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業界展望台

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高度化するモノづくりを支える めっき技術

6月9日(火曜日)付 日刊工業新聞 20面

 耐腐食性や耐摩耗性、電気的特性など製品表面の機能を高める「めっき」は、部品製造の要素技術として重要な役割を担っている。しかし近年は多くの産業分野で製造拠点が海外へシフトし、日本のメッキ市場のパイは縮小傾向。特に装飾用途などの汎用メッキは、中国をはじめとする東南アジア諸国への流出が目立っている。メッキを手がける企業が競争力を維持するためには、微細な電子部品向けなど高機能が求められる用途に対応できる技術を磨くことが欠かせない。

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先端技術で存在感増す−部品製造の基盤技術、競争力維持が課題

 日本のメッキ技術はこれまで装飾メッキで培ってきたノウハウを生かし、膜厚の誤差が数千分の1ミリメートルもない均一メッキや、ミクロン単位の超微細部品へのメッキを可能にしている。これらの技術は世界的に評価が高く、宇宙ステーションの実験用反射炉内のメッキを手がけている例もあるほどだ。特に最近では燃料電池の電極触媒の形成や、小型・薄型化が進む情報家電への高精度な皮膜形成にとって、なくてはならない技術となっている。次世代ロボットの微細な動作用配線に、導電性や耐熱性を付与するための基盤技術としても高度化が期待されている。

 燃料電池向けではセパレーターとして、チタン材に精密プレス加工とメッキを施し、高い耐久性と低コスト化を実現する技術開発が進んでいる。燃料電池の内部は互いのガスが混合しないよう各室の間にセパレーターを装着する構造となっている。一般的には切削加工された炭素系セパレーターが利用されるが、炭素系セパレーターは高価であり、耐衝撃性の面でも課題があった。チタン材に精密プレス加工とメッキを施したセパレーターを量産することで価格を抑え、燃料電池の利用拡大を図る動きが目立っている。

 ただ、チタンはメッキ加工が難しい部材。これら難加工材に対しては、高い導電性が必要な部分にのみ密着性のよいロジウムや金の直接部分メッキを施し、耐久性と低コスト化を両立している。金メッキは3マイクロメートル、ロジウムでは約0.3マイクロメートルの膜厚で長寿命と高耐久性が維持できるという。

 燃料電池の普及促進には白金など希少金属の使用量削減も重要な要素であり、これに応える技術も確立されている。性質の異なる白金メッキ粒子を複数組み合わせ、超薄膜のメッキ皮膜を形成する方法だ。これにより白金の使用量が大幅に削減でき、コスト低減が図れる。これらの技術は燃料電池のみならず、医療やバイオ分野への応用など今後の展開が期待されている。

 環境負荷低減に対する製品開発にも余念がない。ノンシアン系の無電解置換金メッキ液で、シアン系置換メッキ液と同等以上の膜形成速度を有する製品が登場している。従来のノンシアン系置換メッキ液と比べると、析出時間は半分以下に短縮。膜厚のバラつきもない。

 金メッキ液のシアンフリーについては、シアン化合物の代わりに亜硫酸金塩を使用する技術が既に確立しているが、用途はウェハーなどの電解メッキに限られていた。同ノンシアン系メッキ液は、半導体パッケージなどへのアプリケーションにも対応可能。シアン系メッキ液と変わらない品質安定性と生産性を有している。使用には新たな設備投資を必要とせず、従来どおりのプロセスで加工できる。

 シアン化合物については廃水処理の不備による環境への悪影響の懸念が常につきまとう。そのため作業現場では特殊な排水処理設備や、欧州特定有害物質規制(RoHS)指令など世界的な法規制への対応が必要となっている。今後、メッキ企業が国内・海外ともに厳しい環境を勝ち抜くには関係企業や大学、公設試験研究機関などとの連携を深め、事業化に向けたニーズを把握することが重要だ。そして自らが有する技術についての情報を発信し、これらの研究開発を円滑に進めなければならない。

 また、メッキには前処理から後処理まで多くの行程があり、重金属や劇薬類を使用するため管理技術は特に重要となる。専門的で幅広い知識が必要なため熟練技術者に支えられるところが大きいのが現状だ。企業が競争力を維持・向上するには、後継人材の育成と確保も大きなテーマとなっている。

表面改質展2015 9月8日から3日間 パシフィコ横浜で開催

 「表面改質展2015」が9月8日から10日までの3日間、パシフィコ横浜(横浜市西区)で開催される。主催は日刊工業新聞社で入場料は1000円(事前登録者、招待券持参者、15名以上の団体、学生は無料)。表面処理に関する技術や製品、サービスが満載で、講演会や出展者によるワークショップも多数予定されている。

 「技術分野」では熱処理や表面改質、メッキ、溶射などの最新動向を中心に、レーザーによる表面改質技術なども紹介。「機械・機器周辺要素分野」では粉体塗装や洗浄関連機器に加え、真空炉や蒸着装置などの加工設備をPRする。そのほか「測定装置分野」では精密測定装置や試験機器、表面処理を施した製品・部品を展示する。

 同展示会は「難加工技術展2015」「ナチュラルエネルギーEXPO2015」との同時開催。より多くの来場者を呼び込み、出展者との商談の機会を創出する。昨年は3日間で約9000人が来場し、今回は2万人の来場を目指している。

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