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過熱蒸気発生装置と関連機器

8月7日(金曜日)付 日刊工業新聞 11面

 過熱蒸気は常圧の状態で100度Cまで加熱した飽和蒸気をさらに加熱した蒸気であり、対象物の加熱や焼成、焙煎(ばいせん)、乾燥、炭化、殺菌などの効率化を目的に利用されている。無酸素状態で酸化させることなく乾燥、焼成ができることから、食品加工、電子産業、窯業、さらには廃棄物処理など、幅広い分野でその技術の応用が進んでいる。

CFRPリサイクルにも応用

 過熱蒸気の特徴は加熱空気や飽和蒸気と比較して、大きな熱容量を持っていること、加熱温度分布に均一性があることなど。乾燥や焼結の時間短縮、加熱により発生する製品不良率低減などの実現が可能だ。最近、注目されているのはリサイクル、リユースへの応用。携帯電話事業者では回収した携帯電話を処理する際、手作業による解体を効率化するため、分解処理に過熱蒸気を利用しており、成果を挙げている。また、車載電子回路基板の解体・分離に過熱蒸気を利用している企業もある。

 炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のリサイクルへの応用も研究が進む。2014年10月、愛知県は「知の拠点あいち」重点研究プロジェクトで、CFRPリサイクル製造プロセスの開発を発表した。同プロジェクトは大同大学、ファインセラミックスセンター、科学技術交流財団が共同研究で取り組んだ。CFRPは軽量、高強度、高剛性で、航空機、自動車、風力発電など、産業用途で需要が拡大している素材。その製造工程で発生する中間材料の端材や使用済みCFRPを過熱蒸気で処理する。

 プロセスは(1)過熱蒸気でCFRPの樹脂のみを分解・除去(2)繊維の並び方を維持した状態の炭素繊維を回収(3)真空樹脂注入成形法(VaRTM法)で回収した炭素繊維に熱硬化性樹脂をしみ込ませ、加熱硬化―というもの。(2)で回収した炭素繊維は性能がほとんど劣化しておらず、市販の炭素繊維から製造したCFRPと同等の性能になるという。

 また、医療器具や食品容器、乾燥食材などの殺菌への利用も効果的だ。高温の過熱蒸気を対象物に過熱蒸気を当てることで、短時間に殺菌処理を行うことができる。

トクデン

 トクデンが過熱蒸気発生装置「ユーティリティパワー・スーパースチーマー(UPSS)」の販売を開始して約3年。過熱蒸気温度700度C、プラスマイナス1度Cの制御性、95%以上の熱効率を実現し高い評価を得ている。

 同社は15年7月、温度制御性と効率性能を維持し1200度Cの過熱蒸気を発生する高温タイプを発売。蒸気ボイラー不要で金属熱処理やアルミ溶解、セラミックス脱脂・焼成など多様な用途に対応する。蒸気発生量調整機能や炉内温度で蒸気温度制御が可能なカスケード制御、待機・間欠運転などのオプション機能も開発した。

 

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