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地域応援隊

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モノづくり産業の集積地 東京・多摩地区

5月30日(水曜日)付 日刊工業新聞 19面〜21面 地域特集から


 

インタビュー/首都圏産業活性化協会事務局長 岡崎英人氏

「中小企業の海外展開を支援」

 東京・多摩地域では研究開発型の中小企業も海外展開を加速させている。これまではメーカーも加工業も日本本社へ営業すれば、日系企業の海外拠点に製品や技術が採用されていた。だが大企業では調達の決定権が現地法人に移され、現地企業の開拓も課題として残っている。海外に営業圏をいかに確保するか、首都圏産業活性化協会(TAMA協会、東京都八王子市、古川勇二会長)では、その第一歩として現地企業との連携を推奨する。岡崎英人事務局長に聞いた。(小寺貴之)

現地企業と連携推奨−台湾経由で中国市場開拓

―多摩地域の中小企業の海外展開動向は。

「これまではコスト競争の中で部材の調達先や生産拠点を海外に求める企業が中心だったが、現在は海外から仕事をとるために販路開拓や市場調査したいという要望が強い。製品スペックや技術レベル、加工単価など、現地のニーズをつかむには現地に根ざした事業者との連携が最も早い。海外拠点を持っていても、生産で手いっぱいだと営業力が育たず、販路をもつ現地企業などとの連携が必要になってくる」

―どんな連携ニーズがありますか。

多摩地域の高い技術力を受け入れてもらう工夫を…と岡崎さん

多摩地域の高い技術力を受け入れてもらう工夫を…と岡崎さん

「多摩地域は大企業の研究や開発を担ってきた中小企業が多く、高い技術力を持ちニッチトップを占める企業も多い。こうした企業は海外でもミドルクラスの企業から求められている。新興国の企業もある程度、技術力がついて人件費も上がってくると下から追い上げられる立場になる。だが難しい技術領域や高付加価値市場は日本や欧米企業が強い。上下から挟まれながら付加価値を高める方向に進むには、研究開発型の中小企業との連携が欠かせない」

―技術流出が懸念されます。

「すべての企業ではないが新興国にも技術をただ盗むだけでは長続きしないと考える現地企業は増えている。そうした企業とはパートナーとして住み分けができる。新興国企業が技術を理解し、自力で開発を継続するには人材の受け皿がないと難しい。企業規模によるが優秀な技術者を抱え、育てることは現地企業にとっても体力の要ることだ。もちろん日本企業はノウハウをブラックボックスにしたり、何重もの特許で守るなどの対策は必要だ。まねされても対処できる製品や技術から展開していくことが望ましい。言葉では簡単だが、問題はどうやってそのような現地企業に出会い、信頼関係を築いていくかだ」

―具体的には。

「2012年度は台湾を経由した中国市場開拓支援に力を入れようと考えている。従来の台湾工業技術研究院(ITRI)や、新たに台湾の金属工業発展研究センター(MIRDC)と協力連携を深化させて行きたい。ITRIは日本の産業技術総合研究所(産総研)に相当しエレクトロニクス業界に強く、MIRDCは金属加工と関連業界に強い。台湾政府は日本企業との連携に力を入れる方針で、施策の実施機関になっていくだろう。すでに医療機器用のトランスメーカーに連携先を紹介し、業務提携に発展するなど具体案件が走っている」

―台湾企業と連携するメリットは。

「なにより中国市場に明るい点だ。中国各地に販売拠点を設け、人脈のネットワークも持っている。意思決定の素早さも日本企業のスピード感を補ってくれるだろう。台湾で生産する場合も台湾と中国が結んだ両岸経済協力枠組協定(ECFA)により13年までに工業産品の539品目の関税が0%になる。また東南アジア諸国連合(ASEAN)に目を向けるためにも台湾経営者のネットワークは有用だ。すでにASEANを生産拠点として中国市場に供給するなど、国際分業のハブの役割を果たしている。この流れに乗って、パートナーシップを狙っていきたい」

―研究開発型企業の連携の場合、幅広い技術に明るくないと、まともに評価できません。

「支援機関としては技術を正しく評価できる現地企業をどのように見つけるかが鍵になる。台湾は研究開発に踏み込む企業も増えており素地はあるが簡単ではない。そこで台北にある台湾事務所の技術顧問を増やす予定だ。MIRDCの顧問を務め、その人脈はとても重要になる。支援機関にとっても現地の支援パートナーが支援の質を決める」

「調達先として日本企業が台湾を活用してきた歴史は永い。要素技術まで踏み込んだ公的な企業支援は後発といえる。ただ台湾の企業支援機関は力を付け、海外展開にたけた日系中小企業も増えてきている。経験やノウハウを持ち寄って護送船団方式で進出したり、現地工場の軒先を借りて、小さいスケールで生産を始めて、受注に応じて順次生産体制を拡大したりと選択肢は広がった。後発のメリットを最大限に発揮しなければならない。日本企業は技術力は高いが、技術力だけでは売れず苦しんできた。高い技術を現地企業に受け入れてもらう工夫をし、ウィン―ウィンの連携モデルを作っていきたい」


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