業界展望台
電源トランス
電子・電気機器を安全・安心に利用するために
7月30日(金曜日)付 日刊工業新聞 12面〜13面
電源トランスは小型電気機器・装置のプリント基板実装に利用される小型タイプや、設備・産業機器向けの大型タイプがあり、電源部分で入力されてきた電圧を必要な電圧に変換するという役割を果たしている。電子・電気機器を安全に、安心して利用できるようにするため、設計の際には電気エネルギーを扱う電源トランスの容量に対する配慮、過電圧に対する安全対策などが重要となる。
容量や保護回路など 機器設計時に配慮を
地球温暖化防止や環境負荷低減を目指す取り組みから、省エネ化技術が注目されている。電気エネルギーを目的とする電圧に変圧にするために利用される電源トランスで損失をいかに削減するかが省エネ化のポイントとなる。そのため、トランスを構成する部材の形状や材質などの改良が行われている。
電源トランスは入力側の1次コイル(巻き線)、出力側の2次コイルと磁性体のコアで構成されており、1次、2次、それぞれのコイルはコアに巻きついた状態になっている。
トランスのコアの形状は(1)ドーナツ型のもの(2)ドーナツ型ではないが継ぎ目のない環状で断面が円形に近いもの(3)Eの字をしたものとIの字をしたものが一組となった「EI」と呼ばれるもの(4)Uの字をした二つを組み合わせてOの字にしたもの―に分類される。
また、相数では一つの電気回路に対して一つの正弦波の電流が流れる「単相」、一つの電気回路に対して三つの正弦波の電流が流れる三相、巻き方では1次コイルと2次コイルがつながっている「単巻」、1次コイルと2次コイルが分離し、電気的に絶縁されている「複巻」がある。この相数と巻き方の組み合わせで、単相単巻、単相複巻、三相単巻、三相複巻といったように分類される。
単巻タイプはオートトランスとも呼ばれている。構造上、小型化しやすいというメリットがある。一方、複巻タイプは絶縁トランスとも呼ばれており、入力側の電気が出力側に直接流れることを防ぎ、出力側につながれた回路を保護するという役割を果たす。
電源トランスはその電流容量に合わせて、容積が大きくなる。機器の小型・軽量・薄型化を進めるため、電源トランスには低損失とういう環境性能の向上と同時に容積の低減や実装面積の削減、低背化といったダウンサイジングが求められている。その実現を目指し、材料面で開発が進む。
現在、トランスのコアの材料として利用されているのは鉄に少量のシリコンを加えて作られた合金であるケイ素鋼板、ニッケルと鉄の合金であるパーマロイ、そして酸化鉄を主原料としたセラミックスのフェライトなどである。メーカーではトランスのコアにおける低損失化やコアの高飽和磁束密度化を目指し、こうした改質を行っている。
また、磁気回路のシミュレーションを行い、最適なコア形状を導き出すことでコア形状や構造の改良を図ったり、コアの成形方法、材質の改良、さらにはコイルの巻き線技術などの向上にも取り組んでいる。その結果、コアサイズの縮小やコイル巻き線量の削減などを実現。性能はそのままに、サイズを小型・軽量・薄型化している。
電源トランスは機器の電源供給部に利用される部品であり、電力を扱うため、万が一、事故が発生した場合の影響が小さくない。2次側に定格を超える大きな負荷がかかることによる過電流の発生や、雷サージの影響による一時的な過負荷、過電流、過電圧などは電源トランスの異常発熱となり、機器の破損のみならず、火災につながることもある。
そのため、機器の設計段階でトランス容量は2次側に余裕があるものを選択することや、電源トランスの1次側、あるいは2次側に保護回路を設けること、電流ヒューズやサーキットブレーカー、サージアブソーバーを使用することなどの対策が必要だ。
【有力企業の製品・技術】
■城山産業
城山産業はコア(電磁鉄芯)の専門メーカー。モーター用と並び、トランス・リアクトル用で幅広い分野に実績を持つ。業界でも珍しい金型設計・製作から打ち抜き、自動積層までの一貫生産体制を誇り、試作品から量産まで顧客の要求に短納期で、柔軟に対応する。
マイクロメートルオーダーの精密金型も内製しており、新たな金型専門工場を本社近隣に稼働した。これにより製品の高精度化に加え、より大型のコアの供給が可能となった。
■相原電機
相原電機は創業以来51年、「センター」ブランドのトランス専門メーカーとしてユーザーから高い信頼を得ている。2015年7月の創業50年の節目に、これまで好評だったYSシリーズをモデルチェンジ。ECLシリーズとして発売した。E(イージー)平易で、C(コンパクト)かつL(ライト)軽く、安全でより使いやすい新商品となった。取り付け寸法も変わらず即、置き換えが可能。従来の容量で、機種によっては30%のコンパクト化を実現した。
■ゴトウネジ
ゴトウネジはネジの製造で培った固有技術と管理技術で、金属部品の先進メーカーを目指している。同社はネジ供給を通じて「ネジが正しく使われていないことが多い」と感じてきた。金属製部品の”作り方“や”使い方“では価値分析(VA)が行われている。VAでみると、部品自体をコストダウンしてもアセンブリー製品の原価低減に寄与していないものが少なくないという。同社は固定観念にとらわれず、VAを利用し、価値あるモノづくりを提案している。
■スワロー電機
スワロー電機の新製品「CLシリーズ」は、出力コンセント(AC100ボルト)と超高輝度LED、サーキットプロテクターを内蔵した盤内用の電源トランス。配電盤のメンテナンス時やパソコンでのデータチェック時、また、ハンダごてや電動工具の使用時に電源が必要になるが、同製品は200ボルトの主電源に対して100ボルトの電気を供給する出力コンセントとトランスを一体型にした。配電盤に取り付ける部品点数が削減でき、少ない工数で作業ができる。
■中央電機工業
中央電機工業は昇降機や産業、通信機器、電力配電機器分野を得意とする乾式変圧器、リアクトルメーカーである。特に太陽光、風力などのエコ発電システムをはじめ、無停電電源装置、高速エレベーター、各種産業機器向けに高い評価を得ている。
2014年5月から稼働の新本社工場では対応できる製品の最大定格容量を拡大した。またAC・DCリアクトルが好調でこれらに伴い新エネルギー分野拡大をさらに強化する。
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