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業界展望台

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生産の高度化・効率化に寄与する
 リチウムイオン二次電池製造装置

9月10日(木曜日)付 日刊工業新聞 26面

 スマートフォンなど小型民生向けから電気自動車(EV)など車載専用、電力貯蔵システム(ESS)などの大型用途まで、幅広い分野にリチウムイオン二次電池の利用が広がっている。その市場を巡り電池関連企業の熾烈(しれつ)な競争が世界を舞台に繰り広げられている。リチウムイオン二次電池を支える素材各社は量産体制の構築を急ぐとともに、製造装置各社はこれまでの経験とノウハウを生かして国内外で存在感を示している。

 リチウムイオン二次電池は安全性や高出力、長寿命など高い性能や技術が求められる大型製品での実用化が進む。スタートまで1年を切った電力小売り全面自由化をはじめ、電力システム改革が進めばスマートグリッド(次世代電力網)やスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)の重要性は増し、大型二次電池の普及に弾みがつきそうだ。

 蓄電池や太陽電池、家庭用エネルギー管理システム(HEMS)を標準搭載するスマートタウンの建設が盛んになるとともに、普及に遅れがみられたEV市場もここにきて需要の立ち上がりをみせている。EVは2018年ごろにはさらに伸びる見通しだ。日産自動車はEVの航続距離を現行比3割増の300キロメートル程度まで伸ばしたモデルを年内に発売する予定。電池関連各社はEV向け次世代リチウムイオン二次電池開発に向けて本格量産を目指す。

 富士経済(東京都中央区)のまとめによると、14年のリチウムイオン二次電池世界市場は1兆6768億円。19年には14年比31.9%増の2兆2112億円に達する見込み。また、14年に実施したリチウムイオン二次電池材料世界市場調査では13年は5670億円で、18年には13年比63.8%増の9285億円が見込まれる。

 リチウムイオン二次電池は他の二次電池に比べエネルギー密度や出力密度が高く、サイクル寿命が長いなどの優れた特徴を持つ。その原理は電気を使う放電時には負極に含まれるリチウムがリチウムイオンと電子に分かれ、イオンは電解液の中を、電子は回路を通って正極へ移動する。充電時には逆の反応が起きる。

リチウムイオン電池の構造

 構造は正極材、負極材、セパレーター、電解液の主要4部材で構成される。正極材の性能は特に重視され、コバルト酸リチウムが多く使われてきた。しかし、コバルトは希少金属で相場価格の不安定さが課題となるため、マンガン酸リチウムやニッケル酸リチウムが使われている。リン酸鉄リチウムでの事業化も進む。負極材は天然あるいは人造のグラファイト(黒鉛)といった炭素化合物が使われる。負極のさらなる高容量化には、合金系負極材料などへの挑戦的な取り組みが求められている。

 電解質は電池の入出力特性、寿命、安全性、電圧に直接関わる電池の重要部材。セパレーターは正極と負極を隔離し、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する部材になる。

 具体的な製造工程は、まず電極材のもととなる活物質を撹拌してアルミニウム箔などを塗布し、ロール状にプレスした後で寸法に沿って裁断する。できあがった電極材に絶縁用のセパレーターをはさんで巻き取るか、もしくは積層する。これをケースに挿入して電池を組み立て、電解液を注液してフタを封止し、外装組み立てに至る。これら全てに特有の製造装置が使われている。主な製造装置としてミキシング装置、コーター・塗工機、スリッター、ワインダー、スタッキング装置、電極組立装置、電極板巻取装置、電池組立装置、注液装置、レーザー溶接装置、外装組立装置などがある。

 国内のリチウムイオン二次電池関連産業は関東と関西地域で集積が進む。製造装置の世界市場では日本が最大の市場規模で、日本の製造装置メーカーは存在感を示している。次いで韓国・中国・台湾のエリアで日本に匹敵する市場規模となり、最先端の日本製装置がこれらの地域に輸出されている。

 高い成長が期待されるリチウムイオン二次電池は、課題解決に向けさらなるブレークスルーを遂げるならば普及が加速し、巨大市場を形勢する可能性を秘める。それだけに、製造装置メーカーの果たす役割はこれまで以上に期待される。


有力企業の製品・技術

仲代金属

 仲代金属は二次電池向けタブリード材の安全性を向上させる「バリレス加工技術」を業界に先駆けて開発した。タブリード材においてバリは高危険度な異物となり、電極内で浮遊し発火を引き起こすため不具合の原因となる。同社はタブリード材の加工時に発生するバリや湾曲を極限まで低減させるため、従来の電池材専用スリット加工機で生産したスリット製品に、独自開発の特殊な2次加工を施すことでバリ極低を実現した。

 5年間の研究開発を経て、バリと湾曲を従来の半減以下1マイクロ-5マイクロメートルと極小化することに成功した。これにより、モバイル端末や車載用蓄電池の品質と安全性を向上させた。

野上技研

 野上技研は精密打ち抜きを得意とする金型メーカー。リチウムイオン二次電池業界には電極材、セパレーター、アルミラミネートなどのごく薄い材料をバリ、変形、コンタミネーションなく精密に打ち抜く治具・金型を提供している。高精度打ち抜きにより活物質の滑落もない。

 研究試作用の「電極打ち抜きハンドパンチ」やグローブボックス内でも扱える「電極打ち抜きプレス」は、国内外の研究機関に多数採用。「超精密打ち抜き金型」は高品質で金型本体を長寿命化させながら、他社製の4倍のメンテナンスサイクルを達成。同社製品はリチウムイオン電池の開発・製造現場にソリューションをもたらす。

長野オートメーション

リチウムイオン電池や燃料電池の製造設備の中で、多くの顧客にとって積層工程がボトルネックとなっている。もろい電極や多孔質のフィルムなど扱いに技術を要する材料でありながら、電池1個で100枚以上の精密な積み重ねが必要となる。長野オートメーションでは薄フィルム搬送技術とカム機構を融合し、高速で安定した積層機を開発した。枚葉、つづら折り、袋詰めの3種類の積層機を開発し、顧客の電池形状に合わせて選択ができる。
また、少量多品種や研究用生産のためのシンプルな積層機も開発した。枚葉および袋詰めタイプの積層機はデモ機も用意している。

東洋システム

 東洋システムは二次電池の試験装置メーカー。「充放電評価装置」は携帯電話やハイブリッド車(HV)などに搭載される二次電池を充放電して性能や寿命を評価する装置。また、電池の「研究開発用試作装置」や「安全性試験装置」などユーザーのニーズにあった製品も特注で設計・開発する他、リチウムイオン電池を搭載した「電池パック製品」の設計・製造も行う。その他、ユーザーの要望に応えた電池の評価試験を行う「受託評価サービス」にも力を入れる。

 同社は“世界から愛される製品づくり”をモットーに常に新しい技術を提供し、エネルギー産業分野で貢献していく。

メガテック

 メガテックはスマートフォンやEV車に搭載されるリチウムイオン二次電池の角ケース用フチトリミングマシン装置メーカー。トリミングマシン「MST-8D」および「BCT-8」は、通常のプレス機械でのフチ切り加工問題、刃持ち耐性、加工速度、精度などの課題解決のため、プレス機からトリミング工程を分離したトリミング専用機である。サーボモーター駆動の専用ダイセットで、短辺・長辺のトリミング加工を実施する。供給、搬送から短辺・長辺の端部トリム加工・矯形・全長検査・搬出までを全自動処理する。タッチパネルによる各工程のストローク設定とノックアウトの過負荷チェックも可能。

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