業界展望台
環境と健康を守る VOC排出抑制対策
6月16日(火曜日)付 日刊工業新聞 30面
トルエンやキシレン、酢酸エチルなど大気中で気体となる物質を総称して揮発性有機化合物(VOC)と呼ぶ。VOCは人体に悪影響を及ぼす光化学オキシダント(OX)や浮遊粒子状物質(SPM)の発生要因の一つとされる。産業界では工場などから排出されるVOCの削減対策に取り組んできた。今後も従業員の健康を守り、大気汚染を防ぐため、継続した取り組みが求められる。
自主的取り組み継続−中小企業も参加しやすく
VOCはトルエンやキシレン、酢酸エチルなど主なもので100種類以上ある。塗料を薄める時に使用する溶剤や、ガソリンなどの燃料の蒸発ガス、工業用洗浄剤、接着剤、インキなどに含まれている。
VOCは直接健康障害を引き起こす光化学オキシダント(OX)や浮遊粒子状物質(SPM)の発生要因の一つとされている。SPMは粒径が10マイクロメートル以下と定義されているが、そのうち2.5マイクロメートル以下のものが微小粒子状物質(PM2.5)と呼ばれる。
OXやSPMによる健康被害が数多く報告され、深刻化する大気汚染の防止策が緊急に求められていた。大気汚染防止法が2004年に改正され、工場・事業所などの固定発生源からのVOCの排出・飛散抑制対策が規定される。
06年4月1日に施行されて以来、産業界は法規制と自主的取り組みのベストミックスで、効果的なVOC排出抑制を進めてきた。10年度までにVOC排出量を00年度比30%程度の削減目標が掲げられ、VOC測定・回収装置やシステムの導入や生産工程の見直しなどに取り組んだ。
その結果、00年度比で法規制と自主的取り組みのベストミックスで44%削減、自主的取り組みだけで56%削減と目標を大きく上回り達成している。また11年度にはさらに4%削減し、同比60%の削減となった。
目標達成後の継続したVOC排出抑制対策の実現に向け、経済産業省では13年7月に産業構造審議会産業技術環境分科会の下に、産業環境対策小委員会を設置した。
13年度は40の業界団体が自主的取り組みに参加。水溶性薬剤やハイソリッド塗料への転換、ポンプ大型化によるシンナー回収率の向上、工程内で排出される化学物質の回収・無害化装置の導入などの方策が掲げられている。
業界団体に属さない企業のためには、産業環境管理協会が「VOC自主的取組支援ボード」を開設して取り組みを支援している。また日本産業洗浄協議会も「産業洗浄における自主的取り組みマニュアル」を作成するなどして、支援を行っている。
こうした活動により、13年度の自主的取り組みにおける削減率は00年度比61.1%となった。わずかではあるが目標年度以降も年々削減率を上げている。しかし参加団体数は目標年度を過ぎて頭打ちになっているのも現状だ。
産業環境対策小委員会では今後、自主的取り組みに中小企業がより参加しやすくなる方策や、インセンティブの付与などを検討していく方針だ。
有力企業の製品・技術<順不同>
■大気社
大気社は排気中のVOC、臭気、PM2.5(微小粒子状物質)などの除去に最適な排気処理システムを提供し、環境負荷低減や環境改善に貢献する。主力商品である蓄熱式脱臭装置(RTO)に濃縮装置、熱回収装置などを組み合わせ、省エネとコスト削減を実現する。
さらに海外の環境規制強化に対応した製品を中国、タイで現地製作し、日本と同性能で低コストの製品を供給する。また海外子会社のネットワークも活用し、メンテナンス体制の充実も図る。
■ダイダン
総合設備工事業のダイダンは、VOC除去や臭気対策に使用されているエアフィルターの再生事業を展開している。
汚れたエアフィルターを、超臨界二酸化炭素を採用した独自の技術により、洗剤を使わずに洗浄して再生する。これまで廃棄せざるを得なかった使用済みエアフィルターを再生し、再利用することにより、フィルター交換費用の削減につながるとともに、廃棄物削減にも貢献できる。近年、電子・化学工場などの産業界でも、再生フィルターの継続的な利用が進んでいる。
■新東工業
新東工業の排ガス浄化装置「デオサーモ」は、VOCや悪臭を90%以上の高効率で分解できる。ハニカムセラミック蓄熱体の熱交換効率の高さによるランニングコストの低さなども特徴。またVOCの分解除去に加え、エネルギーの有効活用による省エネルギー化、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献する。
さらに新しくシリーズに加えたパッケージ型排ガス浄化装置「ECR」は、従来型機より小風量対応し、コンパクトな完成品出荷で工期短縮のメリットがある。
■篠原電機
篠原電機は米レイシステムズ製のガス検知器を取り扱う国内でもトップクラスの代理店として、多くの販売実績を積み上げてきた。光イオン化式ガスセンサー(PID)を搭載した超高感度VOC検知器「ppbRAE3000」「MiniRAE3000」は、トルエンなど有害なVOCを瞬時に測定しリアルタイムで表示する。
VOC検知器は排出濃度の測定・管理に有用で化学・石油・印刷工場などのVOC処理装置や土壌汚染調査、消防などの分野でも採用され、着実に実績を伸ばしている。
■日本テストパネル
日本テストパネルは経営革新計画承認企業。好評の排ガス清浄化装置「グローバルクリーン」(特許取得済み)に続き、化学工場や廃棄物処理施設、喫煙室などの消臭に効果を発揮する純植物性消臭剤「NTP-F118」の販売に力を入れる。
同製品は芳香剤のように悪臭を隠すのではなく、森林の浄化と同じフィトンチッドの作用で中和・無臭化する。ヒノキなど118種類の植物から抽出した天然由来成分100%だけを使用。安全性が高く、食品や医療関連施設の消臭にも役立つ。
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