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インドネシア バタムフリーゾーン、
一層加速する日系企業の進出

6月12日(金曜日)付 日刊工業新聞 16面

 インドネシア領リアウ諸島州の北部には「ビンタン(BINTAN)」「バタム(BATAM)」「カリムン(KARIMUN)」各諸島があり、3諸島群の頭文字をとって「BBK」と呼ばれている。それぞれの工業地域が自由貿易区に指定されており、他島に先駆けて開発が進むバタム島が、BBK開発の中心となっている。インドネシア投資は主にシンガポールが抜きんでているが、その中にはシンガポールに拠点を持ち、そこからバタム島などに投資した多くの日系企業や日系合弁も含まれている。

■シンガポールから海路50分、整備進むバタム諸島

 バタム島はシンガポールの南方、約20キロメートルにあり、シンガポールから国際フェリーで1時間足らずの地点に位置する。バタム島に五つある国際フェリーターミナルとシンガポールとの間には、毎日90便以上のフェリーが6時から22時まで就航している。

 バタム島では1971年にインドネシア大統領直属の機関としてバタム工業開発庁(BIDA)が設立され、シンガポール政府との協調体制の下、開発が始まった。80年代のハビビ開発庁長官時代にはバタム島に隣接するレンバン島、ガラン島などバタム諸島内が六つの橋で結ばれ、その総面積はシンガポールの国土618平方キロメートルを上回る715平方キロメートルになった。

 70年には6000人程度の漁村だったバタム島の人口は、2000年には50万人を超え、現在では110万人以上に増えている。バタム島にはこれまで67社の日系企業が進出し、同島に駐在する日本人は300人ほど。バタム島だけでもシンガポール経由で年間100万人以上の外国人観光客が訪れている。

 主な工業団地だけでも26カ所あるバタム島は急速にインフラ整備が進んだ。そしてバタム島の東西に隣接するビンタン島とカリムン島にもバタムでの成功が波及した。具体的には06年6月25日にユドヨノ大統領とシンガポールのリー・シェンロン首相がバタム島で会談し、経済開発協力の枠組み協定に合意。07年8月にはバタム島の全域に加えて、ビンタン島とカリムン島の島内に工業化地域をつくり、そこをFTZに指定した。現在でもバタム工業開発庁「BIDA(Batam Industrial Development Authority)」の名は有名だが、BIDAはバタム島を管理するバタム・インドネシア・フリーゾーン監督庁「BIFZA(Batam Indonesia Free Zone Authority)」に組織変更され、新たな取り組みを進めている。

■外資100%も可能−日本への直行便就航に期待

 BIFZAのムストーファ・ウィジョヨ長官は「これまでにバタム島には34カ国から1247社の多国籍企業が投資している。インフラが整ったバタム島の工業団地には延べ1600キロメートルの舗装道路が整備され、四つの貨物港もある。現在の発電能力は372メガワット強だが15年末までに644メガワットにする予定。さらに六つの貯水池もあり、水の供給能力も十分」などとインフラの良さを強調する。ムストーファ長官によると、海外からの直接投資は14年の時点で80億ドルを超えており、国内企業からの投資は58億ドルを上回っている。インフラを中心とした政府による投資も36億ドルと積極的に行われてきた。「シンガポールのインフラや金融、テクノロジーと連動できるバタム島の投資環境の良さに注目してほしい。バタム島の最低賃金はジャカルタに比べて安く、優秀な労働力があふれている。100%出資の投資も可能であり、我々は税制優遇などの恩典を準備している」とムストーファ長官は日本企業の進出を期待している。

 バタム島にはインドネシアでは最長の4015メートル(幅45メートル)の滑走路を持つハン・ナディム国際空港がある。ムストーファ長官は「首都ジャカルタに毎日18便の国内線のほか、数便の貨物便も運行している。東部インドネシアのバリ島に日本との直行便があるように、バタム島へも日本からの路線を就航させたい」と期待している。

 リアウ諸島州最大の島、ビンタン島は1950平方キロメートルの広さでシンガポールの約1.5倍。ビンタン島とバタム島間はフェリーで約20分の距離だ。ビンタン島南部に位置するタンジュン・ピナン市がリアウ諸島州の州都。バタム島から最短距離で6686メートル離れているビンタン島まで、バタム本島に近いタンジュン・サウ島とビンタン島のブアウまでを大橋で結ぶ構想もある。

 計画では4車線で、海面から高さ60メートルの大橋になる。ムストーファ長官は「実現すれば、この地域の成長が加速することは間違いない。しかし、先に我々が取り組むべきことは、各島の外資誘致をもっと増やすこと。需要あってのプロジェクトだ」と日本企業へ呼びかける。

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