このページの本文へ

業界展望台

このエントリーをはてなブックマークに追加

IT・エネルギー・交通インフラ守れ−雷害防止技術

7月10日(金曜日)付 日刊工業新聞 12面

 雷による被害である雷害は、単に建物や電力設備だけにとどまらない。雷害により誤作動や停止が起きると、莫大(ばくだい)な被害に直結するIT機器や情報システムにまで影響が広がってしまう。さらに再生可能エネルギー分野である洋上風力発電や太陽光発電でも、手法が十分には確立されていない落雷被害の防止技術は喫緊の課題だ。したがってITやエネルギー、交通といった大規模インフラの各分野において、「落雷リスク」への深い知見と防止技術の確立が必要となっている。

 洋上風力・太陽光発電−技術確立、喫緊の課題

 落雷から建物を守る防止技術については、「外部雷保護システム」および「内部雷保護システム」がある。まず外部雷保護システムは、人を含む建物を直撃雷(落雷)から保護するためのシステムであり、避雷針で落雷による電気エネルギーを受けて、引き下げ導線を通じて地中に放流する。

 一方、落雷時に建物の引き下げ導線に流れる雷電流により、建物内部の導電性部分(金属体)間に電位差ができる。その電位差によっては建物内で、火災や爆発を起こすような花火が発生する。これらの危険を防止する対策が、内部雷保護システムである。

 具体的には建物内の金属部分を、導体またはサージ防護デバイス(SPD)で、接続する等電位ポンディングにより機器などの故障を防いでいる。また、生じた電位差でも火花放電が起きないように相互の距離を離すか、絶縁するように工夫している。

 高度情報化社会の進展に伴い、回路の電子化が機器の雷サージ耐量を極端に小さくしている。さらに電源、通信、アンテナなど回路がネットワーク化したことで、雷の侵入と通過経路が多様化して、雷による被害が増加している。

 また国内各地で導入が進む、再生可能エネルギーの洋上風力発電の分野でも、雷害防止技術の確立は不可欠。

多端子直流送電システムのイメージ

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、大規模な洋上ウインドファーム(風力発電システムを複数基配置した発電所)を拡大するために、複数の洋上ウインドファームから発電される電力を、複数の洋上変電所で集電・直流変換して、複数の陸上変電所へ送電する「多端子直流送電システム」の開発に乗り出している。これは高い信頼性を持ち、かつ、低コストな長距離送電の実現を目指すものだが、雷害防止技術は、柱の一つになっている。

 多端子直流送電システムは、洋上変電所と陸上変電所の間や洋上変電所の間を、送電ロスが少ない直流で送電し、電力を効率的に長距離送電する。多端子化にすることで、都会など大規模な電力需要地から距離的に遠く離れた、風力発電向けの適地に設置された複数のウインドファームで発電される電力を、陸上変電所を新設せず、既存の接続可能量の大きい電気系統へ効率的に送電できる。 

 この多端子直流送電システムの場合、複数の変電所で相互に接続する回路構成となり、電気系統を停止することなく運転を持続することが必須の要件。そのため直流送電系統に、もしも落雷などによる不測の事故が発生した場合には、その事故を起こした区間を系統から切り離し、健全な回路による電力供給を継続するための直流遮断器が新たに必要となってくる。NEDOでは、この落雷防止技術となる大容量直流遮断器の実現に必要な、要素技術の開発を行う。開発には東京電力や東京大学、住友電気工業、日立製作所、古河電気工業などが参画している。

昭電

 昭電は「情報化社会に安全と信頼を提供する企業」として、雷害対策・地震対策を中心に、総合安全ソリューションをワンストップで提供する。

 雷害対策事業では警報出力と故障表示付きの通信用SPD「ASGシリーズ」、最新の安全遮断技術を持つ産業用太陽光発電(PV)用SPD「ADNシリーズ」や電源用SPD「APN-4シリーズ」など、より安全性の高い製品を開発・販売する。落雷情報をいち早くキャッチして被害を抑える「落雷情報配信サービス」も提供している。成田工場にはPV向け防災対策製品展示場「BCP対策モデルパーク」を建設、公開している(予約制)。

サンコーシャ

 総合雷防護企業のサンコーシヤは、太陽光発電などクリーンエネルギー設備の雷対策を積極的に展開している。太陽光発電システムは光を受けやすい場所に設置されるため、雷被害のリスクも比較的高い。同社は直流ヒューズによる分離機構を搭載することで劣化時の安全性を高めた、太陽光発電システム用の「MZSR-PV」シリーズ各種をラインアップしている。

 同シリーズには直流1000ボルトまでに対応した「MZSR-1000PV」と、同600ボルトまでに対応した「MZSR-600PV」がある。また接地相の有無により、それぞれ「PVI形」「PVY形」に分かれている。

フランクリン・ジャパン

 全国雷観測網「JLDN」を運用するフランクリン・ジャパンは保有する雷データをベースに、独自に開発した2種類の雷の予測情報を提供している。

 具体的には、(1)最大2日先までの発雷の可能性を予測する「発雷確率予報」(2)落雷前に発雷可能性の高いエリアを予測する「雷発生予報」で、工場での設備や動力の担当者には、非常に有用な情報だ。これらの情報は同社の雷・気象情報提供システム「ライトニングスコープ プラス」で、閲覧が可能。

 同社のホームページではユーザーの導入事例を公開しており、雷対策を検討しているユーザーであれば、ぜひ一度、目を通しておくべきだろう。

音羽電機工業

 音羽電機工業は接地(アース)不要で、配線可能な新製品「絶縁形雷プロテクタ LAN用」を発売した。製品の中に高耐圧パルストランスが内蔵され、避雷器の1次側、2次側は電気的に絶縁されて接地を不要にした。

 雷サージが1次側に侵入した場合、内蔵の高耐圧パルストランスによって雷サージを1次側で遮断、2次側には必要な電圧しか流れない。LANケーブルに接続するだけで、LAN回線から侵入する雷サージが防げるため、非接地の場合が多いパソコンやHUB(分岐機器)などネットワーク機器の保護に適している。雷サージ耐電圧は7キロボルトで、ギガビットイーサネットにも対応。

おすすめコンテンツ一覧

業界展望台

業界展望台

11月1日は「計量記念日」―経済活動の根幹に計量法

職場なでしこ

職場なでしこ

日本公庫・台東区産振事業団、女性フォーラム初開催

彩々新製品

彩々新製品

個性発信・話題の商品/スガイワールド―変装ペン

元気印中小企業

元気印中小企業

車体塗装からマーキングまで関連3事業で相乗効果 [デサン]

工業用地分譲情報

工業用地分譲情報

集積進む「神戸医療産業都市」−ポートアイランド

スマートグリッド

スマートグリッド

竹中工務店、稼働中ビルをクラウド化−複数建物にシステム導入視野

地域応援隊

地域応援隊

技術力で時代を先導する―埼玉西部地区企業

産業広告

産業広告

中小企業から大手企業まで、多彩な産業広告をカテゴリー別に毎日紹介

Twitter

日刊工業新聞BusinessLine(Nikkan_BizLine)