「発明研究奨励金」をいただき、防音材分野で吸音性能および遮音性能を研究
私の発明は、サンドイッチ構造による防音パネルと、その製造方法にあります。科学の世界では、発明は「材料あるいは反応条件の工夫」から生まれることが多くあります。私が選択した材料は、誰もが知っている「生け花用の剣山」です。この材料は硬質フェノールフォームという合成樹脂の発泡体で「軽い、燃えない、吸音に適した多孔材」の長所がある反面、「脆い、水を吸う」という短所から、工業材料には不向きとされてきました。
発明では、短所の解決手段を見出すことが重要です。材料の「脆さ」については、ハニカム材の空間に押し込むことを試みました。やってみるとフォームが壊れず、抵抗なく充填できたのです。次の「吸水性」は、水溶性接着剤の硬化を促進させる「水分吸収剤」として逆利用し、この技術は平成18年5月に特許登録されました。特許登録されても、その価値が世間に認められることが重要で、そのための資金を模索していた時に目に入ったのが、日刊工業新聞に掲載されていた同協会の「発明研究奨励金」の案内でした。早速応募し、交付していただきました。
商品は完成しても、それをカタログ等に載せるだけでは売れません。しかし、突然にその機会が訪れました。東日本大震災の仮設住宅で、騒音の苦情があることを新聞で知り、防音材量を無償で提供したところ、騒音が解消され、新聞で報じられました。また震災の翌年4月に「夢の扉(TBS)」で放映され、技術と製品が一気に世に知られることになりました。
社内の後継者も育ち、昨年には大量受注にも対応できる本格的な製造工場を所有することができました。賞を汚すことなく精進し、副賞は更なる技術開発に使わせていただきます。
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