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10月14日は「鉄道の日」
観光資源として地域活性化に期待

10月14日(水曜日)付 日刊工業新聞 16面

 10月14日は「鉄道の日」。1872年のこの日、新橋〜横浜間に日本初の鉄道が開通したことにちなんで、1994年に定められた。鉄道は車両、軌道、信号・管制、架線・電気設備など多くの要素が統合された巨大なシステム。輸送力や定時性、運行に伴う二酸化炭素(CO2)排出量が少ない環境適合性などに優れた公共交通機関として首都圏での輸送はもちろん、全国各地を結ぶ重要な交通インフラだ。最近ではユニークなコンセプトや豪華さで旅の楽しさを演出する観光列車が全国で運行され、人気を集めている。

省エネ・環境対応進む-最新技術の新車両導入

 鉄道各社では省エネルギーや保安システムなどで最新技術を投入した新型車両の導入が進んでいる。中でも2015年は生活に身近な通勤車両で、革新的な技術が投入された新型車両が、相次いで営業運転をスタートしている。

JR東日本が山手線に導入する「E235系」

JR東日本が山手線に導入する「E235系」

 JR東日本は新型通勤電車「E235系」の試作車となる量産先行車を3月に1編成(1編成11両)新造し、4月半ばから試験走行を開始した。試験走行は半年程度の予定で、間もなく、山手線の営業運転に投入する計画だ。

 E235系は主制御器に次世代のパワー半導体素子であるSiC(シリコンカーバイド)を採用して消費電力を削減。潤滑や冷却で使用するコンプレッサー油を不要としたオイルフリーコンプレッサー(電動空気圧縮機)を採用した。費用は1両約1億5000万円で、量産先行車をまず営業運転し、量産は4〜5年後の計画。

 E235系の最大のコンセプトは「環境負荷低減」。合わせて、車体強度向上や戸閉装置の改良、車両内外の情報ネットワーク強化など安全面でも機能向上を図った。JR東日本では、E235系を山手線だけでなく、首都圏の路線にも展開する計画だ。

 環境志向はJR九州の新型車両でも重要視されている。JR九州は2月に福岡と佐賀を走る筑肥線で、駆動用モーターに永久磁石同期電動機(PMSM)を採用した「305系通勤形直流電車」の営業運転を始めた。PMSMは熱損失が少ない高効率の駆動用モーター。PMSMの採用により、これまでの103系に比べ、消費電力量を半減させた。350系は日立製作所が6編成36両を製造。投資額は約57億円で、省エネルギー、環境配慮の点で、JR東日本のE235系と共通点がある。

 私鉄では西武鉄道が08年以来9年ぶりとなる新型通勤車両「40000系」の導入を発表した。導入は17年春で、20年にかけて80両・8編成を順次運転する。車両の製作は川崎重工業が手がける。

西武鉄道が新型通勤車両に新設した「パートナーゾーン」

西武鉄道が新型通勤車両に新設した「パートナーゾーン」

 40000系の一部編成にはクロスシートとロングシートを転換できる「ロング・クロスシート転換車両」を導入するほか、車いすの固定設備や軽く腰掛けられる座席を配置した「パートナーゾーン」を新設。シャープの「プラズマクラスター」を搭載するなど、快適性や利便性も追求した。

 またアルミ合金による軽量化やVVVFインバーター制御装置など、最新技術のモーターを採用。従来の省エネ車両に比べて、電気使用量を約40%削減するなど環境にも配慮している。

全国で観光列車-企画・デザイン 質高く

 JR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」をはじめ、全国的にユニークなコンセプトや豪華な観光列車が話題になっている。

JR九州の観光列車「或る列車」

JR九州の観光列車「或る列車」

 特に多くの観光列車を走らせているJR九州では、10作目となる「或(あ)る列車」が15年8月から運行を開始した。或る電車は1906年に当時の九州鉄道が米国のブリルに発注したものの、九州鉄道が国有化され活躍の機会がなかった幻の豪華列車。鉄道模型の大家である原信太郎氏が残していた模型から再現した。

 車両全体が金色で、フロント部分に金と黒の唐草模様をあしらい豪華さを演出している。外観や内装は、ななつ星も手がけた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏が設計、デザイン。スイーツ列車をコンセプトに車内では九州の食材を生かしたスイーツのコースを堪能できる。

 JR東日本でも15年4月からフルーツの生産が多い福島の魅力を生かしたスイーツ列車「フルーティアふくしま」を運行している。フルーティアふくしまは”走るカフェ“がコンセプト。磐越西線の景色を楽しみながら福島の旬のフルーツを使ったオリジナルスイーツを食べられる。こうした沿線の食材を生かしたこだわりの“食”と景色をゆっくり堪能できるのは観光列車の魅力の一つだ。

観光列車「花嫁のれん」

観光列車「花嫁のれん」

 北陸新幹線開業で注目が高まる北陸では、15年10月3日から七尾線で観光列車「花嫁のれん」、10日から城端・氷見線で「ベル・モンターニュ・エ・メール(愛称・べるもんた)」の運行を始めた。運行はJRグループ6社が10〜12月までの3カ月間、富山県、石川県、福井県の北陸三県で観光資源をPRする「北陸デスティネーションキャンペーン」の一環。

 また北陸新幹線開業前の15年1月にも観光資源を作り出すことを目的に、富山地方鉄道が水戸岡氏デザインの市電「レトロ電車」を運行開始している。

 一方、北陸新幹線に並行して長野県内を走る在来線を運行するしなの鉄道「ろくもん」も水戸岡氏がデザイン。首都圏からの観光客が沿線の軽井沢などを通過して北陸に吸い込まれてしまうことを懸念し、14年7月から運行を始めた。低予算ながら水戸岡氏がななつ星の職人を呼び集めるなどし、質の高さを堅持している。

JR西日本「トワイライトエクスプレス瑞風」

JR西日本「トワイライトエクスプレス瑞風」

 そして17年には、JR東日本で「トランスイート四季島」、JR西日本で「トワイライトエクスプレス瑞風」の豪華寝台列車がそれぞれ運行を開始する予定だ。ななつ星と同様、クルーズ客船のように高級感ある客室やダイニングルーム、展望室などを備え、数日間かけて観光地を巡る。

 トランスイート四季島をデザインするのは秋田新幹線「E6系」や八戸線のレストラン列車「東北エモーション」などを手がけてきた工業デザイナーの奥山清行氏。トワイライトエクスプレス瑞風は建築家の浦一也氏や日産自動車出身で東海道新幹線「N700系」などを手がけた工業デザイナーの福田哲夫氏らがデザインする。

JR九州「ななつ星」

JR九州「ななつ星」

 10月15日で開業2周年を迎えるななつ星が、予約が取れないほどの人気を維持していることもあり、豪華寝台列車の相次ぐ導入には注目が集まる。

 全国ではこの他にもさまざまな工夫を凝らした観光列車が走っている。16年3月には北海道新幹線も開業予定で、全国各地への鉄道でのアクセスがより便利になる。豪華寝台列車の旅で沿線の観光スポットを巡ったり、新幹線で目的の観光列車に向かったり、いろいろな鉄道の旅がアレンジできる。観光列車は沿線の観光資源として、地域の活性化も期待される。

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