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地域応援隊

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独自性をとことん追求する 超エクセレントテクノロジー −埼玉西部地域−

6月27日(水曜日)付 日刊工業新聞 14面〜15面 地域特集から

<出稿企業一覧>

企業名   新聞広告
曙金属工業 アルマイト処理のスペシャリスト
染谷製作所 樹脂焼結多孔質体製品の専門メーカー
イシダ技研 非円形歯車・カム製品製造
ケージーエス 地震感知ストッパー
モスト技研 強化段ボールベッド・各種家具
大槇精機 切削加工の駆け込み寺
垣堺精機 金属箔向けスリッターマシン
E&Mエンジニアリング 脱脂炉の排煙を無臭・無害化
武州ガス ガスコージェネレーション
三芳合金工業 銅合金のスペシャリスト
チャレンヂ カーボンコンポジット製品をプレス成形
ワックデータサービス 編み機向けセラミックス圧電素子アクチェーター

 

熱い経営者魂で時代の荒波を乗り切れ

 いつの時代でも栄枯盛衰、毀誉褒貶(きよほうへん)はつきもの。特に、現代は移動時間の短縮、情報伝達の高速化が目覚ましく進み、グローバル時代と呼ばれる。こうした潮流下で、世界全体を見据えた「適地生産」という経営理念がもてはやされ、人種・国境を問わない多様性社会が求められるようだ。ただ、時代がシナリオ通り動く保証はない。日々の経済活動はミクロ経済の積み重ねで決まり、特に日本においては元気な中小企業が地域の草の根経済を支える。埼玉西部地域で奮闘する企業の活動をリポートする。

 

カーボンコンポジット製シートフレーム量産化へ−チャレンヂ

炭素繊維複合材

 チャレンヂ(埼玉県狭山市、中村敬佳社長、04・2900・2111)は、炭素繊維複合材(カーボンコンポジット)製品の開発・製造を手がける。このところ自動車向けが活況で、同内装部品から外装部品(写真)まで、採用品種も増加傾向が続く。また、ボーイング787次世代機向け金型部品などの特需もあり、ここ半年ほど、工場はフル稼働状態だ。

 同自動車部品向けは、200トンのサーボプレス機を用いて量産する。プレス金型を工夫するなどして、1個あたりの成形時間を約5分で済ます。周辺工程を含めても、従来の成形炉(オートクレーブ)式に比べ、およそ10倍の生産性を実現した。

 同プレス工法を用いて、カーボンコンポジット製シートフレームの量産化にも取り組む。シートメーカーと共同で実用化試験などを進めており、2013年にも商品として市場投入する構え。同実寸モデルの量産化試験などのため、新たに1000トン超級サーボプレス機の導入を予定している。

 

樹脂焼結多孔質体の専門メーカー−染谷製作所

樹脂焼結多孔質体

 染谷製作所(埼玉県新座市、染谷周社長、048・479・3260)は、樹脂焼結多孔質体(写真)の専門メーカー。精製した樹脂粉末を焼結・成形する工法で、形状や気孔径についての生成自由度があり、少量多品種生産に向く。気体・液体向けフィルターや空気音用サイレンサー、インク・香水の液体リザーバー向けなど適用分野は幅広い。 

 樹脂原料の選定から、焼結、成形まで一貫して自社工場で行う。創業41年の経験と実績に裏打ちされた独自の生産設備が強みでもある。大抵の樹脂金型も内製化しており、難形状品なども率先して引き受ける。フィルター性能をつかさどる平均気孔径は5マイクロメートルから調整が可能。月間、最大で約100種類の製品出荷を行っており、このところは医療向けが忙しい。

 


海底地震津波観測網向け特需を予想−三芳合金工業

国際熱核融合実験炉(ITER=予想図)

 三芳合金工業(埼玉県三芳町、萩野茂雄社長、049・258・3381)は戦前から銅合金製品を手がけて来た。少量多品種品に強みがあり、各産業分野から持ち込まれる難題に真っ向から対応。「イエスOK(萩野源次郎常務)」が社のキャッチフレーズともいえる。

 航空機向けランディングギア用交換部品において国内で大きなシェアを握る。こうした実績をひっさげ、現在、ヨーロッパやブラジルなどの航空機向け需要を開拓中。欧州で建設計画が進んでいる国際熱核融合実験炉(ITER=予想図)でも三芳合金工業製部品の採用が決まるなど、その技術に対する信頼は大きい。今後、太平洋沖に設置が予定される海底地震津波観測網でも自社製品の採用を見込む。

 もともと銅合金は、その熱伝導製の良さを生かした金型部品として定評がある。たとえば、同社の消しゴム向けキャビティとしての国内シェアはかなり高い。現在、こうした銅合金金型の特性をアジア地域に広めようと、現地での宣伝活動にも努める。

 

銀座4丁目に独自デザインのアルマイト模様が登場−曙金属工業

銀座4丁目に出現した「クリスタルメタル」

 曙金属工業(埼玉県川越市、清水矩明社長、049・243・2669)が表面処理を手がけたマーブル調デザインのアルマイト表面処理加工「クリスタルメタル」が銀座4丁目に出現(写真)した。街灯の根本部分にシルバー基調で被覆処理されている。正確な本数は不明だが、ざっと見渡す限りの街灯には同デザインが見てとれる。現場を見学した清水社長は「模様の珍しさに足止めして写真撮影する外国人もいた」とうれしそうだ。

 クリスタルメタルは、日本軽金属、高野軽金(東京都台東区)との共同開発。アルミ板表面に再成長させたアルミ結晶粒を酸洗処理(エッチング)することでマーブル調の結晶模様を表現した。結晶粒の大きさは1ミリ径から15ミリメートル径程度まで。板厚は0.6ミリから2ミリメートルまで、板丈は1250ミリメートル四方まで表面処理できる。表面処理後のプレス加工や浅絞り加工にも対応可能なほか、さまざまな色調での染色処理が可能だ。

 

非円形歯車で著名な存在−イシダ技研

田植え機の遊星楕円(だえん)歯車機構

 イシダ技研(埼玉県飯能市、石田直樹社長、042・971・0290)はカムユニットや非円形歯車など各種歯車製品の設計・製造が主力。特に非円形歯車に関しては、国内に2社しかない専業だ。エンドミルなどを用いた独自の加工技術で、JIS1―2級に値する高精度加工を実現している。

 非円形歯車は、その異形の部分部分で変わる歯車密度を利用して回転伝達速度を可変。これによりクランクやスライダーの変速動作を可能にする。例えば、田植え機の遊星楕円(だえん)歯車機構(写真)を利用した植え付けアームの変速動作制御に用いられるなど、作業動作の高速化に一役買っている。最近は、海外からの商談も舞い込む。

 全社売上高に占める比率の高いのがカム製品群。DNA解析のためのスキャニング用光学部品の動作制御に利用されるなど、先端研究分野でも活躍している。

 

高級工具棚が静かなブーム−大槇精機

高級工具棚

 大槇精機(埼玉県朝霞市、大町亮介社長、048・462・0832)が自社製品として発売した高級工具棚2機種(写真)が静かなブームを呼んでいる。もともと自社工場向けに従業員のやる気を高めようと開発した製品だが「実物を目にして気に入った得意先などから、さりげなく注文が来る」ようになった。販売実績はまだ200台ほどだが、今年の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)会場では再び話題を呼びそうだ。

 高級工具棚としての「ツールワゴン」「ツールキャビネット」2機種は大町社長自らのデザイン。おしゃれなドイツ製同時5軸MCに負けないようにとの思いを込めている。

 例えば、ツールワゴンには曲線を取り入れ、親しみやすいようデザイン家具調に仕上げた。作業者が移動しやすいようハンドルの出っ張りも抑えることでスタイルと機能性を両立。ツールキャビネットの引き出し取っ手部分には、指先がからみやすいよう丸みを帯びた形状を採用。フルスケールで使える引き出しは、強く押し込んでもゆっくり閉まるなど、機構も工夫。キャビネットの一側面には収納式テーブルを設け、いすに座りノートパソコンなどを使える。

 このように優れたデザイン/機能性に注目したのが森精機製作所。公認商品として自社カタログにも掲載している。

 

編み機選針制御向け新アクチェーター発売−ワックデータサービス

編み機選針用小型・高速アクチュエーター

 ワックデータサービス(埼玉県富士見市、渡辺和久社長、049・251・7777)は、積層式セラミックス圧電素子を用いた編み機選針用小型・高速アクチュエーター(写真)を開発した。自社従来型より3割高速化。圧電素子駆動を横向きにすることで、アクチュエーターの体積を4割ほど減らした。メーカーでの実地試験などを経て2013年に発売する。価格は仕様で異なるが従来型より低価格を図る。

 靴下などの複雑な柄物(ジャガート)用編み機などの選針制御に適する。従来では振れ(変位)がマイクロメートル単位と少ないため選針向けに適さない積層セラミックス圧電素子の駆動方式を改良。特殊な変位拡大機構を用いることで、0.6ミリメートルの変位を実現。編み機制御向けへの応用を可能にした。

 圧電素子を横変位にすることで、圧電素子同士の非干渉ピッチを狭め省スペース化を実現。アクチュエーターを小型化できることで、編み機制御シリンダー周辺への設置可能スペースが増えた。また、高速化を実現することで「従来と同様の編み機動作制御を、アクチュエーター設置数3割減で可能にできる」と見ている。

 

薄物金属箔に特化したスリッターマシンを販売−垣堺精機

KSL350HTC

 垣堺精機(埼玉県小鹿野町、垣堺正男社長、0494・75・3310)は、厚さ10マイクロ―200マイクロメートルの金属箔に対応可能なスリッターマシン「KSL350HTC=写真」を発売した。1スリット幅2ミリメートルで、50スリットの切断・巻き取りができ、巻き取り速度は毎分150メートルが可能。電子機器向けトランスコア用材料箔の切断用途などを見込む。

 装置のブレを数マイクロメートル以内に抑制し、箔切断の際に生ずる切断幅のバラつきを20マイクロメートル以内に、端バリの高さを5マイクロメートル以内に押さえた。これにより、後工程での切り粉の発生を削減。「品質要求が極めて高い自動車用リチウムイオン二次電池の材料切断にも利用可能」と見ている。

 同社では最近、東南アジア日系企業向けの引き合いが増えている。これに対応し、10月にはタイのロジャナ工業団地近郊に現地法人を設置する計画。3台のスリッターマシンを用いて、請負加工も行う計画だ。

 

地震感知ストッパーを市場投入)ケージーエス

地震感知ストッパー

 ケージーエス(埼玉県小川町、榑松武男社長、0493・72・7311)は、視覚障害者用機器およびソレノイド製品が主力。中でも、点字ピンを上下するためのソレノイド駆動セル(点字セル)において、世界で7割程度のシェアを握る。小川町の本社工場、フィリピン工場、上海工場の3拠点で、研究開発・適地生産を行う。

 ここ一年、矢継ぎ早に新製品を市場投入。タッチパネルの接触不良を自動判定する装置はスマホ向けに有望だ。また、皮膚表面などに当て、温度刺激で神経の覚醒度を判定する装置など、新分野開拓を積極的に進める。

 今、最も注力するのが年初に開発した地震感知ストッパー(写真)。病院の手術用キャスターなどの下部に装着し、大型地震の揺れの際、地震センサーの反応によるソレノイド駆動で粘着板ゴム板を床に落とし接着する仕組み。製品の高機能化を終え、月内に正式発売する。既に大手病院ネットワークや、大手医療機器メーカーが採用を決めている。

 

モストエコベッド累計出荷300台突破−モスト技研

強化段ボール製ベッド「モストエコベッド」

 モスト技研(埼玉県日高市、見崎秀行社長、042・984・1355)の強化段ボール製ベッド「モストエコベッド=写真」が注目されている。発売から2年ほど経て、ネット販売などを通じ既に300台以上を販売。そのユニークさに注目したテレビ局からの取材が相次ぐなど、うれしい悲鳴を上げている。

 同ベッドは、組み立て前は一抱えで運べる手軽さの一方で、組み立て後は10トンの加重にも耐える堅固さが特徴。接着剤を使わず誰でも15分程度で組み立てられ、通気性が良く湿度にも強い。廃棄時には、分解し再生ゴミとして処分できるなど環境特性も良い。サイズや形状オーダーも自在だ。

 立てかけたり、積んだりしての収納が容易な非常時向け段ボール製ベッド「段暖ベッド」もラインアップ。同一台のサイズは左右90センチメートル、高さが15センチメートルで2台合わせてちょうど一畳分になる仕組み。1畳の4分割品も新たに用意した。これら内部は収納スペースとして使え、非常用グッズ保管も兼ねられる。

 

脱脂炉からの排煙を無臭・無害に−E&Mエンジニアリング

排気燃焼炉

 E&Mエンジニアリング(埼玉県朝霞市、瓶子公延社長、048・456・8665)は、部品の粉末焼結工程で用いられた決着材料(バインダー)除去に用いる脱脂炉の専業メーカー。排煙に対する優れた脱臭機構に大きな特徴がある。同脱臭機構のみを独立させ「排気燃焼炉=写真」装置としての販売も行う。最近は特に「工場に対する居住区の接近などに苦慮する金属やセラミックス部品メーカーからの取り付け依頼が増えている」という。

 排気燃焼炉は、排気口が合えば、どのメーカーの脱脂炉にも接続が可能。1台で脱脂炉2台分の排気を処理できる。天井の高い工場では工場内にそのまま排気できるため装置からのダクト設備が不要。大幅なコストダウンにつながる。

 脱脂炉内からの煙を、長さ5メートル長のラビリンス状燃焼管に通し焼却する仕組み。徹底焼却によりほとんどの悪臭および有害物を除去できる。排煙温度を調節可能な「排気温度調節器」を装備。800度C程度の排気を最大で40度Cまで下げられる。

 

ガスコージェネ/空調などが活況−武州ガス

ガスコジェネレーション

 武州ガス(埼玉県川越市、原敏成社長、049・241・9000)では東日本大震災以降、企業などからガスコジェネレーション(写真)に関する問い合わせが急増している。特にガスコジェネレーションで発生する廃熱を利用した蒸気の需要が見込める病院などでの導入が先行。併せて、ガス空調の導入案件も増加している。

 これらガス関連設備は初期投資はかかるものの、行政による環境関連の各種補助金が受けられるメリットがある。「ランニングコストの削減効果も大きい」(田中正幸特需営業部長)という。本格的な夏到来を控え、地元複数企業の工場で新たにガスコジェネレーション設備が稼働の見込み。稼働が遅れていたホンダ寄居工場も2013年の本格稼働を目前に、年内から徐々に部分稼働していく。武州ガスがホンダ寄居工場まで敷設した中圧ガス管も「今後、リスク分散のため別ルート管につなげループ化する」(同)計画だ。


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