「環境賞」は公害問題の解決が叫ばれていた昭和49年に創設されました。この44年間にわたり、環境保全や環境の質の向上に貢献すべく、時代の要請に応える優れた取り組みを表彰してまいりました。そして今、温暖化、資源の枯渇、生物種の絶滅など地球環境問題は深刻さを増し、私たちの身近な生活環境にもさまざまな問題が山積しています。こうしたなか、環境を守り、未来につなげる調査、研究、技術・製品開発、実践活動を広く募集し、画期的な成果をあげた個人、法人、団体・グループ等に「環境大臣賞」等を授与いたします。

平成30年度「環境賞」贈賞式

 平成30年度「環境賞」(国立環境研究所・日刊工業新聞社主催、環境省後援)の贈賞式が東京・霞が関の霞山会館で6月7日に開催され、「環境大臣賞」をはじめ「優秀賞」「優良賞」が授与された。循環型社会をリードする中小企業の独創的な技術が目を引き、受賞者は表彰状と記念盾を手に誇らしげな様子だった。
 創設から45回を数える今回は、有害物質の除去や産業廃棄物処理、廃熱利用、温暖化対策、再生可能エネルギー、自然保護活動といった多様なジャンルから39件の応募があった。厳正な審査の結果、鋼製橋梁の古い塗膜に含まれる鉛・ポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を効率よく安全に除去するヤマダインフラテクノスの「鉛・PCB廃棄物を削減する循環式ブラスト塗膜除去」が環境大臣賞を受賞したのをはじめ、計5件が受賞の栄誉に輝いた。
 来賓として挨拶した伊藤忠彦環境副大臣は「環境対策がイノベーションを生み、新しい経済成長につながることを確信し、多くの皆さまに、この分野に加わり次々挑戦していただきたい。その一つの大切なきっかけとして環境賞のますますの発展を期待したい」と産業創出の視点から本賞の重要性を強調した。
 環境大臣賞を受賞したヤマダインフラテクノスの山田翔平取締役は「〝ゴミを減らせば世界が変わる〟を合言葉に、人と地球にやさしい技術を開発し、数多くの施工実績を積み上げてきた成果が最高の形で報われた」と謝意を述べた。
 優秀賞の「新規分解菌による1,4-ジオキサン等を含む排水処理」を開発した大成建設技術センターの斎藤祐二部長は「研究者が地道に執念を持って1,4-ジオキサンの分解菌を見つけ出してくれた。この菌はゲテモノ食いで、1,4-ジオキサンだけでなく、いろいろな化学物質を分解する。今年は技術開発だけでなく、営業活動にも力を入れたい」と顧客開拓へ意気込みをにじませた。
 優良賞の「下水熱利用と老朽管補修を両立する技術」を開発した東亜グラウト工業の山口乃理夫社長は「今回は未利用の下水熱に着目して開発したが、下水道全般でいえば、処理場から出てくる汚泥や二酸化炭素といった未利用資源をもっと使えるようにしたい」と受賞をバネに新分野に挑戦する考えを示した。
 環境賞は1974年(昭49年)に創設。数ある環境分野の表彰制度の中でも歴史と権威を兼ね備え、産業界などから高い評価を得ている。

ごあいさつ

国立研究開発法人 国立環境研究所 理事長  渡辺 知保
住明正写真

 平成30年度「環境賞」を受賞された皆様、誠におめでとうございます。
 環境賞はさまざまな分野で環境保全に関する調査、研究、開発、実践活動等に積極的に取り組み、成果をあげておられる方々の活動を表彰し、それらの方々の活動を幅広く紹介することにより、環境に対する社会的関心を高めるために設けられた賞です。
 国立環境研究所は、幅広い環境研究に学際的かつ総合的に取り組む研究所であり、1974年に国立公害研究所として発足して以来、1990年代より広く地球環境問題へと取り組みの範囲を広げ、環境科学の基礎的知見を蓄積するとともに、時代に即応した環境課題の解決に資する重要な知見を創出・提供してきました。環境問題への対応は行政や研究機関のみならず、幅広く、国民や企業などの様々なステークホルダーに関係する重要な課題であることを踏まえ、研究所の社会的活動を展開する一環として、平成28年度より株式会社日刊工業新聞社とともに環境賞を主催させていただいています。
 本年度は、39件の応募作の中から環境大臣賞1件、優秀賞2件、優良賞2件を表彰することとなりました。環境大臣賞の「鉛・PCB廃棄物を削減する循環式ブラスト塗膜除去」をはじめ、いずれの受賞作も関連企業、大学などの多くの関係者の連携・協力の賜物であり、環境問題の解決には多くの関係者の連携が重要であるとあらためて認識し、受賞者各位の日頃の真摯な取り組みに対して敬意を表します。また、惜しくも受賞を逃された応募課題の中にも環境問題の解決に貢献する課題が多々含まれており、来年度以降も多くの方々に応募していただくことを期待します。
 大塚 柳太郎審査委員長をはじめ、審査委員各位、環境賞を支えていただいている皆様方に深く感謝するとともに、環境賞が我が国の環境保全活動の発展に寄与することを期待し、また私どもとしても、環境研究の推進や社会との橋渡しに努め、持続可能な社会づくりに皆様と手を携えて取り組んで参りますことを申し上げ、ごあいさつとします。

 

日刊工業新聞社社長  井水 治博
井水治博写真

 平成30年度「環境賞」を受賞された皆様、誠におめでとうございます。その意欲的かつ真摯な取り組みに敬意を表するとともに、大塚柳太郎委員長をはじめ審査委員の皆様に、心より御礼を申し上げます。
 本賞は公害問題への対策が急務だった1974年(昭和49年)に創設され、以来、国内外の環境問題と歩みを一つにしてまいりました。環境保全や環境の質の向上に貢献が認められる技術開発、調査研究、実践活動などを毎年表彰し、45回を数えます。
 おかげさまで、今日、数ある環境分野の表彰制度のなかでも、歴史と権威を兼ね備えた賞として企業や研究機関から高い評価を得るに至っております。ご後援をいただきました環境省をはじめ、関係各位のご支援ご協力の賜と厚く御礼を申し上げる次第です。
 本年度は、鋼製橋梁の塗膜に含まれる鉛・PCB廃棄物を除去する循環式ブラスト法や、廃タイヤなどの異素材混合物を高い精度で破砕・分離する装置の開発など、循環型社会を象徴する技術や製品を中心に39件の応募がありました。
 とりわけ中小企業が磨きをかけてこられたオンリーワンの技術には目を見張るものがあり、審査は例年にも増して甲乙つけがたいものになりましたが、独創性、将来性、有効性、経済性などを総合的に評価し、環境大臣賞、優秀賞、優良賞の計5件を選定いたしました。
 2015年9月の国連サミットでは、2030年までの長期的な開発の指針としてSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、深刻化する環境課題など17の目標と169のターゲットに全世界が取り組むことになりました。受賞者の皆様には、経済発展と環境課題の解決を両立させる牽引車になっていただけますよう、ますますのご活躍を期待いたします。
 日刊工業新聞社は産業の総合情報機関として、持続可能な社会の形成に資する情報発信に日々努めてまいります。本賞にあたりましては共催する国立環境研究所とともに一層の充実に力を注ぎ、微力ではございますが、環境保全と環境の質の向上、そして我が国産業の発展に寄与できればと考えております。皆様の変わらぬご指導ご支援をお願い申し上げ、ごあいさつとさせていただきます。

平成30年度「環境賞」受賞者

【環境大臣賞】

「鉛・PCB廃棄物を削減する循環式ブラスト塗膜除去」
ヤマダインフラテクノス株式会社
一般社団法人 日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会
循環式エコクリーンブラスト研究会
岐阜大学
山田 翔平
山田 博文
鈴木 実
木下 幸治
鋼製橋梁の長寿命化には塗装の塗り替えが不可欠だが、古い塗料には鉛やポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害物質が含まれている可能性が非常に高い。本工法は圧縮空気で金属系研削材を投射し古い塗膜を除去。金属系研削材は非金属系に比べ湿度に弱く高価で、従来は工場内での使用に限られていたが、ドライ環境設備や研削材と塗料カスの分別装置を取り入れた移動式プラント設備を開発し、現場でも使用できるようにした。金属系研削材は粉砕しないため、有害物質を含んだ産業廃棄物や粉じんの発生を大幅に削減できる。

【優秀賞】

「ガスセンサー制御硫化物法による金属廃液・汚泥処理」
株式会社アクアテック
イコールゼロ株式会社
マツイマシン株式会社
大西 彬聰
林 宏道
松井 洋
重金属含有廃液の処理法において、硫化剤の添加により金属硫化物を沈殿させる硫化剤添加制御方法を開発した。硫化水素ガスセンサーを用いるプロセス制御手法を開発し、硫化剤添加量の最適化を可能にした。硫化イオンと金属イオンが反応し疎水性の沈殿物を生成するため、石灰などのアルカリを添加する従来法に比べ、有用金属含有回収汚泥の含水率は45%程度と低く、発生量も40%程度に抑えられ、廃水の高度処理と金属資源回収を両立できる。
 

 「新規分解菌による1,4-ジオキサン等を含む排水処理」

大成建設株式会社
大成建設株式会社
大成建設株式会社
大成建設株式会社
大阪大学
大阪大学
大阪大学
北里大学
斎藤 祐二
山本 哲史
瀧 寛則
日下 潤
池 道彦
井上 大介
黒田 真史
清 和成
化学工業で広く使用される1,4-ジオキサンは、急性毒性や慢性毒性だけでなく、発がん性も疑われている。近年、環境基準や排水基準に追加されたが、その難分解性から経済性に優れた処理技術は無かった。本件では、従来より格段に優れた新たな1,4-ジオキサン分解菌を発見するとともに、その優れた能力を発揮させる排水処理プロセスを開発した。実工場排水を用いた実証により本処理プロセスの長期安定性も確認済みであり、実用段階である。
 

【優良賞】

「廃タイヤ等の異素材混合物を削ぎ取る破砕・分離技術」
株式会社エムダイヤ
森 弘吉
微妙に傾けた回転刃で廃タイヤや光ケーブル、電子基板など様々な産業廃棄物を削ぎ取るようにして破砕し金属を分離できる。従来は破砕機を何台も連結させ、破砕と分離を繰り返すのが一般的だったが、設備導入や運転のコストがユーザーの大きな負担になっていた。本件は1台の機械で破砕と分離を可能にした。太さの異なるワイヤーを含んだ廃タイヤでも回転刃で引っかき外側のゴムだけそぎ落とし、内部のワイヤーをきれいな状態で取り出せる。
 

 「下水熱利用と老朽管補修を両立する技術」

東亜グラウト工業株式会社
田熊 章
冬は暖かく夏は冷たい下水熱を、空調、給湯、床暖房などに利用する。老朽管路の補修と同時施工することで導入費を節減できる。既設管内に樹脂製チューブを引き込み、光を照射する光硬化工法により更生管を構築。その際、既設管と更生管の間に熱交換マットを設置。熱交換マットを介して回収した熱は、更生管内を循環する不凍液を通じて施設へ送られ利用される。熱交換マットは下水に触れないため苛酷な環境の下水道管内でもメンテナンス不要。
 

ごあいさつ

審査委員長  大塚 柳太郎
合志陽一写真

 一昨年のパリ協定発効に示されるように、世界は脱炭素化に向け大きく舵を切りました。また、2015年の国連サミットでは、環境をはじめ、貧困、飢餓、健康・福祉、人権、性差別など現代社会が直面する重要課題について、2030年までに達成すべき17分野の目標を掲げたSDGs(持続可能な開発目標)が国際目標として採択されました。このような状況の中で、温暖化防止や汚染対策などで実績をもつ日本の環境技術に寄せられる期待はますます高まっています。
 「環境賞」は1974(昭和49)年に創設され、環境保全に顕著な成果をあげた技術開発、調査研究、実践活動を毎年表彰してまいりました。当初は公害対策に主眼を置いておりましたが、その後、日本では大企業のみならず中小企業が研鑽を重ね技術革新に磨きをかけ、一方では多様な環境保全活動が地域社会とも連携して進展し「環境先進国」に生まれ変わる中で、「環境賞」が果たした役割も小さくなかったと思います。
 第45回にあたる今回は、企業や研究機関などから39件の応募がありました。目についたのは、中小企業が地道に改良を加えてきた独自技術が多いことで、時代を先取りしたキラリと光るものが数多くありました。応募内容も、有害物質の除去、産業廃棄物の処理、廃熱利用、温暖化対策、再生可能エネルギーの開発など多様なジャンルに及びました。ややさびしく感じたのは、地域社会などに基盤をおく環境保全活動の応募が少なかったことです。
 審査は、審査委員がすべての申請課題を丁寧に審査するのに加え、専門審査委員からの意見聴取とヒアリング審査を含め慎重に進められました。審査の視点として、「環境保全への貢献」に加え、「独創性」、「将来性」、「有効性」、「経済性」に留意するとともに、最近ますます重要性が高まっている国際展開にも配慮いたしました。
 一連の審査を経て、環境大臣賞1件、優秀賞2件、優良賞2件の計5件を選定いたしました。環境大臣賞に輝いたヤマダインフラテクノス(愛知県東海市)の「鉛・PCB廃棄物を削減する循環式ブラスト塗膜除去」は、鋼製橋梁の補修時に圧縮空気で金属系研削材を投射し古い塗膜を除去する技術です。鋼製橋梁の多くが補修を必要とする時期に近づいている中で、橋梁に使用されている塗料には鉛やポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害物質が含まれている可能性が高いのです。本技術を適用することで、金属系研削材を粉砕する際に起きる有害物質を含む粉じんの発生を大幅に削減し、研削材の再利用によるコスト削減も可能になります。本技術はすでに多くの実績をもつことから、鋼製橋梁の補修における環境保全と安全安心に貢献する点を高く評価いたしました。
 優秀賞のアクアテック(神奈川県平塚市)による「ガスセンサー制御硫化物法による金属廃液・汚泥処理」は、重金属を含む廃液の処理法として、硫化剤を添加し硫化物を沈殿させる硫化剤添加制御法を開発したものです。とくにコア技術として評価したのは、硫化水素ガスセンサーを用いて反応を制御する独創的な手法の開発で、適切な硫化剤の添加を可能にしたことです。この方法により、石灰などのアルカリを添加する従来の方法に比べ、有用金属を含む汚泥の発生量を40%程度に抑えることができ、廃水の高度処理と金属資源の回収の両立が可能になりました。また、マレーシアや中国でプラントの建設、あるいは建設計画を進めるなど、積極的に国際展開に取り組んでいることも高く評価いたしました。
 同じく優秀賞の大成建設による「新規分解菌による1,4-ジオキサン等を含む排水処理」は、溶剤などの工業材料として広く使用されている有害物質の1,4-ジオキサンを処理する新しい技術です。従来の分解菌に比べ分解性能が格段に優れるN23株を発見したことが特筆され、N23株の機能を発揮するバッチ式排水処理プロセスの構築、およびN23株の大量製造手法の確立にも成功しており、実用化の準備が整っていると判断いたしました。1,4-ジオキサンは、世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)とアメリカ環境保護庁(USEPA)により「ヒトの発癌性が疑われる」カテゴリーに分類されており、世界の生産量の約半分の4,500トンが我が国で生産されていることから、本技術の広範な活用を期待しています。
 優良賞のエムダイヤ(富山県滑川市)による「廃タイヤ等の異素材混合物を削ぎ取る破砕・分離技術」は、微妙に傾けた回転刃により、廃タイヤなど異素材混合の産業廃棄物を削ぎ取るようにして破砕し金属を分離する手法です。破砕機を何台も連結させ破砕と分離を繰り返す従来の一般的な方法は、 ユーザーにとって設備費や運転コストが大きな負担なのに対し、大幅な経費の削減を可能にしています。審査委員会は、廃棄物の破砕と分離をシンプルな方法で実現した本技術の独創性を高く評価いたしました。
 同じく優良賞の東亜グラウト工業(東京都新宿区)による「下水熱利用と老朽管補修を両立する技術」は、冬は温かく夏は冷たい下水熱を、空調、給湯、床暖房などに利用するものです。既設管内に樹脂製チューブを引き込み、光を照射する光硬化工法により更生管を構築し、既設管と更生管の間に設 置した熱交換マットを介して熱を回収し、更生管内を循環する不凍液を通じて利用に供します。本技術は、下水熱利用と老朽管補修を両立する点に新規性が高いこと、さらには導入費を節減できることを高く評価し、今後の普及を期待しています。
 惜しくも入賞に至らなかった応募課題の中にも、工夫や改善を積み重ねること、あるいは普及の実績を高めることで、入賞に値するものがいくつもありました。多くの企業や団体から意欲的な技術開発や環境保全の実践に基づく応募が寄せられたことに審査委員を代表してお礼を申し上げ、審査概評といたします。

審査委員会

審査委員長 大塚 柳太郎 (自然環境研究センター理事長、東京大学名誉教)
審査委員 中井 徳太郎 (環境省総合環境政策統括官)
  渡辺 知保 (国立環境研究所理事長)
  松野 建一 (日本工業大学教授・工業技術博物館長)
  本川 達雄 (東京工業大学名誉教授)
  安河内 朗 (九州大学大学院主幹教授)
  新藤 純子 (山梨大学名誉教授・客員教授)
  長谷川 裕夫 (東京都立産業技術研究センター理事・開発本部長)
  岡田 直樹 (日刊工業新聞社日刊工業産業研究所長)
専門審査委員 行木 美弥 (環境省大臣官房総合政策課環境研究技術室長)
  田中 紀彦 (国立環境研究所企画部長)
    ※2018年3月時点