滅菌・殺菌、乾燥・硬化に…UV・EB照射技術

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滅菌・殺菌、乾燥・硬化に…UV・EB照射技術

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7月6日（月曜日）付日刊工業新聞　16面～17面

　対象物に紫外線（UV）や電子線（EB）を照射することによって起こる物性改善や改質が行われたり、新しい機能が付与されたりする技術がモノづくりに利用されている。滅菌や殺菌のほか、乾燥、接着、コーティングに加え、最近では試作品を作る場合の立体造形に利用されるなど、UV・EB照射技術の応用が広がっている。

■短時間に造形可能－3Dプリンターにも

　UV硬化・乾燥技術はプリント基板への電子部品接着やシール、ラベルへの印刷、電子部品の塗装や、プラスチック成形品のコーティングなど、印刷分野から実用化された。
UV硬化樹脂は揮発性有機化合物（VOC）の発生原因となる溶剤を使用しない樹脂硬化が可能なことや、照射を受けてからの硬化が速いため、作業効率が向上すること、熱を使わないために耐熱性の弱い材料でも接着やコーティングに利用できるなどの特徴がある。

　一方、EB照射による特性の改質は照射対象となる物質内をEBが通過するときに電子の持つエネルギーが物質に作用する働きを利用するものだ。プラスチック、ゴムなどの高分子材料に照射した場合、分子間で化学結合が起こり、耐熱性や耐久性を向上させることができる。

　UVによる樹脂の硬化はマテリアルジェッティング方式の3Dプリンターによる立体造形などにも利用されている。3Dプリンターは大量生産に入る前の製品デザイン、機能、構造などを確認する試作品を作るために使用されているケースが多い。最近ではプリンターの性能向上やプリンターが扱う材料技術、精度の向上で完成品、市販品の生産に使用する例が増えてきており、オーダーメード品をはじめとする少量生産で利用されている。

　UV照射技術を利用している3Dプリンターはインクジェットプリンターの原理を応用。インクジェットのヘッドから、UVによって硬化する硬化樹脂の微細な粒子を噴射。UVを照射して、固め、積層させていく。データ通りの高い寸法精度で短時間に造形できるのが特徴だ。

■細菌を不活性化、死滅－医療機器などに利用

　このほか、UV・EB照射が利用される例で挙げられるのが殺菌や滅菌だ。UVの場合、対象物に波長が253.7ナノメートルのUVを照射すると、細菌の細胞内にある核酸に作用し、菌が不活性化される。一方、EBの場合、電子線を照射することによって、対象物の細胞の核酸の分子に作用し、細胞にダメージを与え、微生物を死滅させる。

　UVによる殺菌は下水処理や空気清浄、医療機器の洗浄などに利用される。比較的低コストでの導入が可能なほか、装置の操作も簡単だ。EBは物質を透過するため、複雑な形状や完全密封物の滅菌も可能。ポリスチレンのような一般的なプラスチックから、医療分野では注射器、カテーテル、洗眼薬容器など、医療用器具が収まった箱にそのままEBを照射し、滅菌を行うことができる。

有力企業の製品・技術＜順不同＞

■荒川化学工業

　荒川化学工業は主力製品のUV／EB硬化型樹脂「ビームセット」をフィルムハードコート用途に展開する。高硬度や帯電防止、耐指紋などの機能性コーティング剤で大手コンバーターに採用。家電業界や自動車業界での用途を開拓している。
粘着・接着剤および絶縁コート剤はいずれも無溶剤で環境に優しく厚膜硬化も容易なのが特徴。UV硬化型粘着剤「ビームセットOCA-6」は厚膜粘着層の形成が容易で透明性や柔軟性、接着性、高耐久性に優れ、タッチパネル用光学透明粘着・接着剤に適している。

■日本合成化学工業

　日本合成化学工業の「紫光」はウレタンアクリレートオリゴマーをメーンに、硬質・軟質・弾性タイプとさまざまなグレードを展開。用途も塗料やインキ、光学関連など多岐にわたる。特殊機能を持つUV硬化樹脂の開発にも注力。プラスチックなどの表面の塗布で付着した指紋を容易にふき取れる「UV-AF300」、タブレット端末やノートパソコンなどの筐体表面の塗布で、微細な傷も瞬時に回復し保護できる「UT-5569」、抗菌や殺菌と違い、菌を付着しにくくする「UT-4500」など、ニーズにマッチした製品を開発している。

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