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業界展望台

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セルフメディケーション−自分自身で健康管理

9月25日(金曜日)付 日刊工業新聞 16面〜17面

 医療費を抑制するカギにも

 日本の総人口の26.0%は65歳以上の高齢者が占める。長生きを楽しみ、人生を全うするために自分自身で健康を守る「セルフメディケーション」に取り組み、健康を維持していかなければならない。またセルフメディケーションは医療費を抑制するカギであり、普及が促進されている。一般用(OTC)医薬品の活用、薬剤師・登録販売者への相談など、自らの判断と助言のバランスをうまくとることが将来の健康な生活へと生かされる。またセルフメディケーション推進税制の実現に向けた取り組みに注目が集まっている。

■薬に関する知識向上へ-薬剤師の重要性増す

 内閣府が6月12日に公表した「平成27年版高齢社会白書」によると、2014年10月1日現在の65歳以上の高齢者人口は、前年比110万人増の3300万人、総人口に占める割合は26.0%と過去最高を記録した。

 国立社会保障・人口問題研究所は高齢者人口は増加を続け、35年には3人に1人が高齢者になると推測する。

 医療費抑制課題や生活の質を高め豊かな人生を実現するためにもセルフメディケーションは重要になる。

 日本一般用医薬品連合会が発行するハンドブックによると「セルフメディケーション」とは、薬局や薬店で販売されているOTC医薬品を使い、軽度な身体の不調を自分で手当てして健康を管理すると定義している。日ごろからの健康管理により、健やかな生活を送れるようになる。自分自身だけでなく家族の健康管理にも積極的に関わることで、的確な薬を正しく使用するなどの知識が向上し、生活習慣病の予防や健康維持に役立つ。

 こうした正確な知識を持つためには、不明なことがあったら薬剤師や登録販売者などの専門知識を持つ人に確認することも必要だ。

 薬には医師が処方する医療用医薬品と薬局、薬店、ドラッグストアなどで市販されるOTC医薬品がある。

 「OTC」はオーバー・ザ・カウンターを意味する。OTC医薬品は薬剤師(国家資格を持った薬の専門家)または登録販売者(都道府県知事が資質認定した薬の専門家)を通さなければ購入できない。OTC医薬品の販売において、消費者への情報提供は薬剤師・登録販売者の責任。医薬品を選ぶ判断においても消費者の体質や症状、服用している医薬品などを聞き出し、適した医薬品を選ぶのが薬剤師、登録販売者の務めとなる。

■OTC医薬品-成分などで4区分

 OTC医薬品は含有する成分などにより、四つの区分に分けられる。

 要指導医薬品は販売に先立って薬剤師が対応し、消費者の提供する情報を聞くとともに、書面による当該医薬品に関する説明を行うことが原則とされる。

 第1類医薬品の販売は薬剤師に限られており、販売店では情報を提供する場所において対面で書面による情報提供が義務付けられている。

 これらの二つはすぐには手の届かない場所に陳列されている。

 第2類医薬品は薬剤師・登録販売者が扱え、情報提供は努力義務。かぜ薬や解熱剤、鎮痛剤など日常生活で必要性の高い製品が多い。

 第3類医薬品は副作用や相互作用などの項目で、第1類と第2類の医薬品に相当するもの以外の一般用医薬品。薬剤師や登録販売者からの情報提供は法律上の規定はない。

医薬品の分類

■健康寿命延伸へ−医薬品購入したら所得控除

 厚生労働省は「平成28年度 主な税制改正要望の概要」でセルフメディケーション推進のための一般用薬品等に関する所得控除制度の創設などの要望事項について発表した。

 セルフメディケーション推進の要となる一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設は日本OTC医薬品協会が、日本製薬団体連合会と日本一般用医薬品連合会の支援を得て、厚労省に要望書を提出。その後「平成28年度 主な税制改正要望の概要」の重点項目として位置付けられた。

 医療需要増大を抑制しつつ「国民の健康寿命が延伸する社会」を実現するためには、国民自らが自己の健康管理を進めるセルフメディケーションを推進することなどが重要とされる。一方で、現行の医療費控除制度は自己負担金が10万円を超えない場合には対象とならないため、要指導医薬品と一般用医薬品を用いてセルフメディケーションに取り組んでも医療費控除対象外となる場合がある。

 そのため、要指導医薬品と一般用医薬品の購入費用を対象とする所得控除制度創設を要望した。具体的には要指導医薬品と一般用医薬品を年間1万円以上購入した世帯に対して、その費用から1万円を差し引いた金額について最大10万円までを所得控除の対象とする内容となっている。ただし、同制度による控除と現行の医療費控除の両方の適用は不可。

 これにより、年末の税制改正に向けて政府内で調整が進められ、16年4月からの施行に向けて進み始めた。

 

OTC医薬品普及促進

東京・新宿駅でイベント

 日本一般用医薬品連合会(日本OTC医薬品協会・日本家庭薬協会)、東京薬事協会、東京生薬協会、東京都薬剤師会、東京都医薬品登録販売者協会の5団体は9月11、12日の両日、東京・新宿の新宿駅西口広場イベントコーナーでOTC医薬品普及啓発イベント「よく知って、正しく使おうOTC医薬品」を開催した。同イベントは8回目で、約3万人が来場。製薬会社など30社が出展し、自社が扱う製品を手に来場者に効能や使い方を説明した。

 イベントでは通勤や通学、ショッピングなどの途中で足を止め、各社のOTC医薬品について説明を受ける来場者の姿が多く見受けられた。また模擬薬店、検体測定や健康チェックなどのコーナー、お薬相談コーナー、薬の効き方などを紹介するイベントコーナー、クイズラリーなどを設置。飲み方や使い方の説明やOTCの販売方法を知ってもらう機会となった。

 模擬薬店は出展企業が配布する商品交換券をカウンターに並ぶ薬剤師や登録販売者に手渡すと、試供品・サンプルがもらえる仕組み。

 このほか「懐かしいくすり展」では、昭和初期からの薬やパッケージ、ポスターを紹介。

 来場者からは「薬局・薬店や宣伝で目にする医薬品以外にも多くの薬があることを知った。OTCという言葉も初めて知り勉強になった」という声や「友人に誘われイベントに参加。健康チェックコーナーなどに足を運び、健康について考えさせられた」と反響が大きかった。

 ゼリア新薬工業広報部の菅原真也部長は「来場者に医薬品の説明をさせていただくと高い反響がある。直接情報を発信できる場であり、生活に生かしてもらいたい」と感想を述べ、消費者との距離を縮めた。

 佐藤製薬学術部の森有美氏は「消費者の声が集まるイベント。私は2回目の参加となり、昨年と比べて新製品の情報や効能などが来場者に伝えられた。OTCやセルフメディケーションの普及に少しでも貢献したい」と語った。

 「OTC医薬品」という言葉の浸透に向けて関連団体によるこうした普及活動は、地道かつ着実にOTC医薬品を広める効果的な活動である。今後もOTC医薬品の役割や正しい知識、使い方などの提案に向けた取り組みは注目を集める。

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