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キラリと光るエクセレント・テクノロジーズ
 埼玉県西部地域-経済を支えるモノづくり

6月25日(木曜日)付 日刊工業新聞 8面〜9面

 現在の日本は、世界的に見ても近代化・工業化の先端を走ってきた成果とともに、成熟経済に突入している。一般に成熟社会においては、工業製品の生産能力の増強に伴い発展するサービス業の比率が増す傾向があるが、資源に乏しい日本がモノづくりを脱却して国体が成り立つことは考えにくい。そして、大企業が世界戦略の中で適地生産を進める中、国内の技術開発力は、今後さらに中小企業依存を深めていくだろう。埼玉西部の経済を支える代表的なモノづくり企業を紹介する。(順不同)

エムエフケイ/薄膜アルマイトでステンレスしのぐ高耐食性

エムエフケイ

 エムエフケイは、空圧機器や半導体装置部品などアルミニウム製品向けにアルマイト処理を手がける。独自の薄膜・高耐食アルマイト処理「MFコート」は、膜圧10〜15マイクロメートル程度で、ステンレスをしのぐ高耐食性を得ることができる。同処理には、「10数年来顧客のクレームゼロ」と、高い信頼が寄せられている。

 MFコートには、硫酸を使ったMFコートSと、蓚酸(しゅうさん)を使った同Cの2種類の被膜があり、Sはシルバーメタリック塗装調のきれいな発色とツルツルな滑らかな被覆面を実現しており、シリンダー部品などの処理に向く。一方のCは薬品やプラズマ、ハロゲンガスなどに対する耐食性が強く、半導体装置部品などに向く。ともに、被膜組成が緻密な上、ひび割れも出にくいのが特徴。薄くても十分な機能を発揮するため、被覆処理後の装置組み立てにおける公差が読みやすい。

シバサキ製作所/環境対応エンジン部品などで活況

シバサキ製作所

 シバサキ製作所は、自動車部品の切削加工を手がけて60年。バキュームブースター、インジェクター向けなどの部品を大手自動車部品メーカー向けに納める。

 海外メーカー車にも多く採用されているのが特徴で、「出荷する部品の7割が海外で走る車向け」という。

環境意識の高まりから燃費向上の要請が強まり、そうした関連部品加工を数多く手がける同社への注文は増加傾向が続く。2年半ほど前に、寄居町内の旧工場から現新工場に全面移転したが、新工場での生産能力が手いっぱいになり、旧工場をこのほど再稼働した。

  海外展開は東京鋲兼と共同で推進。中国の珠海では、自動車の部品加工で協業。合弁で設立したタイ工場も、2014年6月に稼働。新たに5台の数値制御(NC)旋盤を追加導入し、全13台体制とする。「タイ国内需要のみならず、海外輸出需要を補完していく」計画だ。

タジリ/熱圧縮成形機で著名

ウエストポーター

 タジリは、環境再資源化プラントを幅広く手がける。中でも、熱圧縮成形機「ウエストポーター=写真」は、樹脂ゴミや紙ゴミなどを固形燃料(RPF)化する減容再資源化装置として、23年間で171台の出荷実績を持つ。北は北海道から南は沖縄まで顧客は全国に広がり、「ウエストポーターと言えばほぼタジリの代名詞」と言えるくらいの、社を代表するブランドだ。

 同機は、1時間あたり最大で3トンの処理が可能。特筆すべきは、RPFゴミを強く固める、その圧縮減容能力。周辺工程となる破砕機やコンベヤーベルト、供給機などを含めたプラント一式を全て自前で作れるのも大きな強み。破砕機では、多数の破砕刃を取り付けた回転刃(ローター)も、自社の門型五面加工機などを用いて内製化する。急な修理依頼にも、時には徹夜で対応する。

 「発売当初に納めた装置が、メンテナンスを繰り返しながらまだ現役で活躍しているという装置の頑丈さ」も、その人気の秘密だ。

久保井塗装工業所/放熱度を大幅に上げる塗装技術を開発

自動塗布システム

 久保井塗装工業所は、樹脂表面の放熱性を上げる立体塗装の量産技術を確立した。首都大学東京、都立産業技術研究センター(都産技)、明治機械製作所らと共同で開発。無塗装の樹脂材に比べて、最大で15度C程度の表面温度押し下げ効果が見込まれる。今後、自動車向け放熱部品などの用途を見込んで幅広くサンプル施工を受託していく。

 塗料に混ぜる放熱用骨材率を全体の7割程度まで増やすと同時に、高低差3ミリメートル程度の立体塗装を行うことで大幅な放熱作用を実現。自動車のヘッドランプ容器に見立てたサンプル品を用いて都産技で行った検証では、無塗装樹脂が飽和温度(74度C)まで上がったのに対し、同サンプルは約60度C程度の昇温に止まる成果を得た。

 同立体塗装では、量産を可能にするためロボットを用いた自動塗布システム(写真)を作成。骨材量が多いため、通常のスプレーガンでは塗料が詰まってしまうところを、エアーを用いた常時塗料循環式とすることで、連続塗装を実現した。

曙金属工業/電力設備向け大物黒色アルマイト処理が活況

自動塗布システム

 曙金属工業は、アルマイト表面処理を主体に、創業43年。「創業以来、返品を受けた記憶がほとんどない」という加工品質が強み。2000年初期には、自動化設備などに約2億円を投下。かなりの大型・重量部品(2100ミリ×1000ミリ×4000ミリメートルまで)なども処理できるようになった。

 営業品目は一般アルマイト処理、一般カラーアルマイト、超硬質カラーアルマイト、2次電解カラー着色、平面・曲面アルマイト印刷、特殊ネーム板、各種アルミ部品溶接など。
このところは、「260度C程度の高温に耐え、海から来る塩害にも強い」など、高耐候性が要求される分野の大物部品向け黒色アルマイト処理の受注が活況。「01年ころに受注処理をした部品の耐用年数が過ぎたための更新需要」として、1日2交代で対応するなど多忙な日々を送っている。

大和合金/銅合金製品の製販を一体化

新本社工場

 大和合金は6月、埼玉県三芳町に取得した新本社工場(写真)に移転し、本格稼働に入る。同社は銅合金製品の加工販売会社。親会社で銅合金製品の製造を原材料から担う三芳合金工業の直近場所に移転することで、製造から機械加工、検査・出荷までのプロセスに一貫性を持たせる狙い。

 新工場は、三芳合金工業のはす向かいに立地。2014年末に、空き工場用地を建物ごと取得していた。敷地は5590平方メートル、延べ床面積1700平方メートルの2階建て工場棟のほか、広さ610平方メートルの倉庫を備える。現在、急ピッチで補強や改修などの工事を進めており、早ければ6月中にも旧板橋本社工場から事務機能も含めて移転を完了する。旋盤などの加工設備を移管するほか、新たに複数台のNC旋盤を購入する計画。

 同社の扱う銅合金製品は、鉄道や船舶、発電機向けなどインフラ関連業種で需要が増えている。最近取引が始まった、海外の航空機部品向けでも需要が拡大している。

長沢製作所/マスターキー付き機械式暗号錠発売

500シリーズ面付本締錠鍵付

 長沢製作所は、自社製品の機械式暗号錠「キーレックス」シリーズに、コンパクトでマスターキー付きの「500シリーズ面付本締錠鍵付」を追加した。複数のテナントが入る賃貸住宅など向けに、オーナーが一本の鍵で管理できるのが特徴。居住者は、暗号を自分で設定することができる。2014年11月の発売以来、2000台超の販売実績がある。

 12ケタある暗号から複数の暗号を任意で組み合わせ設定し、暗号錠として利用できる。レンチなどでの破壊行為を防ぐため、レンチがかみ合わない丸みをおびた形状を採用。さらには、錠前部分は一定の空回り機構を利用した。

 長沢製作所は鍵製造を手がけて16年に100周年を迎える伝統企業。キーレックスは、長沢製作所オリジナルの機械式暗号錠。発売から30年を越えるロングランヒット商品だ。

東京シリコーン/フッ素樹脂表面処理で61年の実績

トシコ

 東京シリコーンは、フロロコート、トシコ、上海子会社などグループの事業会社を傘下に、幅広くフッ素樹脂表面処理を展開する。創業61年の伝統と実績を背景に、4000社超の顧客と取引する。独立系のフッ素樹脂表面処理事業会社としては国内最大手だ。

 グループ全体の研究・開発機能強化のため、5月にR&D室を新設。前社長の諏訪部喜義氏が新たに同室長に就任。グループ企業内に眠るビジネスシーズの掘り起こしに加え、フッ素樹脂以外の表面処理を幅広く追求していく構えだ。

 「顧客の近くに工場を構え、きめ細かく対応を図る」ため、上海を含め全7事業所(工場)を展開。グループの中核事業会社であるフロロコートは、自動車、食品、建築、電気、航空・宇宙用各種部品向けなど製造業全般に顧客層が及ぶ。新たな成果としては、国産の燃料電池車にも同社の技術が採用された。

 トシコは、フッ素樹脂被覆の表面に凹凸を加えた非粘着表面処理を展開。接着剤などの粘着物を扱う製造ライン向けの被覆処理として、引き合いが堅調だ。

東立製作所/樹脂機械加工の公差管理に強み

東立製作所

 東立製作所は、樹脂の機械加工を手がけて55年。医療や食品、半導体装置向けなどに各種樹脂部品を製造する。手がける素材は、ポリプロピレンやポリエチレンをはじめ、フッ素樹脂やエポキシガラス、PEEK材などのスーパーエンプラまで幅広い。温度で寸法が変わりやすい樹脂材の公差管理にたけているのが大きな強みだ。

 加工設備は、汎用旋盤4台、数値制御(NC)旋盤3台、マシニングセンター(MC)13台を保有。これらに加え、このほど新たにオークマ製のNC・MC複合5軸加工機マルタスと東京精密の3次元測定機それぞれ一台を、5840万円を投じて導入。マルタスでは、今後、新たな高機能三次元CADの導入により、より複雑な5軸加工データの作成を可能にする計画だ。

 目下、技術者の多能工化を推進しており、MC、NC旋盤、組み立て加工技術者のそれぞれ大半が、全ての工程をマスターできるよう、教育を進めている。

日新化工/自動車向け樹脂部品製造でメキシコに工場進出

精密樹脂成型品

 日新化工は、自動車や家電、釣り具向けなどに精密樹脂成型品の製造を幅広く手がける。金型の自作から、樹脂成形、塗装や印刷まで一貫して内製化しているのが強み。国内2工場およびタイ2工場の全4工場で、カーエアコンやオーディオ、ワイパーのコンビスイッチやスイッチ各種などの部品を量産する。1年以内をめどに、自動車向け樹脂部品の量産を主眼にメキシコにも工場開設を予定する。

 型締め力30トン~350トンの射出成形機を国内15台、タイで80台保有する。金型製造などに用いるためのマシニングセンターは国内2台、タイが4台、このほかワイヤカット放電加工機、形彫り放電加工機、CAD/CAMをそれぞれに配備。国内での売り上げ規模は約7億円、1995年から稼働したタイ工場は自動車向けが好調で、売上高は直近年度で約20億円に達するなど勢いがある。

 メキシコには、資本金2億4000万円相当で「ニッシンカコウメキシカーナ(名武央道社長)」を設立済み。投資額は約6億円で、2016年中の工場稼働を目指す。現地の日系自動車部品メーカー向けに、内装家電のコントロール部などの樹脂外装品用部品を量産する計画だ。

武州ガス/省エネ診断サービス開始

ガス空調設備

 武州ガス環境エネルギー部エネルギーサービスグループは5月から、「省エネ診断サービス」を開始した。ガス空調などを利用している既存顧客向け中心に、無償でエネルギーの使用状況を1日―1週間単位で計測し、省エネ診断および省エネ対策の提案を行う。ガス関連機器のみならず、電力や水道などについてもアドバイスを行う。顧客が国や地方自治体に対し補助金を申請する場合の事務処理なども支援する。

 これに先立ち、1年ほど前には、ガス空調設備(GHP=写真)導入をリース式で提供するサービスを開始した。「毎月の保守管理費用は数万円から。初期コストが安く済むことや保守管理コストも含んでいるメリットなどから、数多くの見積もり依頼を受けている」など、滑り出しは順調だ。

 このほか、同社では、公共性の高い施設などの屋根を借りて太陽光発電事業を自ら行う事業を2014年に開始し、3件を受注している。

豊島製作所/リチウム電池の固体電解質開発で成果

多角(六角)バレルスパッタリング装置

 豊島製作所マテリアルズシステム事業部は、リン酸リチウム粉末の表面を窒化する処理実験に成功した。富山大学の阿部孝之教授の研究グループにおける研究の成果として3月に発表された。全固体からなる次世代リチウム電池の固体電解質の開発につながることが期待される。

 現在のリチウム電池には、電解質として液体が使われているが、液漏れなどが重大な事故につながる懸念が残されている。このため、固体電解質の開発が待望されている現状が背景にある。

 同研究グループは、多角(六角)バレルスパッタリング装置(図)を用いて、粒径2マイクロメートル以下のリン酸リチウム粉末表面に、1マイクロメートル厚の窒化処理をすることにより、リン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)を形成した。今後は「電極との界面抵抗を下げて行くことで、液体に代わる固体電解質の開発を目指す」方針だ。
豊島製作所マテリアルズシステム事業部は設立22年で従業員規模は45人。研究用途向けなど、リチウムイオン電池材料の供給に強みを持つ。

モスト技研/強化段ボールの可能性を追求 

強化段ボール製滑り台

 モスト技研は強化段ボールを利用した梱包資材やパレット、発泡スチロール緩衝材を組み合わせた梱包ソリューションを展開する。約30件を越える特許・実用新案梱包技術を駆使し、顧客への梱包提案からCADを利用した設計・製作、実地試験まで一貫して行う。梱包対象は、電子顕微鏡や大型プロッターなどの精密機器から、発電機などの重量装置、ミサイル弾頭まで多岐にわたる。

 自社製品として手がけるのは、強化段ボールを利用した段ボール別途や本棚、げた箱、椅子などの家具事業のほか簡易トイレや間仕切りなどの防災・被災グッズ。特に、段ボールベッドは耐荷重が10トンあるなど本格的。要望に応じた自由形状の作成が容易な点や、容易に分解でき、リサイクルゴミとして処分できる環境親和性も大きな特徴。

 被災地向けに自社製品を寄付するなど、ボランティア活動にも力を入れる。地元の日高市とは、災害時に防災グッズを共同で備蓄する「防災協定」を締結。子供向けには夏休み体験事業などを自社で開催。

 自治体などが開くイベントでは、強化段ボール製滑り台(写真)や迷路などの製作を手がけるなど、地域社会への貢献に努めている。

 

<出稿企業一覧>

企業名    新聞広告
三芳合金工業 銅合金製品のパイオニア
武州ガス 埼玉西部の都市ガスはおまかせ
モスト技研 強化段ボール梱包の設計提案から試験まで
エムエフケイ アルマイトでステンレス並の高耐蝕
日新化工 自動車電装系樹脂部材でメキシコに工場進出
トシコ(東京シリコーンG) 非粘着のフッ素樹脂加工に特長
タジリ 環境リサイクル装置を幅広く展開
シバサキ製作所 省エネ用自動車部品加工で活況
曙金属工業 関東随一の大物アルマイト処理設備
久保井塗装工業所 放熱を大幅に向上する塗装技術開発
豊島製作所 リチウムイオン電池材料に強み
東立製作所 樹脂機械加工のパイオニア
長沢製作所 マスターキー付き機械式暗号錠発売

 

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