業界展望台
きょうから全国安全週間
7月1日(水曜日)付 日刊工業新聞 22面
きょうから7日まで職場での安全意識の高揚と、安全活動の定着を目指す「全国安全週間」が実施される。88回目となる今年は、転倒災害を防ぐ「STOP!転倒災害プロジェクト2015」や、従業員の安全を積極的に守る企業を評価する「安全衛生優良企業公表制度」が始まったほか、事業所での熱中症予防対策も注目されるテーマとして、各企業での対応が関心を集めている。
【職場総点検、環境改善を】
わが国の労働災害による被災者は年間約53万人にのぼる中、2014年は死傷者数11万9535人、死亡者数1057人となり、いずれも前年の11万8157人、1030人を上回る残念な結果となった。この背景には消費税増税前の駆け込み需要での業務量増加や相次いだ大雪の影響、景気回復と産業活動の活発化に伴う未熟練労働者の増加などが指摘されている。
■転倒災害対策
こうした中での今年の全国安全週間のスローガンは、「危険見つけてみんなで改善意識高めて安全職場」。具体的な取り組みではまず「STOP!転倒災害プロジェクト2015」が行われている。これはチェックリストを活用した職場の総点検を行い、安全委員会などでの調査を経て環境改善することを事業者に対し求めている。
主な対策項目は(1)段差・継ぎ目の解消、4S(整理、整頓、清掃、清潔)の徹底(2)照度の確保、危険箇所の表示など「見える化」の推進(3)安全な歩き方、作業方法の推進(4)作業内容に適した保護具着用の推進―など。
13年中に仕事中の転倒が原因で4日以上仕事を休んだ人は2万5878人で、休業4日以上の労働災害全体の22%を占め、08年(2万4792人、19%)と比べて人数、割合ともに拡大。第三次産業では労働災害全体の約30%を転倒が占め、比較的割合の低い製造業や建設業でも増加率は他の事故と比べ高くなっている。この現状を克服すべく、国と労働災害防止団体では「STOP!転倒災害プロジェクト2015」を通して、事業所での改善を呼びかけている。
■優良企業公表
「安全衛生優良企業公表制度」は安全対策や健康保持増進対策に力点を置いている企業が、より社会的に評価されて認知される仕組みとして創設された。
具体的には必要項目として、過去3年で(1)労働関係法令の重大な違反がない(2)労働災害発生状況が同業種平均に比べ低い(3)法令違反を理由に国から企業名を公表されていない―などをすべて満たすこと。さらに加点項目について(1)安全衛生活動推進のための取り組み(2)健康保持増進対策(3)メンタルヘルス対策(4)荷重労働防止対策(5)受動喫煙防止対策―などで一定の評価を達していることが必要。
企業は自社の本社を管轄する労働局を通じて申請し、認定されると厚生労働省のホームページ(HP)で公表されるほか、標章を自社商品・サービスや広告、掲示などで幅広く活用でき、安全・健康で働きやすい企業であることがアピールできる。有効期限は3年。
また7月からは足場からの墜落防止対策が強化された。これは安全衛生規則改正により、足場の組み立て作業が特別教育の対象になった。その教育カリキュラムには、足場および作業方法に関する知識、工事用設備・機械・器具・作業環境に関する知識、労働災害防止に関する知識などが入っている。
■熱中症の予防
これから本格的に厳しい暑さを迎えるこの時期は、熱中症への予防対策も、企業では大きなテーマ。中央労働災害防止協会は「熱中症予防対策のためのリスクアセスメントマニュアル」をまとめた。このリスクアセスメントでは個々の作業につき「暑熱環境」「作業強度」「衣服・装備」という多面的なレベルから評価を行い、その結果から総合リスク評価し、結果に基づき決定したリスク低減対策を記録。その低減対策を実施した後に改めて再度評価し、受け入れ可能なリスクレベルになるまで繰り返すプロセスで予防する。
大塚製薬は1980年「ポカリスエット」の発売当初から、暑さの中での水分補給の重要性を訴えてきた。その間、社会的にはまだ「熱中症」という言葉が認知されていなかった91年、日本体育協会「スポーツ活動における熱中症事故対策に関する研究会」の設置がきっかけで、共同で熱中症対策の必要性を啓発し続けてきた。大塚製薬のHPでは、体協が発行する「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」に基づく内容を掲載して、動画と音声でわかりやすく解説。ほかにも子供たちを対象にした啓発活動で、学校や部活動、スポーツ教室などに社員が出向くことも行っている。
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