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地域応援隊

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新成長時代に挑む エクセレントテクノロジー
埼玉県西部地域

6月26日(木曜日)付 日刊工業新聞 28面〜29面

 埼玉西部地域は、優れた加工・製品開発力を持つ中小企業の集積地だ。都心へのアクセスに優れ、ハイテク工業圏と言われる多摩地域とも境を接する。さらに、6月28日には首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の高尾山IC-相模原愛川IC間が開通。神奈川県央へのアクセスが容易になると同時に、関越、中央、東名の3高速道路が結ばれ、地元企業にとって活躍のフィールドが広がる。埼玉西部地域で活躍する企業の最新動向を追った。(順不同)

 

【シンガポールにダイカスト油性離型剤の量産工場新設】

青木科学研究所

ダイカスト製品向け油性離型剤

 青木科学研究所は、許認可の関係などから着工が遅れていたシンガポール工場の建設に着手した。ダイカスト製品向け油性離型剤(写真)の生産で、日本以外の海外市場を対象にしたマザー工場とする。10月の完成を目指しており、総投資額は約5億円。

 シンガポール工場の敷地はおよそ3000平方メートル、工場延べ床面積は1800平方メートル。月間で最大400トンの油性離型剤を生産可能な設備を導入。原料倉庫や製品倉庫、研究所も工場内に設置する。従業員は、埼玉県美里町の工場から、月ごとに一週間程度社員を出張させることで、製品1月分を作り置きする仕組み。顧客先への製品出荷は、現地企業への委託で行う。

 同社が開発したダイカスト向けの油性離型剤は静電塗布式で、水溶性の従来品と比べ、使用量が1000分の1程度で済む。「水溶性離型剤を用いた場合のように金型を冷却する必要がないため、金型寿命も8倍程度に延びる」という。国内外の自動車メーカーや大手ダイカストメーカーなどの工場に相次いで採用され、需要が急拡大している。

 

【液晶向け視認度改善中間膜をスマホメーカーに供給】

■共同技研化学

タッチパネル用中間膜「メークリンゲル」

 共同技研化学は4月より、タッチパネル用中間膜「メークリンゲル(写真はパネル用打ち抜き品)」の量産を開始した。当面は、幅1500ミリメートルのシートで月間1万1000メートル程度の出荷となる見込み。

 国内大手メーカーの2015年モデルのカーナビや、タブレットコンピューター用タッチパネルに組み込まれる。特に、タブレットコンピューター向けには、今後、需要の急拡大が見込まれており、「主力の富岡工場隣接地に購入した空き地スペースにおける増設投資のタイミングを検討中」だ。

 メークリンゲルは、透明のゲル状粘着膜で共同技研化学の独自製品。パネル中間層に空気が残ることなどから起こる光損失を改善することで、「画面の視認度を、従来比160%まで改善できるため、直射日光下でも画面が見やすくなる」という。現有設備によるメークリンゲルの生産能力は月間同20万メートル程度とまだ余裕がある。

 

【引違い戸向け自動施錠式暗号錠を発売】

長沢製作所

引違い戸向け自動施錠式機械式暗号錠「キーレックス800シリーズ」

 長沢製作所が、4月に発売した引違い戸向け自動施錠式機械式暗号錠「キーレックス800シリーズ」の売れ行きが好調だ。自動施錠の仕組みが一目瞭然(りょうぜん)で分かるカットモデル(写真)を100台限定配布で用意したが、「受注があっという間に700台を超えてしまい、追加で用意したカットモデル配布も300台で打ち切りにせざるを得なかった」という。

 「駅や工場などの引違い戸での鍵かけ忘れを防ぎたい」という顧客の声に応える形で開発に着手。一年ほど前にプロトタイプを完成していたが、引き違い戸同士の隙間調整に課題が残っていた。今回、こうした対策として、1ミリ、2ミリ、3ミリメートル厚と3種類の樹脂製隙間埋め板を採用。これらを適宜組み合わせて用いることで、課題を解決した。「引違い戸向け自動施錠は業界初」としており、今秋には同引き戸向けを発売する計画だ。


【高速・高トルク性に優れるステッピングモーターシステム】

バンガードシステムズ

クローズドループ式ステッピングモーターシステム「ST-ServoBSL V2」

 バンガードシステムズは、従来品比で高回転性に優れるクローズドループ式ステッピングモーターシステム「ST-ServoBSL V2」を発売した。最大で回転数を1.8倍、トルクを2.5倍向上できる。サーボモーターと同等の低振動と静音を実現。モーター負荷に応じて励起電流を制御することでモーターの発熱を極力抑えた。モーターは2相式で、フランジ25ミリ角、28ミリ角、42ミリ角、56ミリ角の4機種をラインアップ。

 ステッピングモーターは高回転域で回転が頭打ちになったり、トルクが急に落ち込む傾向がある。新開発品では、制御において高速アルゴリズムなどを採用し、こうした課題を大幅に改善した。これにより、100ワット以下クラスのACサーボシステムとの代替を可能にした。

 ST-Servoシリーズは、ステッピングモーターに分解能1万6000分の360度の光学式エンコーダを採用することなどでサーボモーター並の位置決め精度を実現。位置制御、速度制御、トルク制御、押し当て制御を瞬時に切り替えて駆動できるため、「加圧制御、把持力制御、ネジ締め制御など微妙なモーションコントロールに向く」としている。

 

【大型・重量物のアルマイト処理に強み】

曙金属工業

般若心経を厚さ0.5ミリメートルの名刺大アルミ板にエッチング処理で鮮明に刻んだアートグッズ

 曙金属工業はアルマイト処理が主力で、創業から40有余年を数える。「創業以来、返品を受けた記憶がほとんどない」という加工品質が強み。2000年初期には、自動化設備などに約2億円を投下。かなりの大型・重量部品(2100ミリ×1000ミリ×4000ミリメートルまで)なども処理できるようになった。取引は近隣にとどまらず「九州などの遠方からも12トントレーラーが乗り付ける」など、その腕に対する信頼は厚い。

 営業品目は、一般アルマイト処理、一般カラーアルマイト、超硬質カラーアルマイト、2次電解カラー着色、平面・曲面アルマイト印刷、特殊ネーム板、各種アルミ部品溶接など。このほか、アルマイトに特殊な処理を施すことで大理石調のデザイン模様を施した化粧板や、般若心経を厚さ0.5ミリメートルの名刺大アルミ板にエッチング処理で鮮明に刻んだアートグッズ(写真)などアイデア商品を随時発表している。

 

【選針圧電アクチュエーターでトップシェア】

ワックデータサービス

ニット編み機の選針圧電アクチュエーター

 ワックデータサービスは、ニット編み機の選針圧電アクチュエーターの製造販売が主力。製造品のおよそ95%が輸出向けだが、同分野では世界でもトップシェアを握る。主要顧客の編み機メーカーは欧州にあるが、ニット編みを行う最終ユーザーは中国などアジア圏が中心。このため、上海で行われる関連の展示会「ITMA+CITME」に出展するなど、海外での販売展開に注力する。

 ここ一年は品質のさらなる向上のため、内製化率アップに注力する。青森県と愛媛県の2社を、新たな外注先として選定。自社本社工場と外注先の全3工場体制のもと、自社に4台、外注先に2台あるワイヤ放電加工機を主体に内製化率の向上を進める。新たな組織編成として、社長直轄の研究開発部門の下に、製造技術と生産技術の2セクションを設立し、歩留まり向上や製造工程の改革に取り組んでいる。

 3年後は設立70周年。ここを節目に、従来とは市場分野の異なる製品投入を目指している。

 

【油圧ソレノイド増産で新工場稼働】

新電元メカトロニクス

新設の茜台工場

 新電元メカトロニクスは、新設の茜台工場を全面稼働した。建機や産業機械向けなどに油圧ソレノイドの量産を本格化する。7月からは、ソレノイドを組み込んだ油圧バルブユニットの生産にも着手する。

 新設の茜台工場は、組立棟と加工棟の全2棟で構成され延べ床面積は約3300平方メートル。2階建てとなる組立棟1階の工場フロアに設置する組み立てラインの大半は既存工場から移設。7月より始める油圧バルブユニットの生産では、当面は複数機種混載の1ライン体制で行う計画。同2階工場フロアは当面空きスペースとして、「今後の生産拡大に応じて追加投資を進める」考えだ。別棟の加工棟へは既存工場から加工機を移設した。今後は、部品など内製化を進めるため、新たにコイル巻き線機、溶接機、数値制御(NC)旋盤などの新規導入を図る。従業員規模は40人で、年内に50人体制となる見込み。

 

【CFRP部品プレス成形で生産体制を拡大】

チャレンヂ

熱間プレス成形法「PCM工法」

 チャレンヂは三菱レイヨンと共同開発した炭素繊維複合材(CFRP)の熱間プレス成形法「PCM工法=写真」の生産体制を拡充する。数カ月以内をめどに近隣に新設される工場棟を期間限定で賃借。ここに、現本社工場から2台のオートクレーブを移設するほか新たに同一台を購入し、PCM工法以外のCFRP部品製造を移管する。本社工場ではPCM工法により一部の自動車部品量産を手がけるほか、PCM工法向け新材料の開発などの研究業務に特化していく。

 さらに同社では、2017年までに1万6000平方メートル敷地規模の工場新設を計画中。同新工場では1000トン超級油圧プレス複数台を新規導入するなどし、自動車ほか航空宇宙、産業機器用部品などについてPCM工法により量産を図る。

 PCM工法は、仮成形した熱硬化のCFRPを金型内で熱しながらプレス成形する工法。 5分程度で成形できるため、従来の同6時間程度かかるオートクレーブ式に比べ圧倒的に成形時間を短縮。完成品の強度などもオートクレーブ式と同等。

 ここ数年、国内外複数の自動車メーカーが同工法を取り入れている。

 

【埼玉県西部最大級のメッキ処理設備保有】

高松電鍍工業

装飾用クロムめっき

高松電鍍工業は、創業からおよそ65年の間、表面処理一筋に歩んで来た。主に電気や精密機器、文具向けなどのメッキ処理を手がけており、試作品、量産品のどちらにも柔軟に対応できる生産体制を有する。

 「人にも環境にも優しい企業」をスローガンに掲げ、平成6年には埼玉県から「彩の国工場」の指定を受けた。

 埼玉西部地区では最大級のメッキ処理工場でもある。

 このところは、20-30台の若手人材育成に注力。3年連続で年間ひとりずつ、都内のメッキ専門職業訓練校を卒業させた。「メッキ装置の不具合まで直せるような60代のベテラン社員が今後数年で定年を迎える。その下の中堅どころが手薄なため若手育成が急務」だ。

 2013年末には「埼玉県めっき技術競技会」に初参加で3部門にエントリーし、2部門受賞の好成績を納めた。

 特に、同社が主力とする装飾用クロムめっきの部門では知事賞という最高の栄誉を獲得している。

 

【ステンレス並みの高耐食アルマイト処理好調】

エムエフケイ

本社工場

 エムエフケイは、蓚酸アルマイト、硬質アルマイトを始め、アノダイズ、電解研磨、化学研磨、精密洗浄などの表面処理およびオリジナルコートを手がける。中でも独自の「MFコート」は10-15マイクロメートルの厚さでステンレス並の高耐食性を実現する優れたアルマイト被膜だ。半導体製造装置や油圧・空圧シリンダー向けなど、高耐食性や耐摩耗性が要求される分野に数多く用いられている。

 表面処理などの問い合わせに対して即応体制を心がける。そのため、 メッキ、塗装、フッ素樹脂コートに至るまであらゆる表面処理を、任意の仲間内企業でこなせる体制を取っている。従業員に対しても、「厚いものだと0.05ミリメートル以上あるアルマイト被膜により変わってくる完成品の設計公差などの判断がすぐできるように指導」する。

 08年に新設した現在の本社工場(写真)は、上水道の使用量を極力抑えるなど最先端の工夫を凝らした環境配慮型工場。ここを本拠に、新分野の研究に注力しており、アルマイト表面処理で表面に生ずるナノメートル径のハニカム構造の有効利用や、800HV硬度のMFコート開発などに挑む。

 

【社員旅行で絆深める】

三芳合金工業

社員旅行

 三芳合金工業とその関連会社の大和合金では、毎年、社員旅行を実施している。今年の3月には145人規模で北海道の知床半島を訪問。「遊覧船で流氷の中、国後島の島影なども見学」した。毎年、その年の話題や大きな出来事に関連した訪問先を設定しており、昨年は福島県陸前高田市付近をがれき拾いなどで訪問している。

 同旅行経費は会社持ち。また、社員だけでなくその家族や、独身者の場合は恋人同伴もOKだ。「こうした機会に、家族や社内での絆を深められたら」との思いがある。

 主力の銅合金製品では、フランスの航空機部品大手メシア・ブガッティ社から銅合金製品に関する品質認可を受けた。それに伴い、欧州向けに航空機の足回り用軸受部品を初受注した。

 

【脱脂炉からの排煙を無臭・無害に】

E&Mエンジニアリング

排気燃焼炉

 E&Mエンジニアリングは、部品の粉末焼結工程で用いられた決着材料(バインダー)除去に用いる脱脂炉の専業メーカー。排煙に対する優れた脱臭機構に大きな特徴がある。同脱臭機構のみを独立させ客先既設炉にも対応できる「排気燃焼炉=写真」装置としての販売も行う。

 最近は特に「工場に対する居住区の接近などに苦慮する金属やセラミックス部品メーカーからの取り付け依頼が増えている」という。

 排気燃焼炉は、排気口が合えば、どのメーカーの脱脂炉にも接続が可能。1台で脱脂炉2台分迄の排気を処理できる。天井の高い工場では工場内にそのまま排気できるため装置からのダクト設備が不要。大幅なコストダウンにつながる。

 脱脂炉内からの煙を、長さ5メートル長のラビリンス状燃焼管に通し焼却する仕組み。徹底焼却によりほとんどの悪臭および有害物を除去できる。排煙温度を調節可能な「排気温度調節器」を装備。800度C程度の排気を最大で40度Cまで下げられる。

 

【コジェネレーション設備でリース方式導入】

武州ガス

ガスコジェネレーション設備

 武州ガスは4月、環境エネルギー部内に新たにエネルギーサービスグループを新設。ガスコジェネレーション設備(写真)やガス空調機器のリース事業に乗り出した。東日本大震災発生後に、工場や病院事業主などから「停電時にも、設備を止めずに済む備えが欲しい」という問い合わせが増加したことなどに対応する一連の動き。事業開始から当面は、主に市場ニーズの把握に努める考えだ。

 これまで、ガスコジェネレーション設備の販売は営業部門で行っており、既に工場や店舗向けなどに累計で29台(5月末)の納入実績を持つが、「初期コストが大きく、導入できる企業が限られていた」という。リース方式により、導入初期コストを下げることで、ガスコジェネレーションなどのさらなる普及を目指す考え。

 同社はこのほど、ガス供給に関する顧客件数が20万件を突破した。埼玉県西部地区に拠点を置く随一の都市ガス供給会社として、さらなる顧客満足度向上を目指す。

<出稿企業一覧>

企業名    新聞広告
共同技研化学 液晶視認度改善中間膜の販売が好調
高松電鍍工業 埼玉西部最大級のメッキ処理設備
チャレンヂ CFRP部品をプレスで高速成形
バンガードシステムズ 高速性に優れたステッピングモーターシステム
ワックデータサービス 編み機向け選針アクチュエーターで世界一
エムエフケイ ステンレス並高耐食アルマイト処理
E&Mエンジニアリング 排気ダクト不要の脱脂炉
長沢製作所 引違い戸向け自動施錠式錠を発売
三芳合金工業 特殊銅合金のスペシャリスト
曙金属工業 大型・重量物のアルマイト処理に強み
武州ガス ガスコージェネレーターのリース事業開始
新電元メカトロニクス 油圧ソレノイド増産で新工場稼働
青木科学研究所 ダイカスト金型向け油性離型剤

 

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