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新たな成長軌道に乗る 埼玉西部地域企業

9月26日(木曜日)付 日刊工業新聞 13面〜15面  企画特集から


 過度な円高の一段落などで国内景気に薄日が差している。2020年オリンピックの東京開催決定やイプシロンロケットの打ち上げ成功など明るい話題もこのところ相次ぐ。2014年4月には消費税アップの観測が控え、国内経済は予断を許さぬ状況だが、いずれ避けて通れぬ道でもある。さて、埼玉西部地域は首都圏において技術企業が集積する国内モノづくりの要衝だ。同エリアに拠点を置く主要各社の最新動向をここに紹介する。(順不同)

【欧州向け 航空機部品受注】

ランディングギア

ランディングギア

 三芳合金工業は、欧州向けに航空機の足回り用軸受部品を初受注した。フランスの航空機部品大手メシア・ブガッティ社から銅合金製品に関する品質認定を受け、採用が決まった。現在、秋口にかけての納期逼迫(ひっぱく)が予想されるため「鍛造工程を除き、24時間の生産体制を織り交ぜて対応」する方針だ。

 

【間伐材の固形燃料化装置開発】

 タジリは、間伐材の皮やチップなどを固形燃料化して押し出すための「ブリケットマシン=写真」を11月に発売する。比較的荒切りの材料を投入した場合でも、自動でブリケット化して薪の代替材料にできる。1時間当たり、約300キログラムのブリケット生産が可能。材料を圧縮して固める動力に電動クランプを用いた。高速で材料をたたくことにより、木に含まれるリグニン成分がバインダーとなり固形化する仕組み。「油圧駆動を用いた従来型に比べて静音で、装置サイズも大幅に小型化」した。

 

【引き戸向け機械式暗号錠開発】

 長沢製作所は、サッシ扉など左右引き戸に対応した自動施錠の機械式暗号錠「引き戸式キーレックス=写真」を11月に発売する。左右引き戸を完全に閉め合わせることにより、磁石の作用で自動ロックする仕組み。外部からは暗証番号の入力もしくは鍵を用いて開けられ、室内からは回転つまみをひねるだけで解錠する。価格は取り付け工事費を含めて3万円予定。鉄道駅ホーム上乗務員待合室や介護施設、学校向けへの販売を見込む。

 

【32回線光通信制御ユニット】

 七星科学研究所の七星科学開発センターは、最大で32回線の制御信号を一芯の光ファイバーで単方向送受信できるユニット型の光通信機器シリーズ(写真)を発売した。シーケンサーなどスイッチのON/OFF信号をリアルタイムでやりとりできる。空港のような大規模施設の照明装置遠隔制御などに向く。価格は、送受信機1セットで40キロメートル品が33万円、同20キロメートル品で29万円。このほか、16回線対応の同双方向通信機も用意した。

 

 

【タイ工場稼働へ】

 シバサキ製作所は、東京鋲兼との折半出資でタイのサラブリ県に設立した「シバサキTBタイランド」を11月に稼働する。工場は、延べ床面積約1200平方メートル。当面は、本社工場から移設した自動旋盤を用いて、自動車のエンジンやブレーキなど向け機能部品の量産化準備を進める。稼働時の従業員規模は10人ほどを予定。

 

【直立走行 自動二輪車発売】

 東洋パーツは、自社開発した直立走行の自動二輪車「ホイールウォーカー=写真は試作機」を商品化する。興電舎、アールディエスの2社と協調。デザインを洗練し小型化。発売は年内を予定している。

 重力センサーを制御に取り入れており、人が上に乗っても倒れず前後左右に自立走行できる乗り物。社内モノづくりサークル活動の一環として開発された。

 

 

【タイでスリット加工】

 垣堺精機は、タイのバンコク近郊のパトムターニ市に子会社工場を設置した。10月には、スリッターマシン(写真)の導入を完了する。以降、自動車や電子部品関連の現地日系メーカー向けなどに各種金属コイルの分割切断/巻き取り加工の請け負いを開始する予定。100分の3ミリメートル厚以下の薄物金属ロールの加工が中心となる見込み。受託加工が軌道に乗り次第、装置のノックダウン生産に着手するほか、東南アジア全域をにらんだ営業の核拠点とする考えだ。

 

【ホンダ寄居工場向け都市ガス供給】

 武州ガスは、寄居町に進出するホンダの工場向けに、周辺での都市ガス網整備を進めて来た。7月に稼働した同工場ではコジェネレーション施設向け、塗装の乾燥工程やボイラ向けなどに主なガス需要が見込まれている。同社では、同エリア周辺に整備した都市ガス網を、被災時などに備えてループ化する計画。越生―小川間の約20キロメートル区間にガス管を敷設することで、今後3年以内にループ化を完了する予定だ。

 

【排水設備不要のダイカスト向け離型剤】

 青木科学研究所の主力製品「ダイカスト金型向け油性離型剤」の販売が好調だ。同離型剤は400度Cの高温でも油膜が形成でき、水溶性に比べ使用量が1000分の1程度で済み、廃液も出ない特性を持つ。国内外の大手ダイカストメーカーや自動車メーカーが相次いで採用を決めている。

 海外で建設中のダイカスト工場に、同離型剤の採用を決めた国内自動車メーカーもある。同離型剤を採用することで「排水設備が不要になる点が評価された」という。

 

【ファイバーレーザー溶接機新規導入】

 野火止製作所は10月、トルンプ製ファイバーレーザー溶接機を新規導入する。導入済みの出力3キロワットのトルンプ製ファイバーレーザー装置「TruLaser1030fiber=写真」と連動して利用する。レーザー加工機と溶接機を連動して使うことで、段取り替えが少なくて済む。「ファイバーレーザー出力により発熱を抑えられ、薄板を曲げず溶接できる」という。主力の看板加工事業での内製化率向上とともに、内装機器関連向けなど板金事業の領域をさらに拡大する。

 

【白河工場で増設投資】

 日本伸管が2月に設立したタイ生産子会社「日本伸管タイランド」の滑り出しが順調だ。タイ国内向けに複写機用の精密アルミ伸管品の量産を軌道に載せており、自動車部品向けアルミ丸棒引き抜き加工品でも商談が相次ぐ。年内の単体黒字化も視野に入る。従業員数も全36人に増えた。

 福島県の白河工場でも工場の拡張計画が進んでいる。増設予定の新工場棟では、直径350ミリメートルの大口径アルミ伸管品を生産する計画だ。

 

【ベトナム工場稼働】

 埼玉富士はベトナムの子会社工場「アリオン・エレクトリック・ベトナム」を稼働した。ハノイ近郊でおよそ1年かけ、制御リレー・電磁開閉器などの量産化準備を進めていた。また、国内では、FA装置部門が好調だ。自社ブランドとして開発した精密加工用レーザー装置も徐々に知名度を上げている。

 

【竜巻被災事業者へ復旧支援】

 武蔵野銀行は3日、竜巻被災事業者向け融資メニュー「むさしの災害復旧支援融資」の取り扱いを始めた。利率は変動金利、融資金額は5000万円以内。資金使途は設備資金と運転資金。返済期間は1カ月以上7年以内で、6カ月以内の据え置きが可能だ。

 

【新工場を飯能に建設】

 新電元メカトロニクスは、市内に新工場を建設する。建機や医療機器向けなどに出荷が好調なソレノイド製品の増産を図る。現在11月の完成を目指しており、稼働は2014年1月となる見込み。総投資額はおよそ6億円。新工場の稼働により、2016年3月期までに売上高を50億円超(2012年3月期同44億円)に伸ばす計画。

 「新たにソレノイドバルブのユニット製品の量産化や、電気自動車向け需要の掘り起こし」も進める。

 

【DNA向け超微細温度センサー】

 ネツシンは、アンプルを用いたDNA増幅やiPS細胞の培養に用いるサーマルサイクラ装置向けなどに、業界最小クラスの白金測温抵抗体温度センサー(写真)を産業技術総合研究所と共同で開発した。感温部の寸法を0・5ミリメートルと自社最小品比で5分の1に小型化(外径は自社最小品と同等の0・4ミリメートル)した。数十マイクロリットル程度の微量培養液内へ、感温部の完全な含浸を可能にすることで精度誤差プラスマイナス0.1度C以内の温度測定を可能にした。これまでサーマルサイクラ装置によるDNA複製装置などには、微細化が容易な熱電対温度センサーが使われていたが、精度誤差がプラスマイナス0.5度C程度だった。

 

【ラスベガスベーカリーショーに出展】

 マスダックは、10月6日から米ラスベガスで開催される世界最大規模のベーカリーショー「IBIE」に出展する。日本独自の菓子や生産技術を欧米人好みにアレンジした形で、北米・中南米の大手食品メーカーに向けて提案を行う。注目は、欧米市場をにらみ大量生産を可能にした人形焼焼成機「マンジュウファンケーキマシン」だ。会場では、毎時7200個の生産能力を持つ同機を用いてライン製造実演、試食を行う。

 

【深絞りで90年の伝統】

 吉野プレス工場は、鋼板をさまざまな形状に成形する深絞り加工を得意とする。大正12年の創業以来、同量産化技術を磨いてきた。保有設備では深絞り対応の200トン―500トンの大型タンデムプレス機バリエーションをそろえている。主な加工品目は、燃料タンク・自動車部品・医療機器など。近年の主流になりつつある高張力鋼板のプレス加工にも対応する。

Next 埼玉西部地区ビジネス交流セミナー/埼玉富士会長 堤 朗氏

<出稿企業一覧>

企業名   新聞広告
東洋パーツ 自動歩行二輪車を発売
垣堺精機 スリッターマシンでオンリーワン
吉野プレス工場 深絞り加工で90年の実績
長沢製作所 引き戸式キーレックスを発売
三芳合金工業 特殊銅合金製品のパイオニア
武州ガス 埼玉西部の都市ガスはおまかせ
武蔵野銀行 竜巻被災事業者に緊急融資
マスダック お菓子作りをもっと美味しく、新しく
野火止製作所 最先端のレーザー加工機導入
七星科学開発センター 光通信機器のパイオニア
シバサキ製作所 自動車精密部品加工で50年
青木科学研究所 排水設備不要のダイカスト離型剤
タジリ ブリケット成型マシンを新発売
新電元メカトロニクス ソレノイドの総合メーカー
埼玉富士 FA機器製造で確かな実績
ネツシン 白金測温抵抗温度計のトップメーカー
日本伸管 アルミ伸管の国内トップメーカー

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