「環境賞」は公害問題の解決が叫ばれていた昭和49年に創設されました。この間、環境保全や環境の質の向上に貢献すべく、時代の要請に応える優れた取り組みを表彰してまいりました。そして今、温暖化、資源の枯渇、生物種の絶滅など地球環境問題は深刻さを増し、身近な生活環境も悪化を続けています。こうしたなか、環境を守り、未来につなげる調査、研究、技術・製品開発、実践活動を広く募集し、画期的な成果をあげた個人、法人、団体・グループ等に環境大臣賞等を授与しています。

新着情報

2017.06.21 平成29年度「環境賞」贈賞式を開きました。
2017.05.25 平成29年度「環境賞」受賞者発表!
2017.01.06 平成29年度「環境賞」の応募受付を終了しました。
2016.11.01 平成29年度「環境賞」の応募受付を開始しました。
2016.06.28 平成28年度「環境賞」贈賞式を開きました。
2015.12.25 平成28年度「環境賞」の応募受付を終了しました。

平成29年度「環境賞」贈賞式

 平成29年度の贈賞式が6月8日、東京・霞が関の霞山会館で開かれた。「環境大臣賞」に輝いたエコサイクルの「バイオ浄化剤による土壌地下水汚染対策技術」などの計5件を表彰した。44回目を迎えた今回は43件の応募があり、厳正な審査の結果、土壌地下水汚染対策や大気汚染対策、業界に先駆けて開発した環境配慮型の技術・製品などが選ばれた。来賓の関芳弘環境副大臣は「いずれも時代の要請に合致した環境賞にふさわしいものだった」とした上で、「今、わが国は人口減少という歴史的な転換期を迎えている。大量消費と大量廃棄を前提とした従来の経済・社会の仕組みを環境の面から持続可能で活力のある形に転換していくことが喫緊の課題になっている。環境問題の解決に向け、環境に関する研究・技術開発が今後一層重要になる。多くの方々がこの分野に加わって挑戦してほしい」と強調した。受賞者は表彰状と記念盾を手にして誇らしげに胸を張っていた。

ごあいさつ

国立研究開発法人 国立環境研究所 理事長  渡辺 知保
住明正写真

 平成29年度「環境賞」を受賞された皆様、誠におめでとうございます。
 環境賞はさまざまな分野で環境保全に関する調査、研究、開発、実践活動等に積極的に取り組み、成果をあげておられる方々の活動を表彰し、それらの方々の活動を幅広く紹介することにより、環境に対する社会的関心を高めるために設けられた賞です。
 国立環境研究所は、幅広い環境研究に学際的かつ総合的に取り組む我が国唯一の研究所であり、1974年の発足以来、様々な環境問題の解決に資する重要な役割を果たしてきました。環境問題への対応は行政や研究機関のみならず、幅広く、国民や企業などの様々なステークホルダーに関係する重要な課題であるとの認識から、昨年度からは日刊工業新聞社とともに環境賞を主催させていただいています。
 本年度は、43件の応募作の中から環境大臣賞1件、優秀賞2件、優良賞2件を表彰することとなりました。環境大臣賞に輝いたエコサイクル(東京都中央区)の「バイオ浄化剤による土壌地下水汚染対策技術」をはじめ、その他の受賞作も関連企業、大学などの多くの関係者の連携・協力の賜物であり、環境問題の解決には多くの関係者の連携が重要であるとあらためて認識し、受賞者各位の日頃の真摯な取り組みに対して敬意を表します。また、惜しくも受賞を逃された応募課題の中にも環境問題の解決に貢献する課題が多々含まれており、来年度以降も多くの方々に応募していただくことを期待します。
 大塚柳太郎審査委員長をはじめ、審査委員各位、環境賞を支えていただいている皆様方に深く感謝するとともに、環境賞がわが国の環境保全活動の発展に寄与することを期待し、また私どもとしても、環境研究の推進や社会との橋渡しに努め、持続可能な社会づくりに皆様と手を携えて取り組んで参りますことを申し上げ、ごあいさつとします。

 

日刊工業新聞社社長  井水 治博
井水治博写真

 平成29年度「環境賞」を受賞された皆様、誠におめでとうございます。
 本賞は公害問題の解決が叫ばれていた1974(昭和49)年に創設され、以来、国内外の環境問題と歩みを一にしてまいりました。この間、環境保全や環境の質の向上への貢献が認められる技術開発、調査研究、実践活動などを毎年表彰し、すでに44回を数えます。
 おかげさまで、今日、環境分野の数ある表彰制度の中でも、歴史と権威を兼ね備えた賞として高い評価をいただいております。ひとえに、後援をいただきました環境省をはじめ、関係各位のご支援、ご協力の賜と厚く御礼申し上げます。
 本年度は温室効果ガス排出削減、大気・水・土壌汚染対策、省エネルギー化などの様々な取り組みに関する43件の応募がありました。いずれも優れた成果であり、審査は困難を極めましたが、独創性、将来性、有効性、経済性などを総合的に評価し、環境大臣賞、優秀賞、優良賞の計5件を決定しました。受賞者の皆様の意欲的かつ真摯な取り組みに敬意を表するとともに、審査にあたられました大塚柳太郎審査委員長をはじめとする諸先生方のご尽力に感謝申し上げます。
 昨年11月、地球温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」が発効し、温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標が掲げられました。温暖化のみならず、資源枯渇、野生生物種の減少、海洋汚染、森林減少などが大きな課題になっています。受賞者の皆様には、これらの課題を解決する先頭に立っていただけますよう、ますますのご活躍を期待いたします。
 日刊工業新聞社は産業の総合情報機関として、持続可能な社会の形成に資する情報発信に日々努めてまいります。本賞にあたりましては共催の国立環境研究所とともに一層の充実に力を注ぎ、環境保全と環境の質の向上、そして我が国産業の発展にいささかなりとも寄与できればと考えています。皆様の変わらぬご指導、ご支援をお願い申し上げ、ごあいさつとさせていただきます。

平成29年度「環境賞」受賞者

【環境大臣賞】

「バイオ浄化剤による土壌地下水汚染対策技術」
  エコサイクル株式会社
  エコサイクル株式会社
  エコサイクル株式会社
  エコサイクル株式会社
シュリハリ・チャンドラガトギ
前田 信吾
プチャラパリ・スリニワスル・レッディ
冨士田 浩二
土壌地下水汚染の浄化は掘削除去や揚水処理が主流だが、高コストや長期化が課題だった。揮発性有機化合物(VOC)浄化剤「EDC」により、微生物によるバイオ工法の低コストの利点を生かしつつ、高速分解・高濃度汚染への対応を実現した。掘削除去に比べて3分の1から5分の1以下の低コストで、半年から1年程度の短工期で浄化できる。簡易設備のため中小企業でも採用しやすく、製造工程への影響がない。また短工期のため土地利用計画の時間的制約に対応できる。VOCのほか、ベンゼン類、シアン化合物やジオキサンなどの各種汚染物質に対応する製品をラインアップ。国内外で計400件以上の採用実績を積み上げている。

【優秀賞】

「バチルス菌と磁気分離による排水処理」
  富士電機株式会社
  富士電機株式会社
  富士電機株式会社
  宇都宮大学
佐藤 匡則
中田 栄寿
花井 洋輔
酒井 保藏
食品・飲料分野などの産業排水処理で発生する有機性汚泥の排出をゼロにする「バチルス菌と磁気分離による排水処理技術」(汚泥レス排水処理システム)を開発した。宇都宮大学の「磁化活性汚泥法」と富士電機の「汚泥分解酵素を多量に分泌する生物処理」(特定バチルス菌+専用活性剤)を組み合わせた。余剰汚泥の処分費用とエネルギー消費を削減し、一酸化二窒素(N2O)などの温室効果ガスの発生も抑制できる。
 

 「電磁開閉器のカドミウムフリー化」

  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機株式会社
  三菱電機エンジニアリング株式会社
堀田 克輝
稲口 隆
千葉原 宏幸
松本 紀久
竹本 智彦
河合 秀泰
八木 哲也
牧野 智史
電磁開閉器の電気接点には、電流遮断時に発生するアーク放電を遮断する性能に優れた銀酸化カドミウムが用いられてきた。アーク放電を減衰させるアークランナーと呼ばれる部品を改良し、アーク放電減衰能力を従来品に比べて20%以上向上してカドミウムフリー化した。またアーク放電によるホットガスを排気する独自機構を開発し、冷却能力を同7倍に向上して業界最小クラスの小型化を実現した。

【優良賞】

「飛来粒子観測網の構築と予測モデルの開発」
黄砂ライダーネットワークグループ
(メンバー)
  国立環境研究所
  国立環境研究所
  国立環境研究所
  国立環境研究所
  国立環境研究所
  九州大学
  九州大学
  九州大学
  柴田科学株式会社
  柴田科学株式会社
  柴田科学株式会社
  富山県環境科学センター
  長崎県環境保健研究センター
  島根県保健環境科学研究所
  日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター


杉本 伸夫
松井 一郎
清水 厚
西澤 智明
神 慶孝
鵜野 伊津志
原 由香里
弓本 桂也
柴田 眞利
榎本 孝紀
板谷 庸平
大気浮遊粒子状物質を監視するため、東アジアの約20地点にライダー(レーザーレーダー)を設置し、観測網を構築した。可視と赤外の2波長と偏光特性で、非球形粒子の黄砂とほぼ球形の大気汚染粒子のそれぞれの高度分布を計測する。日本に飛来する黄砂や大気汚染粒子を逃さずリアルタイムで監視できる。また化学輸送モデルによる飛来予測システムも開発。発生源や発生量の正確な解析につながる。
 

 「微量PCB含有廃電気機器を現場で無害化する加熱洗浄装置」

  柴田科学株式会社
  柴田科学株式会社
  柴田科学株式会社
  柴田科学株式会社
  電力中央研究所
柴田 眞利
牧野 宗夫
大山 雅嗣
寺門 真吾
大村 直也
変圧器の絶縁油などに用いられていたポリ塩化ビフェニール(PCB)を設置場所で除去できる可搬型の加熱強制循環洗浄装置を、電力中央研究所と共同開発した。機器っっっっsの絶縁油を抜き取った後に洗浄油を注油し、加熱しながら循環させて内部部材などに含浸したPCBを洗い出す。大型の汚染機器の解体、運搬時などのPCB拡散を防止できる。現在、全国23カ所での活用が国に申請されている。
 

ごあいさつ

審査委員長  大塚 柳太郎
合志陽一写真

 環境は人類の生存基盤そのものであり、持続可能な形で将来世代に引き継いでいかなければなりません。環境問題が多様化・複雑化する中で、人びとの健康や社会経済に与える影響が深刻さを増し、 温暖化に代表されるように地球システムの恒常性さえも危険にさらされる可能性が高まっています。私たちに課せられているのは、未来を見据え、環境負荷を低減し、より良い環境を創り出すことです。
 「環境賞」は1974(昭和49)年に創設以来、環境保全に顕著な成果を上げた技術開発や調査研究、実践活動を毎年表彰してまいりました。社会に警鐘を鳴らし、解決手段を提示するうえで、本賞が果たしてきた役割は小さくなかったと思います。私自身は、長年にわたり審査にかかわってまいりましたが、審査委員長としては今回が初めてであり、すべての審査委員とともに気持ちを新たに取り組んでまいりました。
 第44回にあたる今回は43件の応募があり、その内容は、低炭素社会、循環型社会、大気・水・土壌、エネルギー、生物多様性など多様なジャンルに及びました。これらについて、独創性、将来性、有効性、経済性の観点を重視するとともに、先駆性・先見性にも配慮しながら、ヒアリング審査を含め公正・厳正に審査を行い、環境大臣賞1件、優秀賞2件、優良賞2件を決定いたしました。
 環境大臣賞に輝いたエコサイクル(東京都中央区)の「バイオ浄化剤による土壌地下水汚染対策技術」は、微生物の働きで汚染物質を分解する、バイオレメディエーション(生物学的環境修復)と呼ばれる手法を用いたものです。この種のバイオ工法は、掘削除去工法や揚水工法に比べ経済性に優れる半面、汚染物質の分解に時間がかかることや、現場ごとに微生物の活性化にバラつきのあることが、 普及の妨げになっておりました。受賞対象になった手法は、独自成分のバイオ浄化剤を開発し、これを地中に注入することで微生物の増殖と活性化を促進し、揮発性有機化合物(VOC)や六価クロムな どによる汚染土壌・地下水を原位置で素早く浄化処理することに成功しています。稼働中の工場を含む様々な現場を対象に、すでに400件超の実績を積み重ね、近年ではアジア諸国をはじめ海外における土壌汚染対策等にも用いられており、国内外でのさらなる普及が期待されます。
 優秀賞は2件です。富士電機と宇都宮大学・酒井保蔵准教授による「バチルス菌と磁気分離による排水処理」は、余剰汚泥の発生をゼロにする斬新なシステムです。汚泥の固液分離を磁力で強制的に行うことにより、従来の重力沈降法に比べ処理槽内の汚泥を高濃度に保つ一方、バチルス菌が汚泥分解酵素を大量に分泌します。このシステムに、汚泥の生成量と分解量がバランスするようバチルス菌を投入することにより、汚泥の減容率100%を実現したもので、産業廃棄物としての処分費用がほぼ不要になるなどの優位性が高く評価されました。三菱電機の「電磁開閉器のカドミウムフリー化」は、接点材質にカドミウムを使用しない装置の開発に成功したものです。電流をOFFした瞬間に発生するアーク放電を効率良く制御する技術を開発し、 これまでの銀酸化カドミウムと同等以上のアーク放電抑制能力を確保しました。同社は、国内の電磁開閉器の40%超のトップシェアを持ち、年間生産数が360万台以上に達することから、「カドミウムフリー化」により、日本で年間に使用されるカドミウムの総量の約14%に相当する0.6トンの削減をもたらすと期待されます。
 優良賞も2件です。黄砂ライダーネットワークグループ(国立環境研究所、九州大学、柴田科学<埼玉県草加市>、富山県環境科学センター、長崎県環境保健研究センター、島根県保健環境科学研究所、日本環境衛生センターアジア大気汚染研究センター)の「飛来粒子観測網の構築と予測モデルの開発」は、黄砂と黄砂以外の大気汚染物質を区別しリアルタイムで観測することに成功し、日中韓モンゴル 4カ国にまたがる観測ネットワークを構築したもので、黄砂現象の解明と高精度の飛来予測への先駆的な貢献が認められます。さらに、このネットワークで得られたデータが、黄砂による呼吸器疾患や小児喘息の発症にかかわる疫学研究に利用されていることも評価されました。柴田科学(埼玉県草加市)と電力中央研究所の「微量PCB含有廃電気機器を現場で無害化する加熱洗浄装置」は、移動困難な大型の汚染機器を解体することなく、設置場所でPCB(ポリ塩化ビフェニー ル)を除去する可搬型の装置です。廃電気機器からPCB汚染油を抜き取った後、注油した洗浄油を加熱循環させ、機器内部に含浸したPCBを洗い出します。低濃度PCB廃棄物は、法令により平成39年度までに処理すると定められていることからも、広範な活用が期待されます。
 以上、入賞は5件ですが、惜しくも入賞に至らなかった提案の中には、今後の工夫・改善あるいは実績を積み上げることにより、入賞に値するものがいくつもありました。多くの団体・企業から意欲的な技術開発や環境保全の実践に基づく応募があったことに、審査員一同が意を強くしたことを報告し、審査概評といたします。

審査委員会

審査委員長 大塚 柳太郎 (自然環境研究センター理事長、東京大学名誉教授)
審査委員 奥主 喜美 (環境省総合環境政策局長)
  住 明正 (国立環境研究所理事長)
  松野 建一 (日本工業大学教授・工業技術博物館長)
  本川 達雄 (東京工業大学名誉教授)
  安河内 朗 (九州大学大学院芸術工学研究院長)
  新藤 純子 (山梨大学教授)
  長谷川 裕夫 (産業技術総合研究所関西センター所長)
  黒岡 博明 (日刊工業新聞社執行役員日刊工業産業研究所長)
専門審査委員 太田 志津子 (環境省総合環境政策局総務課環境研究技術室長)
  榑林 茂夫 (国立環境研究所企画部長)
    ※平成29年3月末時点