【特集】ベアリングと関連機器 転がり軸受の予知保全 軸受状態監視システム

 転がり軸受は疲労寿命を計算できる機械要素であり、保全においては軸受交換間隔などが予想しやすいとされていた。しかし、省資源の観点からできるだけ長期間使用したいとの要求が高い。そのためには軸受の状態監視が必要となる。最近ではIoT(モノのインターネット)、インダストリー4・0の普及もあり、状態監視を遠隔かつ一括して行おうとする動きが高まっている。軸受メーカーでは、それに対応した小型センサー、軸受状態監視ネットワークシステム、軸受異常診断の人工知能(AI)化などの技術開発を行っている。

東京理科大学 理工学部

機械工学科 教授
野口 昭治

メンテナンスの効率向上

 転がり軸受は使用条件から疲労寿命を予測できる機械要素である。保全においては、軸受交換までの時間を寿命計算から求めているが、最近は軸受技術の進歩により計算から得た寿命よりも長く使用できることが多い。寿命が残っているにもかかわらず、軸受を交換してしまうのは省資源の観点から効率が悪いので、軸受の状態を監視して、損傷する兆候が現れたら軸受を交換することが望まれている。

 軸受の状態監視は、発電所などのインフラ設備や製鉄所の大型機械設備などでは以前から行われていた。最近では、メンテナンスの効率を上げるために工場内の設備に使われている機械の状態監視を行う事例が増えている。

 加えてIoTやインダストリー4・0の関連技術の採用が広がる中、最初は家電関係が先行していたが、転がり軸受の世界にもその波は押し寄せており、軸受メーカーでも展示会やテクニカルジャーナルなどでこれらに関連する技術が紹介されている。基本的には、センサーからの信号を無線で飛ばして、コンピューターで転がり軸受の状態監視・異常診断を一括で行う技術やシステムである。以降では、転がり軸受の異常診断方法と状態監視の事例について紹介する。

異常診断の方法と状態監視の事例

(1)転がり軸受の異常診断技術

図1 転がり軸受の損傷による振動変化の推移

図1 転がり軸受の損傷による振動変化の推移

図2 軸受メーカーは測定器を機械に取り付け軸受を状態監視するシステムを構築(日本精工提供)

図2 軸受メーカーは測定器を機械に取り付け軸受を状態監視するシステムを構築(日本精工提供)

 転がり軸受に損傷が起こると、音、振動、温度が上昇することはよく知られている。軸受の異常診断もこれらの変化を検出して行うことが多い。転がり軸受の損傷による振動変化の推移を図1に示す。振動は時間とともに上昇するが、機械設備に応じて注意、警告の閾値(しきいち)を設定して、軸受の異常を推定している。温度も同時に計測することが多いが、徐々に異常が進行する場合には変化が小さく、異常検知が難しい。

 最近では、アコースティックエミッション(AE)センサーや超音波センサーを使用した異常診断技術も研究されているが、まだ振動をパラメーターとした異常診断が一般的である。軸受メーカーでは、振動を検出するセンサーの小型化、ワイヤレス化を進めており、機械に取り付ければすぐに軸受の状態監視ができるシステムを構築している(図2)。

(2)工作機械業界における軸受状態監視の事例

 工作機械業界では、隔年で日本国際工作機械見本市(JIMTOF)が開催されており、IoTやインダストリー4・0関連の状況を知ることができる。2016年の調査では、工作機械メーカー150社中36%の企業が工作機械の状態監視に関する技術を出展し、その半数以上は稼働状態監視や工場全体の「見える化」をテーマにした出展を行った。

 状態監視の目的は加工状態を最適化することであるが、転がり軸受に置き換えれば、振動、温度などを小型のセンサーで測定し、その情報を無線で送り、コンピューターで複数の情報を一元的に管理することになる。工作機械では複数配置した振動、温度、変位センサーから得られた情報を組み合わせることによって、一つのパラメーターでは検知できなかった主軸用転がり軸受の異常を検知できるようになってきている。

図3 風力発電の軸受を状態監視するシステム

図3 風力発電の軸受を状態監視するシステム

(3)風力発電における軸受状態監視事例

 風力発電はサステイナブルエネルギーとして注目され、年々発電量は増加している。しかし、軸受が損傷して風車が回転できなくなった場合でも、設置が高所であるため即時に軸受を交換できない。そこで、軸受の状態監視が重要になってくるが、高所であるため、無人での遠隔監視が必要とされている。

 軸受メーカーでは、図3に示すような軸受状態監視システムを構築して、実稼働させている。収集されたデータは、インターネット経由で記録され、各種の信号処理、トレンド分析を経て異常診断に活用されている。また、風車は回転速度が遅いので、振動上昇よりもAE信号での異常診断の方が有効であるとの報告もされている。

◇ ◇

 以上、転がり軸受の異常診断方法、状態監視の現状について紹介した。今後はセンサーの電源を電池や有線ではなく、機械自身の発熱や振動から発電する技術開発、AIによる異常診断の精度向上などが課題となると考えられている。

(日刊工業新聞 2020年9月17日付 26面~27面)

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