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業界展望台

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省エネ・節電対策に貢献する 遮熱建材・断熱材

7月10日(金曜日)付 日刊工業新聞 14面

太陽熱・高反射−塗膜・躯体の温度上昇抑制

 政府は2015年度夏季の電力需給見通しについて、経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の下に設置した「電力需給検証小委員会」において、第三者の専門家による検証を行い、5月に15年度の夏季電力需給対策を決定した。事業者に対しては7月1日から9月30日までの平日、数値目標を設けない節電を呼びかけている。オフィスビルにおける夏期ピーク時の電力消費に占める空調用電力消費は全体の約48%になるといわれている。夏は空調で電力消費が増加する傾向にある。遮熱・断熱技術の導入は節電、省エネのカギといえる取り組みだ。

■空調コスト削減

 夏期のオフィスビルにおける電力消費は経済産業省・資源エネルギー庁の推計で空調48%、照明24%、OA機器16%と、三つだけで90%近くを占める。中でも空調は全体消費量の半分近くになるという。そこで建物の省エネ効果を高めるためには空調への節電対策が有効となる。

 その一つが遮熱建材や断熱材の導入だ。遮熱建材は建物に対する日差しを遮り、太陽の熱を室内に入れないようにすることで、室内の温度上昇を抑制する。空調システムの省エネ化ができるだけでなく、空調コストの削減にもつながる。

 遮熱塗料は太陽熱を高反射する。屋上や壁面のコンクリート、屋根や壁面の金属材、粘板岩(スレート)材への塗布や屋根材への塗布に利用される。

 太陽光のうち、波長が780ナノ-2500ナノメートルの近赤外線領域の光線は物質に吸収されやすく、吸収された光エネルギーは熱に変わる。遮熱塗料は太陽光のうち、この領域の近赤外線を高反射し、塗膜、躯体の温度上昇を抑制する。

 原材料を開発している化学メーカーの中には耐久性や防汚性などをより一層、向上させるため、自社の工場施設に塗布し、実証検討を行っている。

 遮熱建材では塗料や遮熱シートのほか、室内用で日射遮蔽(しゃへい)ブラインドやスクリーン、レースカーテン、既存の窓に張り付け、日射熱や紫外線をカットする日射遮蔽フィルムといった取り入れやすいものや、窓に塗布する日射遮蔽コーティング材、後付け複層ガラスなどが普及している。

 一方、断熱材は冬の室内の熱を外に逃がさないことから、冬期の省エネ対策のイメージが強い。しかし、夏の外部からの熱の進入を抑制するという性能を持つ。建物の断熱方法にはコンクリート躯体に断熱材を張り付ける外断熱工法、躯体の室内側に断熱材を充填した断熱層を設けたり、室内の壁に断熱材を吹き付けたりするといった内断熱工法がある。
断熱材に利用される発泡硬質ウレタンフォームは現場で発泡させるタイプのものが普及している。その中で、オゾン層保護や地球温暖化防止といった観点からフロンはいうまでもなく、フロン代替品のハイドロフルオロカーボン(HFC)も利用しないノンフロンタイプの現場発泡硬質ウレタンフォームが開発されており、高く評価されている。

■太陽光発電パネルで遮熱−省エネ・創エネ同時展開

  遮熱では新しい取り組みも始まっている。遮熱による省エネと再生可能エネルギーを活用する創エネの同時展開だ。コンタクトレンズメーカー、シードは13年7月、生産工場のシード鴻巣研究所1号棟の一部に太陽光発電モジュールを設置した。同工場の屋根は折半という工法で作られており、日射で高温になりやすく、夏期には60度Cを超える日があったという。屋根の下には生産現場のクリーンルームが設置されており、その熱気から冷房効率も悪かった。遮熱を兼ねた屋根の有効活用を検討した結果がモジュールの設置だったという。

 設置されたパネルはトリナ・ソーラー製。同社の日本法人、トリナ・ソーラー・ジャパンマーケティング部の春日裕子部長は「創エネはもちろん、遮熱による省エネもユーザーの期待に応える結果をだせたはず」と語る。

 14年10月、シードはモジュールの設置を拡張。多結晶太陽光発電モジュールの合計枚数は3038枚となり、年間発電量は想定値で81万7913キロワット時となった。「発電量はシミュレーション比19%増、年間で二酸化炭素削減量220トンを達成した。遮熱効果で冷房費を20%削減している」(同)。

 地球温暖化対策や環境負荷の低減を図るため、省エネへの取り組みは今後、ますます重要になっていく。そうした中、断熱や遮熱技術が省エネで果たす役割は大きくなっている。

 

有力企業の製品・技術<順不同>

大日本塗料

 大日本塗料の「エコクールシリーズ」は、節電に最適な塗料である。特殊顔料が太陽熱を反射することで、建物や構造物の温度上昇を抑制できることから、室内における空調負荷の低減効果が期待できる。

 さらに断熱機能がある「DNT断熱テクト」を組み合わせることで、熱が室内に伝わるのを防止することにより「遮熱(反射)」プラス「断熱」のダブル効果が得られる。

 そのほか、高耐候性のフッ素塗料や環境に優しい水系塗料などラインアップも充実させ市場展開している。

旭有機材工業

 旭有機材工業の「ゼロフロンER」はビルやマンションの内壁などに吹き付けて施工する現場発泡断熱材だ。発泡ガスには温室効果の高いフロンガスを全く使っていない。新しい発泡剤を使った技術によって、ゼロフロンERの熱伝導率は0.026ワット/メートルケルビンとノンフロンでありながら高い断熱性能を誇る。

 この技術を応用して住宅設備機器、保冷分野向け製品の開発にも注力。優れた環境性能が評価され、日刊工業新聞社主催第13回オゾン層保護・地球温暖化防止大賞審査委員会特別賞を受賞した。

JSR

 JSRの水系塗料原料「SIFCLEAR(シフクリア)」は20年を超える高い耐久性、優れた防汚性を備え、塗り替え・塗り直しもしやすい省エネ、省コスト、そして環境負荷の小さい塗料原料である。

 遮熱塗料は塗装面が汚れると熱線反射性能が低下して遮熱性能が落ちる。SIFCLEARを使用した遮熱塗料は汚れにくく、長期にわたり良好な遮熱性能を示す。高い耐久性と塗り替え・塗り直しのしやすさは塗装費用を削減する。水系材料のため揮発性有機化合物(VOC)が発生せず、環境にやさしい塗料を作ることも可能。

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