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業界展望台

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高効率を追求する 省エネ機器&ソリューション

8月7日(金曜日)付 日刊工業新聞 8面

 わが国はエネルギー源の中心となっている化石燃料に乏しく、エネルギーを巡る国内外の状況変化に大きな影響を受けやすい。経済産業省が作成した2030年度の望ましい電源構成(エネルギーミックス)では「徹底した省エネルギー」の実行が前提となっている。環境に配慮し、生産効率の向上などにつながる省エネへの対策は喫緊の課題であり、対策の加速が求められる。

業務部門の対策に注力

 徹底した省エネの実行を前提に作られた2030年度のエネルギーミックスが7月16日に決定、了承された。東京電力・福島第一原子力発電所事故の反省から安全性を最優先しつつ、安定供給、経済効率性、環境適合のバランスに苦心した。

 現状の電気料金は震災前より産業用で約3割、家庭用で約2割上昇。原子力発電所が停止する中で、液化天然ガス(LNG)などを燃料とする火力発電所のフル稼働が続いているためだ。化石燃料の抑制とエネルギー自給率向上が30年度に向けた優先課題の一つとされた。

 課題解決へ向けた大きな一歩として注目の的である”省エネ“。経産省資源エネルギー庁は、産業部門・業務部門・運輸部門・家庭部門の各部門における省エネ対策の積み上げにより、30年度に原油換算で約5030万キロリットルの省エネを計上する。

 産業部門では主要4業種(鉄鋼、化学、セメント、紙・パルプ)において低炭素社会実行計画を推進し、工場ではエネルギーマネジメントを徹底する。業種横断的な高効率設備の導入(低炭素工業炉、高性能ボイラー、コージェネレーションなど)などを通して約1042万キロリットルの省エネを見込む。

 業務部門では30年度に発光ダイオード(LED)や有機ELなどの高効率照明のほぼ100%導入・普及を見通している。空調は冷媒管理技術の83%導入を見通す。そのほかビルエネルギー管理システム(BEMS)の活用、省エネ診断などによる徹底的なエネルギー管理の約47%導入などで、合わせて約1226万キロリットルの省エネを計上する。

 特に今後、業務部門の省エネ対策に注力していく方針。ビルや物流施設などではBEMSの導入がみられるが、最近ではIoT(モノのインターネット)を通じてつながる機器も増え、省エネ効果増も期待できる。

ビル管理効率化

 オフィス関連機器などを広く手がける内田洋行では「ビル統合管理システム」で職場空間の快適性と生産効率の向上を提案する。

 空調や照明などの設備はメーカーごとに仕様が異なるケースが多く、必要な通信規格も異なるなど課題が多かった。同システムは設備のメーカーを問わず統合でき、タブレット端末(携帯型情報端末)などで一元的に閲覧・操作することができる。各設備のデータから照度・温度・湿度それぞれの相関関係を導き出し、最適な組み合わせを算出する。

 統合管理が可能な設備のなかには一つ一つ調光制御が可能なLED照明もあり、今後は調色制御の導入も検討されている。オフィス内で必要な部分のみ照らしたり照度を上げたりするきめ細かい管理が可能なため省エネにつながる。無線・無給電のセンサーやスイッチにより大規模な電気工事も不要。既存のオフィスでもワンルーム、ワンフロアから導入でき、大きな設備投資をしなくても、顧客に最適な必要最小限のシステムを提案することができる。

 「我慢する省エネではなく、省エネしながら快適かつ仕事の効率の上がる環境を構築することで生産効率の向上に貢献したい」と内田洋行スマートビル事業推進部事業推進課の谷澤直人氏は省エネによる生産効率の向上に意欲をみせる。

 今後は次世代のエネルギーとされる水素を活用した省エネなども注目される。水素の利活用を拡大することで、大幅な省エネルギーだけでなくエネルギーセキュリティーの向上や環境負荷の低減に大きく貢献できる可能性がある。

 

有力企業の製品・技術

ダイキン工業

 ダイキン工業のハイブリッド油圧ユニットは発売後15年を経過した現在、省エネ性や低騒音が評価され、多数採用されている。世界各国では産業用モーターの高効率化を義務付ける規制が加速しており、日本でも省エネ法が改正され2015年4月にトップランナー制度がスタートした。

 同社のハイブリッド油圧ユニットはインバーター駆動専用の高効率モーターを採用しており、各国の規制の対象外である。仕向け国ごとの規制に関わらず使用でき、モーター選定や在庫管理の煩わしさを解消。今後の規制強化時の設計変更も不要になるなど、多くのメリットがある。

光速技研

 光速技研は紫外線発光ダイオード(UV-LED)で便座を除菌するトイレ製品を販売している。

 便座のふたに16個のUV-LEDを取り付け、センサーにより便座のふたが閉じている時のみ電源が入り除菌する。UV-LEDの発光にかかる電力料金は10時間で約3円と省電力なのが特徴。

 UV-LEDは紫外線による殺菌効果により、耐性菌を滅菌することができる。最近では病院で使われるスリッパの除菌などに活用されている。

 上月啓右社長は「施設などで共用される洋式便座の衛生面におけるニーズが期待できる」として公共施設などへのPRを強化する。

内田洋行

 働く場に求められているのは、省エネはもちろん、そこで働く人の生産性向上に寄与する環境。働く場はそれぞれの企業によって特徴が異なり、同じ生産性向上や省エネルギーでも実現方法は異なる。

 内田洋行のIoT(モノのインターネット)で実現するスマートソリューションは、センサーやネットワークの技術を駆使して、照明や空調などさまざまなシステムをコントロールすることで省エネと生産性向上の両方を実現する。さらにフロア単位やゾーン単位といった小さな単位から後付けで導入できるため、顧客の個別の事情に適した形で、最適な環境を構築することができる。

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