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9月30日はクレーンの日

9月30日(水曜日)付 日刊工業新聞 13面〜15面

 9月30日は「クレーンの日」。クレーンなどによる死亡災害数は長期的には減少傾向にあるものの、労働災害ゼロを目指し、クレーンの事故・労働災害防止を呼びかけている。事業場でのクレーンの点検やメンテナンス、作業員同士の意思確認など日ごろの作業を改めて見直して、安全・確実な作業を心がけたい。

■安全・確実な作業を

 クレーンは建設現場や工場、港湾などさまざまな場所で数多く活躍している。近年、クレーンは高性能化が進み、安全性・操作性向上などの配慮がなされている。しかしクレーンのつり荷の落下や衝突などは大きな事故につながる可能性があるため、作業時には細心の注意が必要だ。

 クレーンの日はクレーンなどによる事故や労働災害を防止するため、日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会が1980年に制定したもので、今回で36回目となる。制定当時と比較すると、クレーンなどによる死傷者数は大幅に減少しているが、まだ死亡災害もゼロではない。

 厚生労働省によると2014年の労働災害による死亡者数は、前年比27人増の1057人。全産業において労働災害による死亡者数は長期的には減少傾向にあるものの、14年の死傷者数は前年比1378人増の11万9535人、一度に3人以上が被災する重大災害は同48件増の292件となっている。

 14年度の労働保険新規受給者(業務災害)も前年度比1万958人増の54万5007人おり全産業での安全対策が急務となっている。

 クレーンに関してみると、13年のクレーンなどに関する労働災害による死亡者数は前年比5人増の56人だった。業種別にみると、製造業が最も多く25人、建設業が23人、その他の事業が7人、陸上貨物運送業が1人となっている。

 機種別にみると、天井・橋形クレーンなどのクレーンによる死亡災害が30人、車両積載形トラッククレーン・ホイールクレーンなどの移動式クレーンによる死亡災害が23人で、両者合わせて全体の94.6%を占める。そのほか、ゴンドラやエレベーターでの死亡災害が発生している。 

 現象別では、落下が24人、挟圧が13人、機体・構造部分の折損・倒壊・転倒が8人、墜落が7人、つり荷・つり具の激突が3人となっている。詳しくみると、最も多い落下ではつり荷の落下が前年比5人増の17人、積み荷などの荷の落下が同6人増の7人だった。落下の原因としては玉掛けワイヤロープなどからつり荷が外れたことによるものが11件と最多だった。

 挟圧では機体(搬器)とほかの構造物によるものが最も多い5人だが、前年比6人減となっている。

 クレーン作業ではつり荷や機体の重量が重く、小さなミスでも大きな事故を引き起こすことが予想される。十分な安全確認を作業員同士で行うことが求められる。

労働災害発生状況の推移

クレーンなどによる死亡災害の推移

■気象の急変に注意

 クレーン災害は不注意や意思のすれ違いなどの人的な要因だけでなく、気象の影響による自然災害も危険要因として挙げられる。近年は突風や竜巻、大雨や局地的な集中豪雨など異常気象の発生回数が全国的に増加し、被害の規模も拡大している。

 豪雨の中でのクレーン作業は、視界が悪いだけでなく、雨の音で作業者の合図が伝わりにくい。強風や突風ではクレーンが転倒する危険もある。中でも積乱雲からの強い下降流が地面にぶつかり、水平に広がって突風となるダウンバーストは、つり荷を強く揺らして落下させるばかりか、クレーンを倒壊させたりする危険が高い。市街地でクレーンが倒壊すれば周辺地域にも大きな被害を及ぼす可能性もある。

 建設現場や港湾だけでなく、工場の屋外に設置された天井クレーンなどでも突風でクレーンが逸走してランウェイから落下した事例もある。最近は、わずかな時間で急激に天候が変化することがあるため、天候の変化には細心の注意を払いたい。また気象の急変に対して作業の中止や作業員の待避、クレーンの逸走防止などに対応する体制を構築することが求められる。

■労働災害を防止−要項作成し啓発

 14年の労働災害による死傷者数が前年を上回った背景には、消費税増税前の駆け込み需要による業務量の増加や、景気回復による経済活動の活発化に伴う未熟練労働者の増加などが指摘されている。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてのインフラ整備や、都心の再開発などの需要もあり、14年のクレーンなどの生産・出荷は増加傾向だった。

 クレーン作業に対する労働災害を防止するためには、クレーンの定期的な自主検査や点検・整備、声掛け確認などの実施が求められる。

 日本クレーン協会とボイラ・クレーン安全協会はそれぞれ「クレーンの日実施要項」を作成・配布し、クレーンなどの労働災害につながる職場の危険有害要因を明確にして、改善に取り組むことを促している。クレーンの日には実施要項をもとに、作業における確認点を一つひとつチェックして、日ごろの作業を改めて見直したい。

 両協会では毎年、クレーンの日に合わせてポスターを作成しており、写真と標語を募集している。今年の日本クレーン協会の標語は「しっかり点検 しっかり確認 互いに声かけ クレーンの安全」、写真は引き込みクレーンを採用した。

 ボイラ・クレーン安全協会は「クレーン操作 あなたが無事故の 司令塔」を標語に、大型の移動式クレーンが多数稼働している写真を選考し、それぞれポスターを作成した。現場に貼ることで注意喚起を促し、安全活動を推進する。

 また日本クレーン協会は9月17、18の両日、札幌市の札幌市教育文化会館大ホールで「第36回全国クレーン安全大会」を開いた。17日は総合集会で優良クレーン関係業務従事者などを表彰したほか、講演会を開催。講演は厚生労働省労働基準局安全衛生部の田中敏章安全課長による「安全行政の課題と今後の展開」と、JR東日本テクノハートTESSEIおもてなし創造部の矢部輝夫顧問による「おもてなしが生んだ『奇跡の現場』」が行われた。

 18日は「クレーン等の製造者・使用者の集い」と題し、クレーンメーカーやユーザーが労働災害防止活動や研究、改善事例などを発表した。

■安全意識・技能向上へ競技大会を開催

 両協会はクレーンの安全作業への意識を再確認するため、技能競技大会を開催している。ボイラ・クレーン安全協会は15年5月22日に福島県郡山市の福島事務所で「第46回クレーン運転及び玉掛け技能競技全国大会」を開いた。クレーン運転士1人、玉掛け者2人の3人でチームを構成し、玉掛け、合図、クレーン運転、質量目測競技で競う。今回は12チーム36人が参加した。次回は16年5月20日に福島事務所で開催する予定。

 日本クレーン協会は10月9日に東京都江東区の同協会クレーン教習センターで「第14回全国玉掛け安全競技大会」を開催する。

 クレーン安全運転、移動式クレーン安全運転、玉掛けを毎年順番に行っており、今年は玉掛け安全競技。

 毎日繰り返す作業は慣れが生じ、注意力が散漫になりやすい。クレーンの日をきっかけに安全作業の意識を高め、災害ゼロの実現に向け、継続した安全管理活動を実施したい。

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