドネシアで検討中の低品位炭を原料とする発電事業もその一つだ。インドネシアには発熱量が低く、含水量が高く、自然発火性の高い低品位炭の有効活用が急務となっている。日揮は自社開発技術を適用し、それらを改質して石油代替燃料「JGC Coal Fuel」を製造、それを燃料として中小規模の発電事業を展開する計画を検討中である。

 また、カナダでは石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で超重質油を、超臨界水を利用して改質し、輸送が容易な合成原油を製造する技術開発にも取り組んでいる。現在、世界的にカナダのオイルサンドやベネズエラのオリノコといった超重質油の経済的な利用方法の確立が課題になっている。日揮はJOGMECと共同で3月からカナダのアルバータ州で小規模パイロットプラントによる実証試験を開始。超重質油の改質技術の開発は新しいステージに入っている。

 千代田化工建設はオフショア(海洋)およびアップストリーム(油田・ガス田開発)や、ライフサイエンス(医薬・医療設備)を新たな取り組み分野に位置付けている。14年2月にはグループ会社が共同事業体を形成し、インドネシアの洋上ガス処理設備建設プロジェクトの設計、機材調達、建設工事、据え付けなどの業務を受注した。

 

ゼネコンのエンジニアリング−スマート社会構築、改修・新築に応用

 建設業界は国内建設市場において公共投資が高水準を維持し、民間投資も回復基調にあることなどから業績が好調だ。こうした中、ゼネコンがエンジニアリング事業の一つとして、スマートコミュニティー(次世代社会インフラ)分野の取り組みを展開している。分散させた大型電源をエネルギーマネジメントシステム(EMS)で制御することで電力の需給バランスを調整するシステムを完成。研究所や大学などで実証を重ねている。

 太陽光や風力など再生可能エネルギーを最大限利用し、一方で、エネルギーの消費を最小限に抑えていく社会の構築が必要とされている。スマートコミュニティーはエネルギーを賢く使うスマートグリッド(次世代電力網)を取り入れて、そうした社会を実現するための次世代の社会インフラとして注目されている。

 ゼネコンはスマートコミュニティーの実現に向けて、都市、環境、建築、設備、情報通信技術(ICT)の技術を集約・統合した街づくりなどに取り組んでいる。
具体的には、ゼネコンの技術研究所において、ガスエンジン発電機などからなる常用発電システムや、太陽光発電設備、大型蓄電池をEMSによって制御する仕組みを構築。再生可能エネルギーを最大限利用するとともに、ビッグデータなどを用いた電力需給の予測とリアルタイムでの電力需要の把握に基づき、時々刻々と変動する需給バランスを調整することができるようにした。

 また、国内広域大都市型のデマンドレスポンス(DR)実証に参加して、最大33%という高い電力ピークカットを実現している。DRは電力需給の逼迫(ひっぱく)が予想される場合に、電力使用抑制の協力依頼を受けて需要家側で電力の需要を調整する仕組みだ。

 大学と組んだ取り組みもある。複数の学部が集まる大学キャンパスにおいて、全学部の主要施設を対象に、学部別のスマートグリッドを構築し、ビル用EMSによって広域・多棟間でエネルギーを効率利用する計画を進めている。ゼネコンではこの計画をスマートコミュニティーのソリューションモデルと位置付け、教育施設や生産施設、医療施設などの所有者に対して提案し、省エネルギー改修工事や新築工事に応用していく考えだ。

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