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地球にやさしく低コスト 土壌浄化・修復技術

10月16日(金曜日)付 日刊工業新聞 12面

 揮発性有機化合物(VOC)や重金属などが土壌に漏れ出る土壌汚染は、周辺環境や人の健康に被害を及ぼす。今後数年間で予定されている東京五輪やリニアモーター中央新幹線の開通などの大規模な工事によって関東・中部地方では1億2500万トン超えの残土が発生すると予想される。大量に発生する残土の一部にみられる自然由来重金属含有土壌の処理や再利用、運搬などさまざまな課題が立ちはだかる。

■大量・適正処理目指して-重金属汚染処理に新工法

 2003年に施行された土壌汚染対策法(土対法)は、事業所廃止時の土壌調査を義務づけ、指定基準を超える有害物質が検出された場合には指定区域にして対策を求めた。 土対法施行後、同法に基づかない土壌汚染の発見増加や汚染土壌の不適正処理などの課題が明らかとなり、10年には大幅に改正された。自然由来重金属の汚染が同法の対象に含まれたほか、調査義務が3000平方メートル以上の土地形質変更時になるなど、同法の及ぶ範囲が広がった。近年では適正処理に加えて、低コストで環境への負荷が少ない現地処理などの手法が求められる。 

 DOWAエコシステムの100%子会社で、土壌汚染対策法上の汚染土壌処理許可施設であるエコシステム花岡は15年4月、DOWAエコシステムが開発したDME工法を導入した処理施設を新たに建設し「抽出―磁力選別」として許可更新した。

 同工法は自然由来重金属汚染土壌をターゲットに開発された技術(DOWAエコシステム特許工法)で、特殊な鉄粉を重金属汚染土壌に加水せずに混合し、土壌中の重金属を鉄粉に吸着させた後、この鉄粉を磁石で回収して、きれいな土壌を得る処理法だ。用水や排水がほとんど必要ないため、環境にもやさしい。

 エコシステム花岡に建設した処理施設の処理能力は1ヘクタール当たり100トンで15年5月から本格稼働し、処理実績を積み重ねている。

 DOWAエコシステムではエコシステム花岡での処理実績や得られたノウハウを展開し、自然由来汚染土壌が発生する現場の近くに同様の施設を建設して、これら土壌を処理する「現地処理」への適用も視野に入れて開始している。大量に発生した土壌の輸送における課題も解決され、処理費のコストダウンも見込まれる。

 DOWAエコシステムが幹事会社を務める日本汚染土壌処理業協会の会員各社にもDME工法のノウハウ提供を行うとしており、大量発生が見込まれる自然由来汚染土壌への課題解決の一手として期待される。

■開発につれ汚染土壌増加-産学連携で浄化研究進む

 近年、インフラ整備などの開発工事が急ピッチで進められる中、ヒ素(As)をはじめとする自然由来の重金属による汚染土壌の大量発生が見込まれており、対応が課題となっている。

 日本汚染土壌処理業協会では、従来の汚染土壌年間発生量約280万トンに加え、今後10年間の自然由来重金属汚染土壌の発生量は最盛期年約400万トンと予測。処理すべき年間の汚染土壌量が従来の2倍以上に膨らむと見積もっている。同協会はこれらの処理に現在稼働している処理施設の2倍の稼働率が必要と推定している。しかしプラントのメンテナンスや設備の増強、人員増加の必要性などさまざまな要因から実現は困難とされる。同協会では適正な処理を行うよう発注者や施行者、処理業者が一体となって事業を進めていく必要性から処理施設の稼働状況などの情報提供を積極的に行っていく方針だ。

 このほか浄化技術の分野では、産学連携による取り組みも進められている。東京都市大学は、大和リース、大和ハウス工業、フジタ、JFEエンジニアリング、JFEテクノリサーチ、環テックス、石勝エクステリアの7社と植物による土壌浄化の研究会を発足した。植物の土壌浄化を工場跡地などで実用化する目的。まずは埋め立てにより開発された臨海部を中心に、植物の土壌浄化能力を調査・研究して実効性を検証する。

 代表者は東京都市大学環境学部環境創生学科の涌井史郎教授。事務局は東京都市大学環境創生学科涌井研究室と同学研究推進部産学官連携センター。15年1月23日に東京都市大学と大和リースで共同研究を開始。有害物質の吸収・蓄積・分解など多様な機能を持つ植物の機能を利用して、汚染された土壌や水質を修復・浄化する研究を行ってきた。今回の研究会発足で、研究の成果を実際に企業が持つ工場跡地などで実験できる。

処理施設の内訳

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