業界展望台
高機能材加工で活躍 放電加工機
9月9日(水曜日)付 日刊工業新聞 15面
放電加工は通電する素材であれば材質や硬さにかかわらず加工が可能。このため金型や精密部品加工では代表的な加工法として活躍している。自動車や電子機器部品の金型、1マイクロメートルレベルの精度が必要なリードフレームやモーターコアの打ち抜き用ダイス、タービンブレードなど高機能材の加工は得意とするところ。型彫り放電加工機、ワイヤ放電加工機といった装置の加工品質や効率化が進み、新たな用途の開拓が期待されている。
放電加工は工具となる電極と加工対象物(ワーク)の間に微小なアーク放電を毎秒数万回以上行うことで、ワーク表面が熱作用で少量ずつ溶融・蒸発し除去されることを利用する。精密に放電を制御することで精度よく加工でき、切削では難しい高硬度材料に対して使われる。さらに非機械的な加工であることから、工具やワークに作用する加工反力が小さく、微細な工具の使用が可能である。
放電加工機は大きく2種類のタイプがある。一つは銅やグラファイト製の電極に対し転写したい形状に加工を施し、ワークとその電極の間に生じる放電作用により電極形状を加工材料に転写する「形彫り放電加工機」。もう一つがワークと走行する細いワイヤ電極との間の放電現象を利用しワークを切断する「ワイヤ放電加工機」。
この他、棒状電極を使用し細穴を加工する細穴放電加工機は、切削では加工できない範囲の小径・深穴加工が可能。ワイヤ放電加工を行う際のスタート穴をあけるためにも利用される。プリンターのインクジェット部分やノズル部分の加工でも使われる。
他の多くの工作機械と同様、放電加工機も効率的な運用に向けた自動化ニーズへの対応が求められている。実加工時間以外に電極やワークの製作、加工プログラム作成、電極やワークの計測など工程全体をスムーズに動かすためさまざまな取り組みが注目されている。3次元コンピューター利用製造(CAM)導入のほか、搬送ロボットと組み合わせた自動化を積極的に取り入れる現場もある。
また、近年では航空機素材で注目される炭素繊維強化プラスチック(CFRP)への放電加工や、パワー半導体向け炭化ケイ素(SiC)素材へのワイヤ放電加工技術開発も行われている。
放電加工技術の歴史は、1943年に旧ソ連でラザレンコ博士夫妻が電気接点摩耗の研究を行う中で見いだしたのが始まりと言われる。それ以来、70年以上が経過し成熟してきた放電加工技術ではあるが、これら自動化ニーズへの対応や新素材加工技術の確立など、新たな可能性も広がっている。
有力企業の製品・技術〈順不同〉
■日本メカケミカル
日本メカケミカルは工業用除錆剤や防錆剤、洗浄剤、金属加工用潤滑剤の開発・製造を手がけ、特に放電加工関連製品に強みを持つ。中でもワイヤ放電加工用除錆剤「KC-12」は、定番商品として業界に浸透。国内シェアトップクラスで、海外にも普及している。その他、関連製品「メカプルーフW-2K」なども好評を得ている。また新たなワイヤ放電加工用除錆剤「ラストリムーバーPH-27」を発売。安全で強い除錆力を持ち、特別管理産業廃棄物に非該当のため扱いやすい。
■イースタン技研
イースタン技研の「サビーナ」は、ワイヤ放電加工水に含まれる塩化物イオンや硫酸イオンを防錆イオンに変換する。一定の腐食抑制領域に安定をさせ、鉄系のワークが錆びない加工環境を提供する。また、一般的に使用されている防錆添加剤や除錆剤の使用削減ができ、環境対応ニーズが高まる中で再度、脚光を浴びている商品である。約2週間の試用キャンペーンや短期間使用のできるレンタル装置も提供している。
■NMC
NMCはワイヤ放電加工機向け各種ケミカル製品・メンテナンス製品「ハイプロス」シリーズの販売でワイヤ放電加工機メーカーや多数の金型メーカーから高評価を受けている。「ダイスガイドクリーナー」は、ガイド部分を装着したままガイド内部の洗浄が可能。液剤が細かい隙間まで浸透しスラッジを柔らかくし、拭き取り、水洗によりスラッジを除去。洗浄作業の軽減により断線などトラブルも削減する。また防錆剤、脱脂洗浄剤、切削・研削剤など多様な製品群でサポートする。
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