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業界展望台

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特定用途をひらく 精密・特殊ネジ

4月15日(水曜日)付 日刊工業新聞 10面〜11面

 ネジは社会のさまざまなところに使用される基礎部品。その中でも精密・特殊ネジ類は精密電子機器や橋など、特定の専門領域で精度や形状、素材品質などの厳しい要求に応え信頼を得ている。携わるメーカーでは、培ってきた技術力を背景に、成長分野とされる医療関連分野に取り組む動きがみられる。

ニーズ汲み、進化続ける

 パソコンやデジタルカメラ、スマートフォンなどは、身近な精密ネジの使用先だ。その情報端末機器などでは、利用者の多様なニーズもあり、材質ではマグネシウム合金も使用されている。小型化、軽量化に止まらず、高強度、高耐食性などといったネジに求められる主要なニーズに応えている。

 また、電子機器分野では防水性への要望も強まり、防水機能の付いたネジも提供されている。ネジを締めるとネジ首下のシリコーン性のOリングがたわんで密着し、防水性能を発揮する。

 製造工程の効率化につながる取り組みも進んでいる。高強度な微細精密ネジを熱処理工程を省いて量産化する技術だ。製造工程の効率化だけでなく、熱処理に伴う二酸化炭素の排出削減にもなっている。 

 今後の市場性を見据えて、技術力を備えたメーカーが注視するのが医療関連分野だ。2025年には団塊の世代が75歳以上に達する。一方で進む少子化は、経済活動の低下が懸念され、医療関連分野は介護を含めて先の見通せる成長分野となっている。

 このため「企業の持続的成長を考えると、医療関連の世界に関わっていくことが重要」(ネジメーカー社長)と、メーカーの中では歯科インプラントや、骨折時の固定用途で開発の動きがみられる。

 

主要各社の製品&技術

小林産業

 小林産業は全国に供給網を持つネジ・機械工具の専門商社。同社が販売管理を担う「NEWロックナット」はNEXCO西日本グループが開発した緩み止めナット。強力な緩み止め効果と優れた作業性を併せ持つ。高い安全性が要求される高速道路や橋りょう、トンネルなどの構造物で効果が実証されている。また別メーカーの防食保護キャップ「ジンクハット」は、高純度亜鉛の優れた保護機能を応用して開発。ボルト・ナットのサビ発生を防止し、長期間防食作用を発揮する。太陽光発電や原子力発電所、道路などに採用され、構造物の安全を支えている。

富士製作所

 富士製作所は大型切削ナットの有力メーカー。創業以来、多品種少量生産に対応し、あらゆるユーザーニーズに応えている。

 同社の緩み止めナット「フジダブルロック」は、上下ナットのテーパー構造によって、締め付けるとネジの軸芯に対し、水平応力が発生。上ナットの締め付け力に比例して応力が増加し、強力な緩み止め効果を発揮する。

 また、「フジロックナット」は全く新しいピッチ差による緩み止め効果があり、部品が一体となっているため、ネジ込み作業や部品管理も容易にできるという特徴がある。

ジェーピー

 ジェーピーは特殊リベット、ネジ精密部品の専用メーカーとして、長年にわたって高品質、高精度の部品をつくり続けている。部品コストの低減や品質向上、材料費の削減をモットーとしており、全国のユーザーから幅広い支持を得て、自動車や電機、産業機械などあらゆる産業で使用されている。

 また、同社製品に使用する材質も普通鋼、特殊鋼(硬鋼線材)、ステンレス、チタン、真ちゅう、アルミ、銅など幅広く、用途に応じてスピーディーに対応、製作・販売している。

西精工

 西精工は金型の設計から製造、加工まで一貫生産できるのが強み。ファインパーツの製造・販売を行い、主に小型・極小パーツ、ナット製造を手がける。

 短小製品のM1.4のナットの製造もでき、さらにその中にナイロンリングを取り付けて市場投入している。 

 同社は冷間鍛造技術をメーンに最大7段式のパーツフォーマーを導入している。切削で作られた部品を鍛造で加工したり、鍛造+切削加工で精度向上やコストダウンに取り組み、顧客の要望に応えている。

大洋ナット工業

 大洋ナット工業はナット・ボルト、特殊パーツの製造を行う。自動車部品をはじめ建築部品、パーツ部品、非鉄部品で展開している。このうち、製品全体の約80%を占めるのが自動車部品。車体締結用を中心に製造し、量産品から小ロット品にも応えている。

 また、建築用部品では免震構造の構造物に同社ナット技術が活躍。パーツや非鉄部品も自社技術と最新設備を通じて、ユーザーの細かな要求を形にしている。品質面ではマイクロメートル(マイクロは100万分の1)精度で検査できる試験室を設け、品質検査体制を整えている。

大阪フォーミング

 大阪フォーミングは創業当初から培ってきたステンレスの加工で技術を蓄積、ステンレス製品の製造・販売においてユーザーの支持を得ている。

 緩み止めナットでは「E−LOCK」をシリーズ化し、あらゆる分野のユーザーに対応できるよう、ラインアップを増強した。大手メーカーからの受注も増え、着実に実績を伸ばし、機能・技術とともに支持を獲得している。

 同社は近畿経済産業局が5年以内に独自開発した関西企業の製品や技術を対象に、新規性や市場性などを審査した「関西ものづくり新撰2015」にも選定された。

ノルトロックジャパン

 ノルトロックジャパンはスウェーデンのボルト締結の世界的企業、ノルトロックの日本法人。建設機械や鉄道車両、産業設備用に強固なボルト締結システムを提供する。

 「スーパーボルト」は、ハンドツールの手作業で簡単に締結可能な大径ボルト。ボディー回りに複数取り付けたジャックボルトで締結。手でスーパーボルトを挿入回転させ、ハンドツールで順に締める。従来のハンマーや油圧機器など大がかりな設備と長時間作業を不要にした。同社は4月6日に本社機能などを大阪府箕面市に移転。併せてユーザーの技術サポートを強化していく。

NBファスナー工業

 NBファスナー工業は銅、真ちゅう、チタン、鉄、アルミニウム、樹脂・セラミックスなど、さまざまな材質のネジや金属・非鉄金属加工品を扱う商社機能を備えたメーカー。自社工場と50社を超える協力工場の技術を結集させ、切削から熱処理、表面処理まで一貫した生産体制を構築。小ロット・試作・短納期など、多様なユーザーニーズに応えている。また、同社はインターネットサイト「クイックファクトリー」を開設しており、ユーザーからの見積書や資料請求などに迅速な対応を図っている。

メタルニクス

 メタルニクスは「早く、安く、機能的」をモットーに特殊ボルトを製造している。「エクセeボルトシリーズ」はボルト頭部がボルト中心軸に対して偏芯した製品。偏芯によるクサビ作用を用いて、対象物を横から押さえつけて固定することができる。直動機器のガイドレールを取り付ける際、位置決めに用いたり、各種プレート類のクランプなどにも使える。従来のボルト類とは違った使用ができるため、応用力が高い。

 同シリーズは「標準型」「高強度」の2種類を用意。それぞれサンプルの提供にも対応する。

大丸鋲螺製作所

 大丸鋲螺製作所はゴム製Oリングと、ネジ・ボルト・キャップボルト・座金をそれぞれ一体化することで漏れ防止に強力に役立つ「シールシリーズ」を製造・販売する。頭裏に溝をつくり、Oリングをはめ込んだ。締めるとリングが沈み込み、隙間を埋めて水や油・空気などが漏出するのを防ぐ。シールキャップボルトの場合、六角レンチで締め付けるため、狭い場所での作業も簡便。Oリング材質は標準がニトリルゴムで、シリコン・フッ素ゴム、その他にも対応可能だ。「とにかく漏れを防ぎたい!」という顧客の要望をこれ1本で解決する。

サンコーインダストリー

 サンコーインダストリーの「エイトロックワッシャー」(特許出願中)は、全国のユーザーから問い合わせの多い、ネジの緩みの問題を解決するために開発した。ワッシャーに角度をつけて、座面の傾斜により緩み止め効果を発揮する新しい概念のワッシャーとなっている。

 テーパー締め付けにより、ボルトとナットの間に高い摩擦力が生じ、緩み回転に対して抵抗を与えるため、振動と衝撃に高い緩み止め効果を発揮する(NAS3350規格試験クリア)。省スペース対応や低コストでの利用を実現した。

マツダ

 マツダの冷間圧造は、金型に材料を高圧で押し込んで成形する塑性加工技術。加工時間が短く材料ロスも少ないなど、量産に向いている。

 同社は2008年に複合加工機などの切削設備を導入。外注の場合1カ月以上かかる金型製造を3分の1に縮めるなど、即応体制を確立した。同設備を生かした試作も請け負っている。最近では自動車用部品の異形精密パーツ製造で、試作から製品化まで担当したのを足がかりに試作−量産までの一括受注も狙う。量産化に伴う課題対応や工程短縮・コスト低減への提案も積極的に行っている。

神山鉄工所

 神山鉄工所はドリルネジを中心にタッピンネジやタップタイトネジを設計、製造している。ドリル刃先を独自に設計し、成形金型の内製化により、最適にカスタマイズされたネジを提供できるのが同社の特徴。薄鉄板から構造用鋼板、コンクリートやセラミック系板材など幅広い部材の締結部分に採用されている。並行してユーザーにも開発型の提案を続けている。

 本社立体倉庫と製造工場、営業事務所を結ぶ生産管理システムにより多品種少量商品の在庫を最適化し、OEM(相手先ブランド)生産によっても顧客の要望に応えている。

ゴトウネジ

 ゴトウネジはネジの製造で培った固有技術と管理技術を生かし、金属部品の先進メーカーとして現在、高付加価値製品の開発、生産合理化に力を注いでいる。

 過去には、さまざまな金属部品の“つくり方”や“使い方”で、価値分析(VA)による提案が盛んだった。その中には、部品自体のコストダウンがアセンブリー製品の原価低減に寄与していないものが少なくない。同社は固定概念に捉われず、真に価値あるVAを提案。今後もこの考えにこだわり続けていく。

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