業界展望台
〜国内回帰に挑む造船業と海上交通〜
7月20日「海の日」を想う
7月17日(金曜日)付 日刊工業新聞 12面
7月20日「海の日」は、海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う日と定められている。一方で日本の造船業界は「2014年問題」により造る船がなくなるのではないかと危惧された。存続も危ぶまれた日本の造船業だが、世界に誇る技術の高さや環境性能で対応し、最近では円安の追い風も受けて15年1〜3月期の新造船受注量では世界シェア34.3%で世界トップに躍り出た。海の日にちなみ、国内回帰に挑む日本の造船業と海上交通の動向を探った。
15年1〜3月新造船受注量、日本が世界トップに
四方を海に囲まれている日本。古くから海上輸送の発展とともに人々の生活は豊かさを増した。船はエネルギー資源や食糧、自動車や医薬品などを運搬し、人々の営みに貢献する。そこに不可欠な要素が造船業であるが、リーマン・ショック後の世界不況や円高、新造船の受注が枯渇するとされた2014年問題によって、一度は低迷した。
エコシップの優等生である日本は燃費性能や高い技術を生かして再起を果たしたが、その先には労働力不足が待っていた。原因の一つに少子高齢化による影響がある。業界関係者は「若い人の力は強大だ。日本の造船業を絶やさず後生へとつないでいきたい」と、造船業の未来に想いを寄せる。
日本造船工業会(造工、東京都港区、03・3580・1561)は造船業の健全な発展を図り、日本経済の繁栄と国民生活の向上に寄与することを目的として活動する。若い人に向けて造船業の魅力を伝えるために、中学生や高校生を対象に発行する「壁新聞 Shipbuilding News」はその活動の一つだ。
若い力はもとより、労働力不足の解消には女性の活力も求められている。東京大学では造船業向けパワーアシストスーツの調査研究が進められている。試用に関する手引きを作成し、デモンストレーションを三井造船千葉事業所(千葉県市原市)で6月22日に公開した。今回の結果を生かし、日本船舶技術研究協会(東京都港区、03・5575・6425)は、15年度に上向き・立向き作業負担を軽減する試作品を開発し、商品化を検討する。女性のみならず高齢者の雇用促進にも結びつける。
日中韓の造船受注量世界シェアを見ると明らかなように、日中韓の三大造船国は合わせて世界シェアの9割強を維持し続けている。造工の調査によると14年の日中韓の国別の造船受注量世界シェアは中国が前年比3.8ポイント減の38.8%で3206万総トン。韓国が同4・6ポイント減の29.8%で2465万総トン。日本は同10ポイント増の23.4%で1933万総トンであった。
一方、15年1〜3月期における日本の新造船受注量は500万総トン超えで世界シェア34.3%の世界一位となった。業界関係者は「短期間のデータにとらわれず、長期的な目線で見つめなければならない」と攻めの姿勢を崩さない。
造船業と密に接するものに関連機器がある。EIZO(石川県白山市)のパネルマウント液晶モニターは、振動や動作温湿度の耐性に優れ、主要な船級の認定を得ている。企画・開発から、設計・製造、品質管理を含む製販一貫の対応により、個別のシステムごとに要求されるニーズにも柔軟に対応することが可能で需要側にとって最適な製品を提供する。
そのほかコンピューター用モニターやアミューズメント用モニターなどの映像機器およびその関連製品の開発、設計、製造、販売など幅広い製品ラインアップとカスタム対応でさまざまなニーズに対応する。
海上交通の安全-大規模事故防止を
貿易全体の約8割を占める海上輸送。船の往来は私たちに豊富な生活資源をもたらせるが、そこには自然災害による海難や海賊などによる事件も存在する。海上で起こる事件や事故は人命に対する危険や国の経済に対して大きな影響を与えることが懸念される。
11年3月31日に中央交通安全対策会議で決定された「第9次交通安全基本計画(11年度―15年度)」では海上交通における安全目標として日本周辺で発生する海難隻数を第8次計画期間(06年度―10年度)の年平均2473隻から15年度までに、約1割削減の2220隻以下にすることを定めた。
「ふくそう海域」における航路閉塞(へいそく)や多数の死傷者が発生するなどの社会的影響が著しい大規模海難を防止し、その発生数をゼロとすることも目標とされた。
国際商業会議所(ICC)、国際海事局(IMB)の年次報告書によると、13年の海賊や武装強盗、窃盗などによる事案発生件数は、世界全体で264件と、12年の297件より減少している。
国土交通省では08年以降、海賊等事案件数が急増したアデン湾を航行する日本関係船舶のみならず、外国船などからの護衛対象船舶の申請受け付けなどを取りまとめ、防衛相との連絡調整を行っている。
20日に海の日を迎える。造工関係者は「海洋国日本は古来より海を通じてあらゆる人や大陸と交流し、発展してきた。島国日本に多くの恵みを与えてくれる海の存在を皆さまに再認識していただきたい」とあらためて海の日に想いを傾ける。海に日本の産業発展を誓う一日としたい。
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