地域応援隊
埼玉西部地区ビジネスセミナー
日本的モノづくりを極める 埼玉西部地区の企業
9月26日(水曜日)付 日刊工業新聞 19面〜21面 地域特集から
- 基調講演 工場現場にみる日本のモノづくり「カイゼン」の強み
PEC産業教育センター所長 山田 日登志氏 - ビジネスセミナー 世界に羽ばたく日本の菓子機器メーカー
マスダック社長 増田 文治氏 - メッセージ 川越商工会議所会頭 大久保 敏三氏「地域活性化に全力」
<出稿企業一覧>
埼玉西部地域はユニークな中小製造業が活躍するモノづくりの発信基地だ。世界最高峰のデバイス技術、機械、素材、加工技術など、国内産業の裾野を支える優れた技術がめじろ押しだ。皆、国内でのモノづくりに「飽くなきこだわり」を持つが、同時に円高対策として海外にも続々と橋頭堡(ほ)としての拠点を構えつつある。混沌(こんとん)の時代に挑む各社の動向を追った。(順不同)
高精度温度計測器を多数台受注
ネツシンは、世界最小クラスのフィルム型白金測温抵抗体感温部(素子)の製造・販売を手がける。同サイズは幅1.5ミリ×長さ2ミリ×厚さ0.3ミリメートル、抵抗値は100オーム。欧米の競合品と比べても圧倒的な省スペースが特徴。半導体の製造プロセスにおけるチップ表面温度測定などに向く。
同素子技術を生かした温度計測器「NX-3100」を自社製品としてラインアップ。従来型に比べ「高速・高精度・多点同時計測」に優れ、温度0度〜50度C条件下においてプラスマイナス3ミリケルビン、表示分解能0.1ミリケルビンを実現。このほど、新たに多数台の受注を獲得した。
欧州展で蒸し菓子機を初展示
マスダックは、16日から独ミュンヘンで開かれた世界最大の製パン・製菓機材展ibaに通算4度目の出展を行った。これまでの展示ではアンコをチョコクリームなど欧風にかえたどら焼き機「サンドイッチ・パンケーキマシン」で話題を呼んだ。
今回は、同機種に加え動物をかたどった人形焼き製造機も実演。さらに、自慢の蒸し機「ファインアップスチーマー」を初展示し注目を集めた。「欧米ではなじみが薄い蒸し菓子を低カロリー性で広めたい」と、欧州での新たなブームを予感している。
海底津波観測網向け銅合金筐体
三芳合金工業は戦前から銅合金製品を手がけて来た。少量多品種品に強みを持つ。
航空機向けランディングギア用交換部品(写真)において国内で大きなシェアを握る。11-16日に開催されたベルリンエアショーにも出展。活発な商談を展開した。このところ業績は順調だが、特に発電所特需による軸受関連部品などが活況。また、近く太平洋沖に設置が計画されている、津波予知のための海底観測網用光ケーブル向け銅合金筐体を受注しており、目下、同フル生産が続く。
アクチュエーター増産投資へ
新電元メカトロニクスはアクチュエーターの専門メーカー。一般産業機械から自動車、建設機械、特殊車両など幅広い分野で使われており、独自の生産設備に強みを持つ。
最近、新製品として一般産業機械向けロックユニットおよび超小型自己保持ソレノイド油圧機器市場向けソレノイドバルブを市場投入した。建機向けなど好調な需要を受け、増産体制の整備を急いでいる。
機械式暗号キーで圧倒的な実績
長沢製作所は、機械式の暗号錠「キーレックス=写真」でその名を知られる。同30数種類をラインアップ。国内ほかイギリスやフランス向け輸出でも売り上げを伸ばしてきた。適用分野は病院の医薬倉庫や学校、警察の取調室、介護施設などセキュリティ需要に応じて幅広く、大手建材メーカーがドア向けにも採用。昭和60年には埼玉工業技術大賞を受賞した。
亜鉛ダイカストから、研磨、めっき、塗装、組み立てまで自社内で一貫生産を行う。10月に、ドア据え付け式キーレックスの外側だけ(通常は内外)バージョンを発売の予定。
木材の金属代替部品を積極開発
モリヤは住宅向けに据え付け家具を製造販売する。「二酸化炭素(CO2)排出削減のためにも成長の止まった成木を加工利用し、新木をどんどん育てなければならない」というのが持論。
板にアルミを張ってトラックの内装部材とするなど、木の金属代替素材としての用途拡大に力を注ぐ。高齢技術者の雇用にも積極的。「会社は永続し、地域に雇用の場を残すべきだ」という考えだ。
深絞り加工に90年取り組む
吉野プレス工場は、大正12年の創業以来、深絞りの量産に取り組んできた。500トン-200トン大型タンデムプレス機バリエーションを保有、燃料タンク・自動車部品・医療機器などの加工を手がける。高張力鋼板のプレス加工にも対応。09年11月にはデンソーの抵抗溶接認証を取得した。
離型剤で米紙の最優秀技術賞受賞
青木科学研究所は、ダイカスト金型向け油性離型剤の製造販売を手がける。400度Cの高温でも油膜が形成でき、水溶性に比べ使用量が1000分の1程度で済み、廃液も出ない優れた特性を持つ。6月には、米国で創刊130年の金属業界紙から2012年アルミニウム分野最優秀技術・工程賞(写真)を獲得した。
国内外の大手ダイカストメーカーや自動車メーカーが相次いで採用。増産体制整備を急いでおり、美里工場に増設中の第2工場を11月に稼働する。シンガポールへの工場進出も決めている。
ユーチューブ閲覧累計450万件へ
大槇精機は、同時5軸マシニングセンター6台を保有。大手メーカーをはじめ、各方面からの難加工依頼に取り組む。先だっては、得意先大手メーカーの取引先の中(300―400社中)で5社ぐらいしかもらえない「優良企業賞」を受賞した。納期厳守のこだわりが優れた持ち味だ。
アルミ無垢(むく)材から削り出した複雑形状のヘルメットやギター、馬のエンブレムなどの難形状加工品サンプル作りに積極的に挑む。加工映像をラインアップしたユーチューブへの累計閲覧数は450万件に及ぶ勢いだ。現場スタッフ20人はほとんどが一級技能士の資格保有。
ホンダ寄居工場中圧管ループ化
武州ガスでは、ホンダの寄居工場の本格稼働を控え、中圧管網の整備を急ぐ。現在は、ホンダ寄居工場まで一方向で中圧ガス管を敷き設済み。今後、リスク分散のためループ化する計画だ。
このほか、ユーザーにとって行政による環境関連の補助金が受けられるガスコジェネレーションやガス空調事業での引き合いが活発だ。
レーザー機更新など設備増強
野火止製作所はレーザー加工と精密板金を軸とする金属加工(写真は東京スカイツリーのソラマチに採用された各種製品)で、創業50年を超える実績。短納期、高品質が社是。三次元CADも早くから導入した。技術者が顧客に改善を直接提案し、需要を掘り起こすVE提案営業を積極推進する。保有設備は、レーザー5台、パンチ複合機1台、ネットワークベンダー4台ほか多数。近く、レーザー機を新鋭機に更新。ルーターの新規導入も決定した。
続々と海外拠点を展開
スリッターマシンタイに販売拠点
垣堺精機では最近、東南アジア日系企業向けの引き合いが増えている。これに対応し、年内にはタイ現地法人を開設する。日本から移設するスリッターマシン(写真)を用いて請負加工も行う計画。
同社のスリッターマシンは、最薄で厚さ10マイクロ―200マイクロメートルの金属箔に対応が可能。1スリット幅2ミリメートルで、50スリットの切断・巻き取りができ、巻き取り速度は毎分150メートルが可能。箔切断の際に生ずる切断幅のバラつきを20マイクロメートル以内に、端バリの高さを5マイクロメートル以内に押さえた。
アルミ伸管生産タイ工場稼働
日本伸管は21日、アユタヤ県ロジャナ工業団地のタイ工場(日本伸管タイランド)を稼働した。事務機向けローラーなどアルミ伸管を生産する。稼働2年目に同工場単体での黒字化を図る。初の海外生産拠点。敷地面積は1万7700平方メートル、延べ床面積2571平方メートル。機械設備は日本製の最新鋭機を導入する。「国内では新素材やモジュール化など高付加価値品、タイでは量産品製造を主体にすみ分ける」考えだ。
モンゴル工場を移転・拡張
シバサキ製作所は、モンゴルの100%出資子会社工場「モン・シバサキ(ランバートル市)」を生産能力拡大のため、同市内に移転した。新工場の敷地面積は3600平方メートル、延べ床面積は770平方メートルで、工場規模は従来の約3倍となる。自動車のディーゼルエンジン周り部品の加工などで、2013年12月期に5000万円の売り上げを見込む。
自動車部品製造タイ工場稼働
豊島製作所は、佐久間特殊鋼とのタイ合弁工場「トシマタイランド(チョンブリ県ピントン工業団地)=写真は開所式」を9月11日に稼働する。従業員10人ほどでスタートし、2013年初頭から同30人体制での本格稼働を目指す。自動車向け変速機部品製造などで、2013年6月期に約1億円の売り上げを目指す。
中国に廃車リサイクル工場
CRS埼玉は、中国の江蘇省長家港市に建設中だった廃車リサイクル工場「CAPA(長家港)資源再生」を10月稼働する。当面は、CRS埼玉が日本から輸出する廃車処理を行う。さらには、今後に急増が予想される中国国内の廃車リサイクル需要を取り込む狙い。数年以内に、長家港資源再生での従業員を280人、廃車リサイクル能力を年間12万台体制とする計画。
インドネシア銀行と提携
武蔵野銀行はインドネシアの大手商業銀行「バンクネガラインドネシア」と業務提携した。インドネシアへ進出を検討、または進出済みの企業に現地情報や口座開設などの個別相談、各種金融サービスを提供する。
メッセージ/川越商工会議所会頭 大久保敏三氏
埼玉西部地区は、商店街が発達していることから、よく商都と言われます。一方、県内でみると、小売業の年間商品売上高とともに、製造品出荷額も上位にあり、商工のバランスがとれた地区として発展してきました。最近の経済情勢については「個人消費の回復」や「復興需要」などにより、ようやく薄日がさして来たと見る傾向がありますが、海外の景気減速などリスク要因も多く、まだしばらくは不安定な状況が続くと思われます。
こうした中、私ども商工会議所は地域企業の声を集約しながら、行政への各種要望活動に積極的に取り組んでいます。今年は川越市制90周年の年でもあり、「川越百万灯夏まつり」、「小江戸川越トリエンナーレ」などの事業を例年以上に積極的に実施しています。11月には「小江戸川越マラソン」も開催する予定です。商工会議所として、引き続き「地域の活性化」に全力をあげて取り組んでまいる所存です。
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