シンプルな“棒”が車いすの行動範囲を変える
私が発明したものは、ただの棒です(笑)。世界中の人が100年間、押してきた車いすを引っ張ろうという、ある意味で非常識な発想で作りました。他の受賞者の方と違ってとてもアナログな技術なので、なぜこれを商品化しようと思ったのかというきっかけや、こだわった点などをお話ししたいと思います。
アイディアそのものは、私が子どものころから持っておりました。というのも、身近で障害者を見てきたからです。しかしながら、私はサラリーマンでしたので、商品化することになるとは夢にも思っていませんでした。
ところが、3.11の東日本大震災で逃げ遅れる人を見て、自分も何かできることはないだろうかと考えました。ボランティアに行こうとも思ったのですが、私は長年考えてきたアイディアを商品化することで、少しでも災害時に役立ててもらおうと思ったのです。
災害時、人はまず避難所まで逃げることが重要です。しかし、その場所に行くまでが問題なのです。南海トラフ地震などの大規模な災害が予測されております。ぜひ、この商品を災害時に役立てていただきたいと思っています。
また、災害時だけにとどまりません。今まで車いすの人が行かれなかった海や山へ出かける際にも、ぜひ利用していただきたいのです。特に、車いすの子どもたちは、遠足や修学旅行に参加できない場面も珍しくありません。この商品を使い、ぜひとも出かけてもらいたいと思っています。
開発に当たってこだわった点が二つあります。既存の車いすを有効に使えるように、どんな機種にも汎用的に利用できるようにしました。もう一つは、すべての部品が日本製であるという点です。協力会社にお願いして、長野県のメーカー10社に依頼しています。
福島県や宮城県にも生産拠点が作れればと思っています。ぜひ、この商品が車いすを利用している方々のお役に立ち、東北の復興にも役立つようにと願っております。
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