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業界展望台

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発展目覚ましい 小径・深穴あけ加工技術

5月18日(月曜日)付 日刊工業新聞 14面〜15面

 さまざまな工業製品の小型・軽量、高機能化に伴い、穴あけ加工にもこれまで以上の微細化が求められている。加工する材料も多様化し、精度よく効率的に穴をあけるにはドリルを含めた加工技術の高度化が欠かせない。近年は、これまで困難とされてきた微細穴や深穴への高速加工技術が発達し、多くの現場で生産の効率化に貢献している。また、切削油剤の使用量を低減するドライ加工やセミドライ加工など、省エネルギーや環境負荷低減に対する技術開発も進んでいる。

深穴加工用ドリル、性能、形状進化続く

 超硬工具協会の発表によると2015年1月の超硬工具の出荷額は、約288億円で前年同月比13%増。中でも切削工具の出荷額については、約217億円で前年同月から見るとほぼ横ばいだった。全体的な需要は回復傾向にあるものの、国内消費については今後の拡大は見込めない。工具メーカーが事業を成長させるには海外での受注拡大に加え、国内においてはレベルの高い顧客ニーズに応えるため、技術を差別化することが不可欠である。

 一般的に深穴加工とは、加工穴の深さが直径の10倍を超える穴あけをいう。最近は切削工具の進化が目覚ましく、剛性と切りくず排出性という相反する性能を両立したドリルが数多く登場。主流となるのはハイスとよばれる高速度工具鋼製のドリルである。加工機や測定機、治具などの発達も加わって、ハイスロングドリルによる深穴加工ではドリル径の20倍、30倍と長い穴をステップ送りなしで加工できるようになっている。

 従来、ハイスロングドリルによる深穴加工では切りくずの詰まりや巻きつきによるドリル折損や、刃先の振動によるチッピングや異常摩耗などの問題があった。そのため切削速度と送り量を下げたり、ステップ加工を行うなどの必要があり加工時間が長くなっていた。

 工具メーカーでは刃先や溝の形状を最適化して切りくずの分断性や排出性を向上することや、独自開発のコーティングを施して耐熱性や耐摩耗性を高める技術開発に力を入れている。

難加工材向け提案続々−ドリルメーカー、環境負荷低減にも力

 ドリルの性能が向上する一方で、加工する材料にも多様化が進む。チタンや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、モリブデンなどいわゆる難加工材は自動車や航空機、医療機器分野などにおいて部材の軽量化や高機能化を図る狙いで利用が拡大。しかしチタンは熱伝導率が小さいため工具の刃先に加工熱が蓄積され、他の被削材に比べて工具が破損しやすくなる傾向がある。

 また、CFRPへの穴あけは炭素繊維の積層間はく離(デラミネーション)やバリが発生しやすく厄介である。これらの難加工材に精度良く穴をあけるには、ドリルの性能をいかに長く維持できるかが重要となる。ドリル各社はダイヤモンドコーティングを施したドリルや、先端にPCD(焼結ダイヤモンド)を採用した製品を次々と提案。切削抵抗を低減したり、耐摩耗性を高めることで工具の長寿命化を図り、加工精度を維持している。

 環境面での各メーカーの取り組みを見ると、微少切削液供給(MQL)加工との組み合わせも重要な課題となる。MQL法についてはセミドライ加工が代表的だが、ここではオイルホール付きの超硬ドリルが使用されることが多いようだ。ドリル先端のオイルホールから、ミスト状にしたごく少量の切削油剤を加工点へ直接吹き付ける。切削油剤を循環させる動力や設備が不要で、廃油も出ないため環境に優しい。

 また、油剤を噴霧することで切りくずが細かく分断され、加工効率が向上。材料や工具の焼き付きを防ぎ、ドリルの長寿命化にもつながる。外部からの給油に比べると、切削速度を上げてもドリルの耐久性は長く維持できるという。自動車のクランクシャフト加工など活躍の場を広げている。このように、オイルの使用量を削減する技術開発は環境負荷低減の観点から、さらなる発展が期待されている。

 情報家電や医療機器、自動車部品など、さまざまな工業製品の軽薄短小化は今後ますます加速するだろう。このような流の中にあって、ドリルメーカー各社は0.1ミリメートル以下の超硬ドリルのラインアップの充実を図る。これまでは加工穴の径と深さの比率は10倍程度が限界であったが、最近では0.5ミリメートル以下の穴でも100倍程度まで加工できるドリルが数多く登場。小径・深穴あけ加工の可能性を広げている。

 

主要各社の製品・技術

■スギノマシン

 スギノマシンは加工設備の省スペース化というユーザーニーズに応えて、超コンパクトなドリリングユニット・セルフィーダ「バリメック」SSV2形を開発した。全長350ミリ×全幅100ミリ×全高210ミリメートルと、従来機種比較で設置面積約50%を実現した。これにより小物部品の大きさに合った専用機の省スペース化ができ、設置面積で1平方メートルサイズの専用機の製作も可能になった。

 最大で毎分2万回のハイパワー高性能DCブラシレスモーターを搭載。小径高速加工から、鋼で直径6.5ミリ、アルミで直径8.5ミリメートルまでの穴あけができる。送り軸にリニアガイドを採用し、高精度・高剛性を実現した。コンピューター数値制御(CNC)で主軸回転速度や送り速度を任意に設定でき、最適な条件で加工する。

■OSG

 OSGの極小径UVMシリーズの超小径超硬ドリルは、研磨技術の進化により高品質、高精度を実現した。高精度シャンクを採用し、真円度は0.2マイクロメートル以下、Ra(面粗度)は0.04マイクロメートル以下となる。超薄膜仕様のスムースコート、UVM専用ダイヤモンドコート、新DLCコート(特殊品)の3種類を取りそろえ、あらゆる被削材に対応する。

 ドリルの直径は0.02ミリメートルから加工穴深さに応じて、L/Dで5Dタイプ、10Dタイプ、15Dタイプ、20Dタイプを標準品としてラインアップ。また、専用ダイヤモンドコーティングを施し、高剛性3枚刃を採用したファインセラミック用の極小径ドリルも受注販売する。品質面では全数検査を実施し、UVM-DRLのみ1本ごとに直径のマイナス量を製品ラベルに表示している。

■住友電気工業

 住友電気工業の超硬ソリッドドリル「マイクロロングドリルMLDH型」は、小径深穴加工用に開発された高能率加工用油穴付きドリルである。新溝形状とシンニング、切れ刃の最適なバランス設計で、高いドリル剛性と安定した切りくず排出性を両立させた。ステンレス鋼加工において、ドリル径の30倍の深穴に対して内部給油によるステップなしでの高能率加工が可能となった。

 また、特殊コーティングの採用により多様な被削材に対して刃先摩耗の進展を抑制。切りくず排出性の向上とあわせ、切削抵抗の上昇を抑制することで、折損に対する信頼性を向上できる。小径ドリルの課題であった、安定長寿命を実現できる次世代のドリルである。直径0.8ミリ〜2.0ミリメートルで、下穴加工用とあわせ205型番を在庫している。

■ダイニチ

 ダイニチは2014年から「Small Holes - a Great Future!」を合言葉に、小径ドリルの穴加工の進化(深化)を追求している。小径穴あけによる未来への貢献を目指すため、よりいっそうの技術向上を図っていく。

 その第一弾が、小径ドリルによる穴加工の深さへの挑戦である。直径0.1ミリ〜6ミリメートルならば、その径の100倍の深さまで穴あけ加工できる技術を確立した。

 この技術によって、これまではレーザー加工や放電加工でなければ難しかった穴あけ分野にも応用できる。熱の影響が少なく、精度や面粗度も高いレベルの穴加工が可能である。各種ノズルやオリフィス(小孔)など、小径の精密穴加工に威力を発揮する。

■不二越

 不二越の「アクアドリルEXオイルホールシリーズ」は刃先形状と溝形状の最適設計により、切りくずの分断性と排出性を向上。穴深さ30D(直径の30倍)までの深穴加工が可能。耐熱性と耐摩耗性に優れたアクアEXコートにより、高速深穴加工でも耐久性と安定性を向上させ、長寿命化を実現。オイルホールの採用により、内部給油を可能にしたことで、一般鋼から合金鋼、鋳鉄、ステンレス鋼などの幅広い被削材に対応。小径穴は直径1ミリメートルの穴深さ20Dまで対応している。

 アクアドリルEXオイルホールを使用した深穴加工の前加工には専用の「アクアドリルEXオイルホールパイロット」を組み合わせて使用することで、食い付き性に優れた先端形状で、位置決め精度を高め、後工程の深穴の曲がりを抑制。

■三菱マテリアル

 三菱マテリアルはドリル専用PVDコーティング材種により、幅広い被削材で優れた耐摩耗性を発揮する汎用超硬ソリッドドリル「MVS(内部給油)」の小径サイズを近日発売する。

 この製品は既存のMVSと異なる形状となっている。切りくず分断性を向上させながら刃先強度を持つ直線刃形を採用した。また切りくず排出性の向上を図る新溝形状はバランスに優れ、さらなる高精度を実現するダブルマージンも採用。小径穴あけ加工に最適な仕様となっている。サイズは直径1ミリ〜2.9ミリメートルまで0.1ミリメートル幅でラインアップした。それぞれに加工穴深さ(L)/ドリル径(D)が2D(直径の2倍)のガイド穴用タイプとL/D=7D、12D、20D、25D、30Dの6種類を規格在庫。深穴加工にも対応。

 

 

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