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業界展望台

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生産効率化や技術高度化に貢献 産業ガス

7月9日(木曜日)付 日刊工業新聞 12面〜13面

 窒素や酸素、アルゴンなどに代表される産業ガスは、モノづくり産業の発展を支える必要不可欠な存在で、重要なインフラとして活躍している。電力料金値上げなどの電力・エネルギー課題の中、産業ガスの需要拡大や容器RFタグ(ICタグ)の普及推進などの安全性向上などに取り組んでいる。

【モノづくり産業の発展を支える】

 産業ガスは鉄鋼や化学、エネルギー、自動車、機械、液晶・半導体、医薬・農業、宇宙産業など幅広い分野で利用され、あらゆるフィールドの現場を支えている。産業ガス全体の売り上げ規模から、窒素と酸素、アルゴンが三大産業ガスと言われる。

 窒素は不活性の性質を持ち半導体や金属化合物の製造雰囲気ガスとして利用される。酸化防止による品質保存用として、食品や飲料などのパッケージに封入されたり、窒素ガスが充填されたりする。

 酸素は化学的に活性が高い。鉄鋼業では酸素を使うことで、空気燃焼にはない高温燃焼が得られる。酸素燃焼は空気燃焼と比べて窒素による燃焼効率の低下や窒素酸化物(NOX)の発生がなく、省エネや環境保護として注目されている。

 アルゴンは高温、高圧でも他の元素と化合しない特徴をもつ。酸化や窒化を嫌うアルミニウムなどの非鉄金属の溶接や加工などに使われる。

 また沸点が最も低く超低温冷却用途などに使われるヘリウムは、リニアモーターカーやMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などの超伝導を利用した分野での研究開発が進められている。炭酸ガスはドライアイスや飲料などに利用。水素は燃料電池車(FCV)用の燃料、金属表面を鏡面のようにする添加剤などに使用されている。

 特にFCVの需要に伴い水素ステーションの運用場所不足の課題を背景に、移動式の水素ステーションが市場に登場する。

 移動式水素ステーションは定置式に比べて約30%の敷地面積や建設工期が約60%程度で済む特徴がある。都市部における水素供給拠点として期待されている。

 このほかの産業ガスにはアセチレンやレーザーガス、半導体材料ガスなどがある。

 三大ガスの製造法として最も一般的なのが「空気分離装置」を使った深冷分離法。原料となる空気から不純物などを取り除き、圧縮と冷却を繰り返す。完成した液体を極低温状態で沸点の差を利用して蒸留し、窒素と酸素に分離。酸素と沸点が近いアルゴンは液体酸素の中からアルゴン成分の多いところを取りだして精製する。

 その後、製鉄所や石油コンビナートなどには直接パイプラインで供給(パイピング)する。需要地によりタンクローリー車やシリンダーと呼ばれるガスボンベ容器に充填して輸送される。

【電気料金値上げ−影響緩和を要望】

 日本産業・医療ガス協会(JIMGA)の調べによると、2014年度下期(14年10月〜15年3月)の窒素販売量は前年同期比0.7%減の21億7622万平方メートル、酸素は同1.4%減の8億9098万平方メートルとなった。消費税増税の反動が要因とされる。しかしタンクローリー車による供給は増加している。液化窒素は同2.8%増、液化酸素は同1.5%増と伸長しており、実体経済への波及に期待が持てる。

 またアルゴンは同2.6%増の9693万平方メートルとなった。

 こうした中、“電力集約型産業”と言われる産業ガスは電力料金値上げは重要な問題である。同協会による産業ガスと医療ガスの電力使用量は年間93億キロワット時で、日本全体の電力需要(自家発電を含む)の約1%を占める。また売り上げ当たりの電気使用量は全製造業平均の28.5倍となり、コスト負担になる。

 電力料金値上げについて、13年からJIMGAなど11団体は連名で政府に対して「電気料金値上げ影響の緩和に関する緊急要望」を行ってきた。15年の活動として11団体は政党議員への陳情と先進7カ国首脳会議(G7)サミットにおけるエネルギーミックス関連組織への働きかけ、政府に向けて電力の安定供給を重視するなどした「エネルギー政策等に関する電力多消費産業の共同要望」を提出した。

【産業ガス容器の保安面強化、流通効率化へ−RFタグ普及促進】

 日本産業・医療ガス協会(JIMGA)は産業ガス容器の保安面強化や流通の効率化を目指し、RFタグ(ICタグ)の普及と促進を展開している。

◇ ◇

 産業ガスの供給・貯蔵方法の一つに、液化ガスを充填工場でシリンダー(ガスボンベ)と呼ばれる高圧ガスの容器に充填し利用する方法がある。容器一本ごとにICタグを装着することで、個々の容器の識別情報や法律(高圧ガス保安法)に基づく管理情報、物流管理のための移動・履歴情報を書き込むことができる。

 JIMGAはICタグの規格を統一し、独自開発したミドルウエアを使う。業界で標準化(仕様の共通化)とセキュリティーを確保できる。07年に容器RFタグ運営委員会を設立し、11年から本格的に全国展開を始めた。

 全国には1500万本の容器が流通している。15年4月末時点において国内188拠点で装着や運用がなされ、56万本の容器にICタグを装着。これまでに60社近くの企業が採用し運用。月ベースで1万〜2万本の純増があるという。16年3月末までに310万本の装着を目標にしている。

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