業界展望台
安全・安心社会の要に バルブ産業
9月25日(金曜日)付 日刊工業新聞 10面
バルブは水道、都市ガスなどの社会インフラや電力・化学プラント、建築設備、自動車、食・医薬品、半導体、宇宙ロケットなど多くの産業とその製造活動で活躍。配管に接続して流体制御の要として重要機器の役割を果たす。災害時や緊急時には電気信号によって供給ラインを遮断し、2次災害を防ぐ役割も兼ね備える。安全・安心の社会基盤構築を下支えしている。
■品質管理の決め手
バルブは流体(気体や液体)を流す、止める、逆流を防止する、量を調整するなどの働きを担う。日常生活でも水道やガス管などの品質管理においてなくてはならない存在だ。扱う流体の液体や気体などの違い、可燃性、毒性といった性質の違い、圧力や温度の違いなどに合わせ、バルブの材質や構造もさまざまなものがある。
電磁弁は本体やシステム全体を遠隔監視することができ、災害時などには緊急作動して安全性が保たれる。燃料油や燃料ガスなどを使用する機器や装置に取り付けて供給ラインを遮断し、火災や爆発などの2次災害を防止。貯水槽に取り付けることで漏水を防ぎ、生活・消火用水を確保することができる。
電磁弁と制御機器を組み合わせたシステムは自動で灌水(かんすい)や施肥を行う農業資材としても用いられる。近年では、植物工場で二酸化炭素濃度の調節を行う制御システムなどに参入をはかっているバルブメーカーもある。
また水素自動車普及とともに建設が注目されている水素ステーション向けの防爆バルブ開発など、新分野の開拓に取り組んでいるメーカーもある。次世代の社会基盤構築においてもバルブは安全・安心を確保する上での重要機器としての役割を持つ。
グラフはバルブメーカーなどが加盟する日本バルブ工業会がまとめた2014年度までの10年間の統計。14年度の生産額は前年度比5.6%増の4104億円と持ち直し基調になっている。これは国内で景気回復感に支えられ、設備投資の増加、震災復興需要や都心での再開発による大型の建設需要などが相まって数字に寄与したとみられる。
14年度の輸出額においても前年度比4.7%増の4611億円。輸入額は同20%増の2421億円と軒並み数字の上昇傾向が目立つ。ただ輸出額と輸入額で相手先としては中国がトップとなる。中国での景気減速感や設備投資の落ち込みに対しての影響は不透明感が強く、今後の動向が懸念されている。
この他にも韓国やタイ、台湾、シンガポールなどアジア地域が大きな市場。積極的に海外展開を行っている企業もあるが、国内のバルブメーカーの多くは小規模の機械加工を専門にしており、海外市場の拡大を見据えた競争力強化が必要となっている。
また業界全体としては人材の確保や技術の継承を円滑に進めていくため、バルブ産業の認知度向上も課題となっている。
■バルブフォト五七五募集
日本バルブ工業会ではバルブがいかに世の中のさまざまな場面で使われているかを一般に知ってもらうための「バルブフォト五七五コンテスト」の応募を10月1日から受け付ける。バルブと私たちの暮らしのつながりに関する写真と川柳で表現した作品を懸賞するもので、今年は5回目の開催。最優秀作品には賞金5万円などが贈られる。
前回は過去最高の380作品が集まっている。同工業会では「ユーモアあふれる作品、芸術的な作品、ほのぼのできる作品などぜひ応募してほしい」と呼びかけている。
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