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業界展望台

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高速・高精度加工に応える ドリル穴あけ加工技術

9月16日(水曜日)付 日刊工業新聞 31面〜33面

■設備投資回復で需要好調

 国際競争力の向上を図りモノづくりが複雑化する中、ドリルを用いた穴あけ加工はこれまで以上に厳しいニーズにさらされている。穴あけにおいてドリル加工が占めるウエートは大きく、自動車や工作機械、金型、航空機など幅広い分野で重要な役割を担っている。最近では、これまでに加工実績がほとんどなかった難削材への穴あけも多くなり、工具メーカーは難削材への加工精度と、工具の長寿命化を向上する製品開発に力を入れている。

■耐久性高める技術開発進む

 部品加工や金型加工においては加工精度の向上やリードタイム短縮のため、焼き入れ材など高硬度鋼へ直接加工を施し、生産の効率化を図る動きが主流となっている。ただ、高硬度鋼の加工は切削抵抗が大きく、これまでは切れ刃欠損や本体折損などドリルの寿命短縮の問題も少なくなかった。

 しかし近年はドリルの母材と形状の最適化、コーティング技術が進み、穴あけ精度と耐久性を長期間維持できる製品が数多く提供されている。超硬工具協会によると2015年3月の超硬工具出荷額は約320億円で、前年同月比11.7%増。中でも切削工具については約244億円で同12.5%増と大きく伸びている。設備投資の回復を背景に、超硬工具の需要は増加傾向にある。

 好調の要因の一つには、難加工ニーズへの対応がある。ドリルの母材に超硬合金を使用し、これに物理気相成長(PVD)や化学気相成長(CVD)、ダイヤモンドコーティングなどを施して耐摩耗性や耐久性を高める技術開発が進んでいる。超硬合金はコバルトをバインダーに、タングステン・カーバイドを焼結したものが一般的であり、折損対策として心厚を一般鋼材の1.6倍にして曲げ剛性を高めたものも登場している。

 心厚を大きくするとフルートの容積が小さくなるというデメリットもあるが、フルート形状を見直すことでドリルの剛性と切りくず排出性を両立しようとする製品開発の動きが目立っている。切れ刃の欠損対策では、ねじれ角を小さくすることで刃物角を大きくし、負荷の高い切削抵に耐えられる構造とするものがトレンドとなっている。

■工具各社の品質管理カギ

 このような取り組みにより、これまで放電加工に頼っていた高硬度鋼の穴あけがドリルで効率的に行えるようになった。最近では70HRCの高硬度鋼の加工も実現している。従来、55HRC程度を超える高硬度鋼の加工は、細穴放電加工やワイヤ放電加工が一般的だったが、超硬合金コーティングドリルへの置き換えが可能となったことで、現在では加工時間が大幅に短縮されつつある。

 とはいえ高硬度鋼の穴あけは、一般鋼に比べると切れ刃欠損や本体折損、コーティングはく離など工具の早期寿命につながりやすい。今後、工具メーカーの品質管理はよりいっそう重要となるだろう。

 近年、自動車や航空機、医療機器分野などでは部材の軽量化を図りチタンやチタン合金、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの使用が増えている。これらは一般的に難加工材と呼ばれ、切削が難しい素材。ドリルの寿命を短くする天敵でもある。精度良く穴あけを行うためドリルの母材や形状、コーティングに加え、加工方法においても技術開発が進められている。

■工作機械含む提案が不可欠

 CFRPの加工で最大の課題となるのは、繊維層のはく離と未切断繊維の発生をいかに抑えるかということ。加工の効率化を妨げるこの問題に対しては、ダイヤモンド焼結体(PCD)を切れ刃に用いたドリルへの信頼性が高いようだ。

 CFRPは鋼に比べ軟化温度が低く、切削時に発生する熱により層間はく離を起こしやすい。その点、PCDは硬度が高く、熱伝導率は超硬合金の約10倍。刃先材料としては最適であると考えられている。CFRPの加工には、このPCDと超硬合金を同時に焼結したダイヤ一体焼結型ドリルの高度化が注目されている。

 これまで、層間はく離と未切断繊維の発生を抑えるには、ドリル抜け際の送り速度を抑え、加工負荷を低減することが重要とされてきた。しかしながら最近のPCD超硬合金一体焼結型ドリルでは、切削速度が1分間に300メートル以上の高速で加工しても、ドリルの温度上昇や未切断繊維の発生を抑制できる製品が次々に登場。難加工材の高速加工を飛躍的に向上している。

 一方、チタンやチタン合金は熱伝導率が低いため、ドリルが加工熱の影響を受け破損のリスクが高まる。とりわけ直径1ミリメートル以下の小径穴加工ではクーラントの内部給油が難しいため、切りくず詰まりによる折損が起こりやすい。加工時にはステップフィードによる刃先冷却と、スムーズな切りくず排出が不可欠となる。

 チタンへの穴あけには、切れ刃にコーティングを施していない超硬ソリッドドリルが使用されることが多いようだ。極めて鋭い切れ刃が必要であり、コーティングすると摩擦抵抗が大きくなるため熱の発生が増加するためである。

 チタンへの効率的な加工を検討すると、送り速度を上げれば、切削時に切れ刃が被削材に接触しながら移動する距離が短くなるため摩耗が抑えられる。反面、切削速度を上げれば切削時の刃先の温度上昇が大きくなり、摩耗量が大きくなるなどの課題もある。

 難加工材へのドリル加工が増加している現在、これらの被削材に効果的に穴をあけるには、工具だけでなく工作機械を含めた機械加工のトータルソリューションの検討が不可欠となる。最先端のドリルに、工具メーカーが提案する知識や経験が加えられてこそ包括的なソリューションとなり、理想的な結果を得ることができるのである。

 

主要企業の製品・技術紹介

不二越

 不二越の「アクアドリルEX3フルートシリーズ」は、切削バランスに優れた3枚刃の切れ刃を持ち、リーマ加工なしも可能となる高精度穴を高能率に加工できる。
ラインアップは
(1)油穴付きで切りくずの分断性、排出性を大幅に向上したオイルホールタイプで、穴深さは3D、5D、10D
(2)高硬度材専用の超硬母材と強度を高めた刃先形状で硬度60HRCの高硬度材への一発加工が可能なハードタイプ
(3)一般鋼での5D深さまでを外部給油で加工可能なレギュラータイプを用意。
広範囲な加工現場で生産性向上、コストダウンに寄与できる。

ダイジェット工業

 ダイジェット工業の「タイラードリル」は先端角が180度で完全フラットなドリル。下穴なしでの座ぐり加工だけでなく、傾斜面や交差穴など不安定な形状の被削材への穴あけも安定して行え、広範囲に使用が可能だ。薄板の穴あけ加工では通常のドリルよりもバリの発生が少なく、エンドミルに比べて溝形状が広いため切粉処理性にも優れる。また、切削抵抗も低く、一般鋼だけでなくプリハードン鋼やステンレス鋼の加工においても長寿命を実現している。有効加工深さは直径の2倍。工具径は3ミリ〜14ミリメートルで、ラインアップを拡張中である。

三菱マテリアル

 三菱マテリアルの汎用超硬ソリッドドリルであるWSTARドリルシリーズ「MVS」は、多様な被削材、幅広い切削領域で安定加工を実現する。ドリル径3.0ミリメートル未満の小径サイズは切れ刃強度を重視した新直線刃形を採用し、高い刃先安定性を優先させながら深穴加工におけるトラブルを防止し、切りくず排出性も向上させる。

 刃先交換式ドリル「MVX形」は、完全4コーナー仕様により経済性が良く、外刃内刃の最適配置と材種設定によりこれまで以上の切削性と長寿命化を実現。

 特に外周切れ刃にはワイパー刃を設けることで、良好な壁面精度を可能にしている。

イスカルジャパン

 イスカルジャパンはヘッド交換式穴あけ加工用工具のスモウカムシリーズ用に、最新のセルフセンタリング機能を備えたスモウカムIQヘッド「HCP」を発売。好評を得ている。炭素鋼や合金鋼、ステンレス鋼などの加工に対応。下穴なしで深さ12xDの加工ができる。

 TiAlN PVDコーティングを施し、従来のスモウカムドリルボディーDCNタイプに取り付け可能。ホルダーにはツイストクーラント穴を採用し、ワーク侵入時には高いクーラント効果を発揮する。
ハイレーキ化と適切な内部給油で、工具を長寿命化し加工精度も向上。切りくず排出性も良好だ。

トクピ製作所

 トクピ製作所の切りくず分断システム「HPB(ハイプレッシャーブレーカー)」は、超高圧クーラントを噴出させて切りくずを分断しながら切削、穴加工での切りくずの排出性を向上させる。生産効率の大幅な向上が可能となる加工法である。

 低炭素鋼や一般構造用圧延鋼材(SS材)などの一般自動車部品から難削材切削まで、切りくず分断(切断)ができないところを超高圧クーラントの噴射(7メガ―30メガパスカル)の打力でチップブレークを早め、工具の加熱を低減、切削速度を向上させる。稼働時間の短縮により、エネルギー使用量の削減にもなる。

タンガロイ

 タンガロイの「タングドリルトライ」は、深穴加工に最適な刃先交換式ガンドリル。従来のロウ付けガンドリルの2.5倍以上の高能率加工が可能である。経済的な3コーナー仕様インサートは、チップスプリッターを備え、さらにチップブレーカーによって抜群の切りくず処理性能を得ている。

 また、ガイドパッドの位置を最適化することで、従来のロウ付けガンドリルと同等の加工穴精度、加工面粗度を実現している。

 同製品は高能率加工と刃先交換式による容易な工具管理を実現し、深穴加工において生産性向上・コスト削減に大きく貢献する。

住友電気工業

 住友電気工業のフラットマルチドリルMDF型は、先端角180度設計の超硬ソリッドドリルである。従来のドリルでは困難であった座ぐり加工、傾斜面への穴あけなど、さまざまな加工を可能にした。さらに、貫通穴出口側バリの抑制にも効果を発揮する。これらにより、高能率加工・工程集約に貢献する。

 底面に肉厚を持たせたRSシンニングを採用し、高いドリル剛性を確保。加工の安定性を向上させた。また、最適な刃先設計により高い刃先強度を維持。広い切りくずポケット・高品位なすくい面形状による優れた切りくず排出性により、安定した加工と長寿命を実現する。

OSG

 OSGは「shaping your dreams〜お客様の夢をカタチに」をテーマに、新ブランド「Aブランド」を立ち上げた。その一つが、ステンレス、チタン合金用ドリル「WDO-SUS」だ。

 ステンレス、チタン合金の加工では加工硬化や切りくずの伸び、切削温度上昇による工具寿命の低下や溶着などのトラブルが多い。そのため同製品では、切りくずを細かく分断する新型溝や摩擦熱を低減する特殊マージン、さらにクーラント排出量増大によって切りくず排出性を向上し切削熱を除去する新型オイルホールなどの形状を採用している。

イワタツール


イワタツールの「トグロンハードロングドリル」は、ロックウェル硬度(HRC)40〜72の焼き入れ鋼に30D(径の30倍)までの深穴加工が可能。マシニングセンターで金型へエンドミルによる直彫り加工と、ドリルでエジェクターピンや冷却穴などの深穴加工ができるのも特徴だ。ワンマシン、ワンプロセスで加工ができるため、穴位置と寸法の精度向上や工程削減の効果が期待できる。

 また10月21〜24日には、ポートメッセ名古屋で開催される「メカトロテックジャパン2015」に出展。10月21日15時から出展者ワークショップを実施する。

スギノマシン

 スギノマシンのセルフィーダシリーズ「デュアル」は多軸ヘッドを搭載し、穴あけ・ネジ立てが可能。送り軸と回転軸に高出力サーボモーターを採用し、これまで複数台必要な高精度・高効率加工を1台で可能にした。

 同「メカトリックMSC」と「バリメックSSV2M」はプログラムコントローラー1台で最大3台の穴あけ動作の制御ができる。複雑な動作プログラムの作成は必要なく、タッチパネルで回転速度や送り速度など切削条件を入力するだけで、高精度穴あけ加工ができる。同社は多彩なドリリングユニットで生産向上に貢献している。

ダイニチ

 ダイニチは「Small Holes-a Great Future!」を合言葉に、小径ドリル加工の進化(深化)を追求している。小径穴あけによる未来への貢献を目指して、より一層の技術向上を図る。その第1弾が小径ドリルによる穴深さへの挑戦だ。直径0.1ミリ〜6ミリメートルの範囲内であれば径の100倍まで穴加工できる技術を確立した。

 この技術によって、これまではレーザーや放電加工でなければ難しかった穴あけ分野にも応用できる。熱影響が少なく精度や面粗度も高いレベルの穴加工が可能。各種ノズルやオリフィス(小孔)など小径の精密穴加工に威力を発揮する。

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