2020年の年明けから、世界は一変してしまいました。新型コロナウイルスによる感染拡大は、国や地域を越え、医療だけでなく、社会、経済、産業、文化、地域活動など幅広い分野に多大な影響を与えました。経済活動の再開に向けた取り組みも始まっていますが、元の経済や社会には決して戻らないだろうという認識が徐々に広がっています。コロナ禍は莫大な損害を人類に与える一方で、様々な分野で旧態依然のシステムを壊し、新たな成長の芽を育む役割を結果として担っていくのではないか。こんな予測も語られるようになっています。
そうした状況の中で「発明」は、これまで以上に重要な役割を人類に与えていくことでしょう。コロナ禍によって浮き彫りになったさまざまな課題を解決する有力な手段として、発明による成果は、強いインパクトを世の中に与えることが期待されます。これまで長きにわたってネックになっていた問題や課題が、一つの発明によってみごとに解決され、画期的な成果を挙げてきた事例は、有史以来、枚挙にいとまがありません。発明を育て発展させる姿勢が、人類に新たな進歩をもたらすと言っても過言ではありません。
また新型コロナウイルス感染症の拡大とは別に、これまで進んできた技術革新も、発明によってさらにスピードが加速していくことでしょう。人工知能(AI)に加え、量子技術が研究開発の重要なキーワードになっています。量子コンピューターや量子暗号の普及は、社会を大きく発展させる可能性を秘めています。バイオテクノロジーの分野も今まで以上の発展が期待されます。iPS細胞(人工多能性幹細胞)の実用化をはじめとする再生医療の目覚ましい発展は、人間とは何か、生物とは何かという根源的な課題を人類に突き付けています。新素材、エネルギー技術の変革も続いています。こうした技術の進歩にも数々の発明が欠かせません。
「発明大賞」は創設から46回目を迎えます。中堅・中小企業、研究者や個人の発明家を対象に、優秀な発明考案を生み出して成果をあげた企業や個人をこれまで表彰してきました。特筆すべきは、発明大賞の歴代受賞者をはじめとする幅広い企業や個人のネットワークが、「発明を生み出す環境」を育んでいることです。一つの発明が世界を一変させる一方で、さまざまな発明の蓄積、積み重ねが人類に英知を与え、幸福を導いたことは大切な歴史の教えです。
これからも人類には、感染症以外にもさまざまな困難が襲ってくる可能性があります。ただ、発明という武器が人類にある限り、きっと課題や問題を解決して、新たな社会や世界を築いていくことでしょう。ぜひ、発明を通じて、その未来を切り拓く人々の輪に加わっていただければと願っています。
応募を心からお待ちしております。