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業界展望台

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ラインの生産効率向上に貢献 切りくず搬送・処理装置

9月2日(水曜日)付 日刊工業新聞 10面〜11面

 切削加工などの金属加工の際に必ず発生する切りくず。処理を怠ると現場作業者のケガの原因となるばかりか、稼働している生産ラインを止めてしまうことにもなりかねない。厄介者扱いされがちな切りくずだが、一方では貴重なリサイクル材でもある。これら切りくずを、安全に効率よく処理するのが切りくず搬送・処理装置だ。設備投資が回復する中、装置メーカーは顧客満足を高める製品開発とサービス体制の充実を図っている。

■安全性を確保

 切りくずをうまく処理することは現場作業者やラインの安全性を確保し、生産を効率化する上で欠かせない取り組みである。工場や設備の規模にもよるが、一般的な加工現場では処理装置の導入で、処理作業の負担を3分の1にできるという。「将来的には処理負担ゼロも視野に入れている」(装置メーカー)と先を見据える。

 最近の需要動向は、設備投資の持ち直しにより自動車関連向けが好調。海外の生産拠点でさらなる効率化を図り、処理装置の導入が進んでいる。国内でも更新や導入を検討する企業が増えている。これまでは工作機械への投資には前向きでも、切りくず処理に関する投資を前向きに検討する企業は少なかったという。「切りくず処理の重要性への認識がこれまで以上に高まっている」(同)と説明する。

■日本製を評価

 処理装置には安価な海外製品もあるが、国内で厳しい価格競争を強いられることはない。国内ユーザーは日本製を高く評価し、価格と性能の妥当性を理解しているからだ。このような中、装置メーカーは耐久性とメンテナンス性に優れた製品開発を進める。ランニングコストを低減する設備を提案することでビジネスチャンスを獲得する考えだ。

 切りくず処理装置はクラッシャーやコンベヤー、またこれらを合わせたものなど多様であるが、近年、特に注目されるのがブリケットマシンの高度化である。ブリケットマシンは切りくずの減容と同時に付着したクーラントや油剤を分離し絞り出す。分離だけなら遠心分離機を利用するのが一般的だが、一つの機械で分離と圧縮・固形化の2工程を同時に行えるブリケットマシンは、再資源化を含めた生産工程には欠かせない。

■コストも低減

 ブリケットマシンの高精度化により、切りくずとクーラントの再利用へのコストも低減される。特に航空機分野などでは部材の軽量化を図りチタンやアルミニウムなど高価な特殊金属が多く利用されるため、再利用のコストをいかに抑えるかが重要な課題となっている。そのため今後は航空機分野でのブリケットマシンの需要拡大が期待できる。

 モノづくりが多様化し、生み出される切りくずの材質・形状は以前にも増して複雑化している。装置メーカーに求められるのは顧客ごとの生産現場に合わせ、周辺機器を含めたトータルシステムの提案力だ。小回りのきく対応と、質の高い製品の提供こそがメーカー各社の競争力を高めていく。


主要各社の製品と技術(順不同)

大峰工業

 大峰工業の開発した「片持ち式スクレーパーコンベヤ」は安全・安心、長寿命が強み。長年築き上げてきた実績と”トラブルレス“への信頼により高い支持を得ている。
「フロア型コンベヤ」は上下・左右に自由に屈曲でき、床上に設置できるよう高さを低く設定。ピットを掘る必要がない。

 さらに、切りくず処理の効率化を図る「ノンタッチ大峰システム」、特許製品である2軸スクリュータイプ「ツイン200」もラインアップしている。これらの製品はもとより、すべて受注生産で対応。長い間、業界トップメーカーとしてユーザーからの信頼も厚い。

望月精密機械工業

 切りくず処理機の専門メーカー、望月精密機械工業は長年の実績で培った多くのノウハウと専門知識を生かし、工作機器業界からの要請と現場ニーズに即応した小回りのきく切りくず処理装置「チップクラッシャー」を開発・販売する。同装置は独自のメタルソー形状などから、優れた処理性能と剛性、無振動、静粛性を兼ね備える。アルミニウム、ステンレス、特殊鋼など切りくずの種類を問わず処理し、切りくずの脱油、圧縮固形化、マシンエア搬送などの前処理機としても使われている。

 同社は全8機種をラインアップ。オプションとして異物排出機能の追加も可能で、多様なユーザーニーズにきめ細かく対応する。

サンマシーン

 サンマシーンは切り粉破砕用のチップクラッシャーと周辺機器の総合メーカー。長年の実績で培ったノウハウを生かし、切り粉の材質、形状、見かけ比重などから現場に最適な機種を提案する。独自技術でクラッシャーの課題であるブリッジ発生を抑え、効率よく確実に処理。工作機械や排出コンベヤーと連動させた切り粉処理システムの自動化にも対応する。消耗品の刃物もメンテナンスが容易。両面使用によりランニングコストも抑える。

 さらに切り粉集中破砕装置は切り粉供給反転機、チップコンベヤー、固形機、遠心分離機などを組み合わせ、工場の省エネ化・生産性向上など環境改善や資源の再利用に貢献。

白山機工

 白山機工はチップコンベヤーに、フィルター内蔵型5機種、長い切りくず用4機種、細かい切りくず用7機種をそろえる。用途別にフルラインアップ化を図り、多様化する顧客ニーズに対応している。チップコンベヤーのフルラインアップ化を推進するのは、工作機械から排出される切りくずの材質や形状、量が千差万別な上、切削液の違いなどにより処理が困難になっていることに対応するため。

 生産部門と間接部門が一緒になり、顧客に合わせたオーダーメード製品の短納期生産に対応。近年は環境問題にも配慮し、ポンプバックシステムによる清掃不要のタンクや、ピットレス集中処理を実現している。

LNSジャパン

 LNSジャパンはグローバルな企業展開を進めるLNSグループの一員として日本市場にマッチしたグローバル製品の開発を進めてきた。長さ7メートル以上、出力30キロワット以上の工作機械からの切りくず排出量を想定した大型チップコンベヤー標準機「SHD」シリーズは部品の標準化を進め、仕様決定から納品までの時間を大幅に短縮した。主に門型機を中心とした大型マシニングセンター(MC)向けに出荷。日本のほか、米国や英国、中国など海外で生産体制を整えている。6月に東京都品川区に営業・サポート拠点を開設。グローバル対応のチップコンベヤー、クーラントタンクを中心に工作機械メーカーやユーザーへの支援を拡充する。

松本機械販売

 松本機械販売の連続式切りくず脱油用遠心分離機は、長年研さんしてきた技術と実績をもとに製作。国内の大半の自動車メーカーが採用し、納入実績を誇る。高価な切削油の回収や再使用、環境公害防止を目的に、大きさと性能によりM―0型、I型の2機種をそろえる。油分の回収率は約90%。

 連続式のため処理量が大きく構造がシンプルで保守・点検が容易。切りくずの排出は処理物に合わせ運転が調整できる。正三点懸垂方式の採用で振動を十分に吸収した滑らかな運転も可能。バスケットの回転は特殊電動機による直結型のためVベルト、ブレーキ、フリクションクラッチなどの消耗部品がない。

森鉄工

 森鉄工は、ユーザーの工場で発生した切り粉をブリケット化し溶解するためのブリケットマシンを鋳物鋳造業界へ数多く納入し、大きなコストダウンに寄与してきた。

銑ダライや鋼ダライをはじめ銅、アルミ対応など顧客のさまざまな「カタメル」ことへの相談を受け付けている。

 最近では、アルミダイキャストの切り粉をブリケット化し、自社で溶解したいという声に応え、鋳物業界での経験を生かして、アルミダイキャスト切り粉への対応を行っている。これらの取り組みは、原料費を大きく削減するメリットがあるという。

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