地域応援隊
1月29日（火曜日）付 日刊工業新聞 12面 地域特集から
- ＜出稿企業一覧＞
| 企業名 | 新聞広告 | |
|---|---|---|
| Ｅ＆Ｍエンジニアリング | 排煙を無臭・無害にする脱脂炉 |  |
| 共同技研化学 | 粘接着ﾌｨﾙﾑで発明大賞４度受賞 |  |
| ケージーエス | 地震感知ストッパー |  |
| チャレンヂ | フルカーボンのコンセプトカー |  |
| 協同 | 瞬間発熱剤で急成長 |  |
| 大槇精機 | 切削加工の駆け込み寺 |  |
激動を予感させる2013年が幕を開けた。新政権の経済対策に対する大きな期待感から円安・株高が続くなど、国内経済は小康状態が続いている。だが、世界全体を見ると経済活性の牽引役が乏しいのと同時に、既存の世界秩序に挑戦する勢力による経済不安定化の懸念も依然として根強い。しかし、そうした状況下だからこそ、小回りの利く中小企業にしかできない機動的な製品開発力が生かされるのではないか。景気再浮揚への道筋を着実に模索する、埼玉県西部地域企業の技術を紹介する。
排煙を無臭・無害に−E＆Mエンジニアリング
E＆Mエンジニアリングは、部品の粉末焼結工程で用いられた決着材料（バインダー）除去に用いる脱脂炉の専業メーカー。排煙に対する優れた脱臭機構に大きな特徴がある。同脱臭機構のみを独立させ客先既設炉にも対応できる「排気燃焼炉＝写真」装置としての販売も行う。最近は特に「工場に対する居住区の接近などに苦慮する金属やセラミックス部品メーカーからの取り付け依頼が増えている」という。
排気燃焼炉は、排気口が合えば、どのメーカーの脱脂炉にも接続が可能。1台で脱脂炉2台分迄の排気を処理できる。天井の高い工場では工場内にそのまま排気できるため装置からのダクト設備が不要。大幅なコストダウンにつながる。
脱脂炉内からの煙を、長さ5メートル長のラビリンス状燃焼管に通し焼却する仕組み。徹底焼却によりほとんどの悪臭および有害物を除去できる。排煙温度を調節可能な「排気温度調節器」を装備。800度C程度の排気を最大で40度Cまで下げられる。
発明大賞4度受賞−共同技研化学
共同技研化学は、粘接着フィルム（テープ）の開発・製造・販売を手がける。材料設計から合成、成膜、ドライラミネート、表面改質処理、多孔処理まで一貫して対応。生み出す機能は、粘着性、接着性、光透過性、電磁波シールド、熱伝導性、電気伝導性、電気絶縁性、制振性、熱可塑性、熱硬化性など多様で、これらを複合し多機能化している
基礎となるのは、粘接着フィルム（テープ）に高分子材料を加工する技術で、日本発明大賞考案功労賞を3年連続（2006年分子勾配膜両面粘着テープ、2007年分子勾配膜接着フィルム、2008年メークリーンゲル）で受賞した。
分子勾配膜は、粘着層の中の厚み方向に分子量の勾配を付けることができ、表面層と中間層に異なった物性の構造を形成できる。表面層は低分子量で接着力が高く、中間層は高分子量で腰のある基材レスの両面テープに応用できるのが特徴だ。
メークリンゲルは、アクリルのゲルをシート化する技術で、極めて透明なフィルムができる。光学用やさまざまな用途に応用できる。今、市場を席巻しているスマホ向けFPDなどの中間膜に用いることで、光の屈折率を改善し、画面の視認性向上に役立つ。2012年には、同中間膜の効率的な貼り合わせ方法と装置技術で、4度目の発明大賞（奨励賞）を受賞している。
地震感知ストッパーが注目−ケージーエス
ケージーエスは、視覚障害者用機器およびソレノイド製品が主力。中でも、点字ピンを上下するためのソレノイド駆動セル（点字セル）において、世界で7割程度のシェアを握る。小川町の本社工場、フィリピン工場、上海工場の3拠点で、研究開発・適地生産を行う。2012年には、ソレノイドを用いた地震向け転倒防止機器「地震感知ストッパー＝写真」を市場投入した。
「地震感知ストッパー」は大型地震の揺れをセンサーで感知し、キャスター付き事務機器など重量物の転倒を防ぐことができる。樹脂製の平面床で用いる。キャスター台の下部に取り付けたストッパーから、15センチメートル角の粘着ゴム付きプレートがソレノイド駆動で落ち、床に粘着ゴムで張り付く仕組み。病院の手術用キャスター向けなどとして引き合いが相次いでいる。
合わせて、OA機器などの底面に粘着ゴムで貼り付けるタイプの「固定式耐震ストッパー」を発売した。粘着ゴムがついた105ミリメートル四方のステンレスプレート2枚が1セットで、双方をステンレスワイヤで接合。それぞれを耐震を必要とする機器の底面と床に貼り付け固定することで地震時の転倒を防ぐ仕組み。
両機種とも、UR都市機構技術研究所で東日本大震災「仙台波」震度6強の振動実験を行い、耐震性を確認済み。一度接着した粘着ゴムはねじるだけで簡単に取り外しでき、水洗いにより何度でも再接着できる。接着持続力は5年間が目安。
フルカーボン製ボディ−チャレンヂ
チャレンヂは、ボディーがフル・カーボン（CFRP）製のコンセプトカー（写真）を完成した。3800CCのエンジンを積んだ総車重が1030キログラムで、金属製車体に比べ、およそ3分の2の軽量化を実現した。30、31日にかけてさいたま市スーパーアリーナで開催される産業見本市「彩の国ビジネスアリーナ」で、公衆へのデビューを果たす。
エンジン駆動伝達系、車輪ホイールやブレーキ、シートフレーム、アルミヒンジなどの金属部品、皮シート、電装系統などを除き、全てを自作。車体シャシーやフレーム類に加え、操作スイッチなどもCFRP製。これら各種部品の設計から、ボディーデザインも自前という完全なオリジナル車。「外注したら1億円は下らない」という手の込んだ作りだ。今後、ナンバーを取って公道も走る計画。サーキットだったら300キロは出せる高速仕様車でもある。
レーシングカー製作などを目的にしたチャレンヂの創業が約42年前。CFRP素材に関わってからおよそ30年がたつ。構想から完成まで、足かけ8年をかけ作り上げた同コンセプトカーは、同社の社歴の集大成ともいえる。
瞬間発熱剤が好調−協同
協同の瞬間発熱剤「モーリアンヒートパック」の販売が好調だ。発売当初は、自衛隊や官公庁向けの販売が主体だったが、このところ国内の量販店における防災グッズとしてや、各国の軍隊向けに取引が急増。ホテルや旅館、結婚式場などで蒸し料理用にも使われるなど、その活躍の領域を着実に広げている。
モーリアンヒートパックは一般に、起立式で蒸気を逃がせる専用の加熱パックと、セットで用いる。水酸化カルシウムとアルミニウム粉末を利用した固形剤で、水をかけることによる化学反応で瞬時に発熱する仕組み。20分程度98度ぐらいの発熱が続くため、火種を用いない蒸気を利用した食材加熱用として重宝されている。コンパクトで長期間保存が利く上、一般ゴミとして処理が可能。日本、米国、欧州、韓国など、世界の先進市場で特許を取得済みだ。
顧客と協業での、新規用途開発にも積極的。現在、モーリアンヒートパックの化学反応過程で生ずる水素を利用した健康お風呂グッズなどの市場投入を計画中だ。
新たに、本社事務所の1階に製品ショールーム（写真）を開設。モーリアンヒートパックのさまざまな使用例を展示しながら、製品の小売り即売も行っていく。
高級工具棚引き合いが急増−大槇精機
大槇精機は、同時5軸マシニングセンター6台を中心に、金属無垢（むく）材を用いた高精細の加工技術に強みを持つ。社員38人、平均年齢33歳の若い会社ながら、ほぼ全員が1級技能士の資格を保有。現場管理者が毎朝、それぞれスタッフの進捗（しんちょく）状況をマンツーマンで把握に努めるなど、機動的な体制維持に努める。
技術力をアピールするためユーチューブにアップした加工映像への閲覧件数は450万件を越えた。映像の中でも、アルミ無垢材からオフロードバイクヘルメット形状品を削り出す様は圧巻。大町社長が、かつて海外の展示会を散策していたところ、身に付けた社章を見た外人から「あの大槇か？」と、問いかけられたというエピソードもあるほど反響を呼んだ。
特に難しい案件をほぼ優先して受注する。例えば1マイクロメートルの精度が求められる薄肉、複雑形状を極めるチタン製ジェットエンジン部品がその一例。このほか、自社ブランドとして発売した高級工具棚「DDSシリーズ＝写真」は2年で200台以上を販売。同受注は拡大傾向にあり、今後1年で新たに200台の販売を見込む。
事業拡大に伴い、独ギルデマイスターの旋盤機能付き同時5軸マシニングセンター1台の新規導入を決定。また、主にインターナショナルセールスとして、TOEIC900点以上のスコアを持つ人材を新たに一人採用した。
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