過去の受賞者

■2025年度

第52回「環境賞」贈賞式


第52回「環境賞」(国立環境研究所・日刊工業新聞社共催、環境省後援)の受賞者が決まった。今回は技術開発による課題可決を目指すハード面の取り組みや、循環型社会の形成につながるシステム作りに重点を置いた取り組みなど、過去最多だった昨年に次ぐ70件の応募があった。ヒアリング審査などを経て、環境大臣賞1件、優秀賞1件、優良賞2件の計4件が選ばれた。受賞したテーマ、企業・団体、概要は次の通り。

贈賞式

第52回「環境賞」受賞者

【環境大臣賞】

CO2削減に貢献する常温洗浄剤
花王株式会社
株式会社アイシン

自動車部品など金属部品洗浄工程で、常温洗浄を可能とし、熱風乾燥も不要にした環境負荷を低減する洗浄剤を開発した。常温でも洗浄不良を低減し、常温ブロー乾燥工程が可能になることで、洗浄機1台当たり年間24トンのCO2排出を抑制する。
従来基材に特殊ノニオン界面活性剤を併用することで、油分の高速乳化が可能となった。さらに洗浄中に撥水性被膜を形成させることで洗浄液の残留・液だまりがなく防さび効果も高めた。

環境大臣賞

【優秀賞】

建設副産物巡回回収システム
大成建設株式会社
日本通運株式会社

建設現場から排出される産業廃棄物を、品目ごとに分別し、再資源化を目指す取り組み。複数現場を同一車両で巡回回収し、積み替え拠点で積み替えを行い、品目ごとの再資源化施設にまとめて二次輸送できる巡回回収システムを構築した。
建材メーカーが自社製品の廃棄物を回収し製品原料などに再資源化できる「広域認定制度」を利用したサーキュラーエコノミーを実現。2023年からは日本通運と協業し、業界全体への普及を進める。

    優秀賞

【優良賞】

ZEB設計ビジネスへの取り組み
株式会社竹中工務店

ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)の普及・拡大のため、標準的にZEBを設計できる手法を開発した。まずZEB設計ノウハウを体系的にまとめた「ZEB設計ガイドライン」を整備し、設計効率を高めるツール「ZEBIA」を開発した。ガイドラインは設計初期から竣工まで段階ごとの検討事項を示し、ZEBIAはガイドラインに従って複数の検証を素早く簡易に行う。これにより経験が浅い設計者でもZEB設計を行うことができる。

    優良賞
排水由来の廃棄物を低減するエマルション破壊分離装置
中部電力ミライズ株式会社
関西オートメ機器株式会社

排水処理工程で発生するエマルションを水と油に分離(解乳化)させ、油分を浮上分離する装置。排水が生物処理を行う曝気槽に流入する前に、エマルションを高速・効率的に分離する。
同装置は旋回せん断方式のマイクロバブル発生技術を応用し、流体解析によりコア部先端に強力なせん断力を与えることを実現。このせん断力によるエマルションの解乳化と、同時に発生する泡の効果により、油分の浮上分離を可能にした。

    優良賞

■2024年度

第51回「環境賞」贈賞式


第51回「環境賞」(国立環境研究所・日刊工業新聞社共催、環境省後援)の受賞者が決まった。
生物多様性の保全や脱炭素化、循環型社会の形成につながる技術や製品など、過去最多の72件の応募があり、ヒアリング審査などを経て、環境大臣賞1件、優秀賞1件、優良賞3件の計5件が選ばれた。受賞したテーマ、企業・団体、概要は以下の通り。

贈賞式

第51回「環境賞」受賞者

【環境大臣賞】

土壌藻類を活用した自然回復技術の実装
日本工営株式会社
株式会社日健総本社
東京農業大学

土壌藻類を土木資材として土砂災害跡地などに活用し、環境条件に合った自然な植生形成を促進する。土壌藻類を土木資材として活用する例はこれまでなく、従来の自然侵入促進工と比べて安価で容易に実施できることが特徴。
土壌表面に生育する藻類を、日健総本社が水中で培養して土木資材化することに成功。土木研究所と日本工営の共同開発である侵食防止工法に採用し、社会実装を実現した。

環境大臣賞

【優秀賞】

廃棄物を減らし循環型社会に寄与するフィルター
株式会社industria

サイクロンフィルター「FILSTAR(フィルター)」は、3層構造により下部にたまったゴミが浮き上がることを防ぎ、最小で1マイクロメ-トル(マイクロは100万分の1)サイズ、10マイクロメ-トル以上の微粒子は98%以上回収できる高精度濾過が特徴。下部から液を排出しないため、フィルターに入る液体の全量を処理できる。液体処理量のロスを防ぎ、ゴミを回収できる。自動車ボディー塗装前の洗浄工程では多くの国内工場が導入している。

優秀賞

【優良賞】

在来樹種植栽による生物多様性の保全
積水ハウス株式会社
琉球大学
株式会社シンク・ネイチャー

積水ハウスは都市部での住宅を通じた生物多様性保全、生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画を推進している。「3本は鳥のため、2本はチョウのために、地域の在来樹種を」という思いを込め、その地域の気候風土と相性の良い在来樹種を中心とした植栽に取り組んできた。2019年から琉球大学、シンク・ネイチャーと共同でネットワーク型の緑化が都市の生物多様性にどの程度貢献できているか定量評価を進めている。

優良賞
もみ殻の固形燃料化技術
株式会社トロムソ

造船技術を生かし、もみ殻の有効活用に貢献するもみ殻固形燃料装置「グラインドミル」を製品化した。もみ殻をすりつぶし、圧縮形成することで薪炭に代わる固形燃料を製造する。もみ殻を棒状、らせん状の固形燃料、パウダー状にすることができる。バイオマスであるもみ殻を原料としているため、カーボンニュートラルな燃料。シンプル構造で専用オペレーターも不要。販売実績は国内約160台、海外約30台。

優良賞
ラベル台紙の水平リサイクル
日榮新化株式会社
東洋紡株式会社
シオノギファーマ株式会社
株式会社トッパンインフォメディア
三井物産ケミカル株式会社
ヤマトボックスチャーター株式会社

ラベル台紙には、紙と樹脂の複合材料である「剥離紙」が使用されている。「剥離紙」は古紙回収が困難なため、ほとんどが廃棄・焼却されている。この「剥離紙」をマテリアルリサイクル可能なPET合成紙製の「リサイクル専用台紙」に置き換える。ユーザー使用後のラベル台紙を有価回収・マテリアルリサイクルし、再びラベル台紙の原料に使用する。CO2排出量を削減し、「ラベル台紙の廃棄ゼロな社会」を実現する。

優良賞