このページの本文へ

業界展望台

このエントリーをはてなブックマークに追加

免震・制震(振)技術

7月17日(金曜日)付 日刊工業新聞 24面

 免震・制震(振)技術は地震による建物への被害を最小限に抑える役割を担う。安全性の確保はもとより、企業にとっては事業継続計画(BCP)の観点からも、地震に伴うリスク軽減でこれら技術などを取り入れた対策が浸透、そのためのニーズも多い。このため、特定分野に対応した技術、装置開発も活発で、建設会社や関係メーカーでは安全性と企業活動の根幹を支える免震・制震にかかわる技術開発に傾注している。

□  □

地震に伴うリスク軽減

 免震、制震技術は積層ゴムやオイルダンパーなどの特別な装置によって震動を制御し、建物の揺れを可能な限り低減させる。建物と基礎を切り離して震動を吸収するのが免震構造、構造体内部に揺れを減衰する装置を組み込んだものが制震構造と呼ばれる。

 このうち、BCP対策として、災害リスクを最小化する工法などが広がっている。大手物流企業が新設したある物流センターでは、先端の鉄製の免震装置を導入。建物内の積載荷重が変化する倉庫で、安定した免震性能を備える。

 地震時にスライダーが、すべり板上を振り子の原理で移動し、地震エネルギーを吸収しながら、建物を元の位置に戻す。一般的なゴム製の免震装置に比べて、耐久性で優位性を備えている。

 また、物流施設に導入されている自動倉庫用途でも地震によるリスク低減の取り組みが進む。筋交いの制震ダンパーによる制震装置を提供するところも。制震ダンパーに組み込まれたゴム状の粘弾性体が伸び縮みしながら地震のエネルギーを吸収、揺れの伝達を抑制する。

 これとは別に大手建設会社ではワイヤロープを使った制震工法を立体自動倉庫向けに開発している。自動倉庫のラック頂部に設置した制震ダンパーとラック基盤部分をワイヤロープで結び、地震の揺れで生じるラックの変形を制震ダンパーに伝えて揺れを低減する。

 東日本大震災では自動倉庫に損傷はなくても荷崩れや保管荷物の落下で、自動搬送機が使えず、業務が滞るケースが数多く発生。肝心の自動倉庫本来の効率的なシステムが機能しない事態にもなり、携わる事業者側では、地震対策の拡充が課題となっていた。

 BCPではデータセンター(DC)の地震対策も最優先事項だ。このため、免震構造を用いたDCの新設やバックアップ拠点の設置がいち早く図られてきた。

 DC用向けにサーバーラックなどを地震から守る免震装置も別途提供されている。必要範囲だけを免震化する薄型タイプも提供されており、高さ制限のある建物にも導入しやすい仕様にしている。

□  □

超高層ビルに影響 長周期地震動へ備え

 長周期地震動への対応も進捗(しんちょく)している。遠く離れた大型構造物を大きくゆったりと揺らす長周期地震動は、共振作用によって後揺れが長く続く。特に超高層ビルの高層階での影響が大きく、東日本大震災では、東京都心や大阪市内の超高層ビルでも10分以上揺れ続け、その特性が一般にも知られるようになった。

 この長周期地震動で課題となるのが既存の超高層ビルでの対策。三井不動産と鹿島は5月に新宿三井ビル(東京都新宿区、高さ210メートル)で進めていた超大型制震装置の設置工事が完了したと発表した。ビル屋上に揺れを打ち消す方向におもりが動くTMD(チューンド・マス・ダンパー)と呼ばれる大型制震装置を設置、長周期地震動による揺れ幅と揺れ時間の低減を実現した。

 超高層ビルの風対策に設置されてきた振り子式のおもりを同地震動用途の制震装置として応用し、TMD6基(総重量1800トン)を取り付け、低層階に置く高性能オイルダンパーと連動させて、揺れ幅を低減する仕組み。最新鋭の超高層ビル並みに長周期地震動による揺れ幅を抑制する。同ビルでは2013年8月から設置工事を進めていた。

 巨大地震にかかわる対応として、国土交通省は14年4月に南海トラフ巨大地震と首都直下地震への対策計画を策定。このうち首都直下地震では、東京、神奈川、埼玉、千葉を中心に強い揺れが発生し、全壊する住宅や建物が最大で約17万5000棟にのぼる、と想定している。このため、不特定多数が利用する大規模建築物、地方公共団体が指定する避難路沿道建物、また防災拠点建築物に耐震診断を義務づけた改正耐震改修促進法や支援策などにより、耐震化対策を促進させる。長周期地震動についても巨大地震対策の検討に盛り込んでいる。

 また特定建物(病院、百貨店など、不特定多数が利用する一定規模の建物)の耐震化率を08年の80%から20年度には90%に引き上げる計画。住宅の耐震化率も同様に79%から95%に上げる数値目標を設定している。

 巨大地震からの備えとして、暮らしや産業活動に重要な役割を担う免震・制震技術。ビルやマンションでは生活や業務に支障を与えない“居ながら”の改修工法や、特定の事業に特化した対策など、需要は多いものの課題となっているのがコストだ。工法や部材など、進化を続ける免震・制震技術に対する社会の期待は大きい。


主要各社の製品&技術(順不同)

日立機材

日立機材は地震に対するさまざまな製品を開発、販売している。免震では高機能免震床「スキッドII」と「キープ」をラインアップ。スキッドIIは2次元免震床で、耐荷重は1平方メートル当たり1万ニュートンまで対応できる。キープは水平免震床に鉛直免震床を組み込んだ、本格的な3次元免震床。どちらの免震床も既存・新設建物を問わず設置が可能だ。
制震は「油圧式制震ダンパ ハイビルダム」を発売している。油の流体抵抗を利用した制震ダンパーで、建物の揺れを低減し耐震性、居住性を向上させることができる。大地震から風揺れまで幅広く効果を発揮し、超高層から低層建物までさまざまな建物に採用されている。

不二越

不二越の「マグニクレードルSシリーズ」は、小型、省スペースで耐荷重性を高めた免震装置だ。2層のプレートが揺れに合わせて動き、地震の衝撃を緩和する。地震発生時の加速度を最大10分の1に抑えることができる免震性を備えた。
最大積載荷重は1ユニット当たり2500キログラム。製品上にコンピューターのサーバーや医療機器、精密試験装置を置いて地震の衝撃から守る。また免震効果の大きいレール支承を従来の2層式から単層式に改良することによって小型・軽量化を実現した。さらに配線ガイドを備え、積載物の設置を簡易にしている。特に揺れに厳しい美術品には「マグニクレードルGシリーズ」が採用されている。

おすすめコンテンツ一覧

業界展望台

業界展望台

11月1日は「計量記念日」―経済活動の根幹に計量法

職場なでしこ

職場なでしこ

日本公庫・台東区産振事業団、女性フォーラム初開催

彩々新製品

彩々新製品

個性発信・話題の商品/スガイワールド―変装ペン

元気印中小企業

元気印中小企業

車体塗装からマーキングまで関連3事業で相乗効果 [デサン]

工業用地分譲情報

工業用地分譲情報

集積進む「神戸医療産業都市」−ポートアイランド

スマートグリッド

スマートグリッド

竹中工務店、稼働中ビルをクラウド化−複数建物にシステム導入視野

地域応援隊

地域応援隊

技術力で時代を先導する―埼玉西部地区企業

産業広告

産業広告

中小企業から大手企業まで、多彩な産業広告をカテゴリー別に毎日紹介

Twitter

日刊工業新聞BusinessLine(Nikkan_BizLine)