金属加工の現場では、材料の切りくずや小塊物などのくず材が大量に発生する。これらは加工機械の負荷を高め、製品に傷をつける要因ともなる。さらには、作業者のけがの原因ともなりかねない。このように厄介者扱いされる切りくずも一方で、貴重なリサイクル材である。このため、製造現場では効率的かつ、安全な処理が求められ、こうした工程を担うさまざまな設備機器が開発されている。付着した切削油剤の安全性やリサイクル促進の観点から、切りくず処理のプロセスが改めて見直されており、関連機器メーカーは環境装置としての機能の充実も図り、需要拡大を図っている。
発生した切りくずを工作機械などから迅速に送り出し、これをまとめて、リサイクルしやすくする。切りくず搬送・処理装置はこうした役割を担っている。切削加工などを行うモノづくり現場では切りくずによる目詰まりや滞留が、機械の不具合の原因となり、生産性や精度を低下させる例は少なくない。
切りくずをうまく処理することは、生産の効率化に大きく寄与するだけでなく、現場の作業者の安全性確保や負担の軽減にも貢献する。工場や設備の規模によって異なるが、一般的な加工現場で処理装置を導入した場合、処理にかかわる作業負担を3分の1にできるという。
搬送・処理装置には比較的安価な海外製品もあるが、国内のユーザーは日本製の搬送・処理装置を高く評価している。国内メーカーは高機能化だけでなく、メンテナンス性や耐久性に優れた製品の開発に力を入れており、ランニングコストの抑制を可能にする設備などの提案も積極的に行っている。
中でも金属切りくずを圧縮固形化するブリケットマシンの高度化や小型化が進展しており、切りくずとクーラントの再利用コストの低減が図られている。あるメーカーではブリケットを小径化する専用破砕機を処理装置に搭載。工作機械に組み込めるようにし、切りくず圧縮力の高い高押圧力モデルなども展開している。鋳物業界向けに工場で発生する切りくずを溶解するためのブリケットマシンを製造・販売するメーカーもある。また、切りくずとクーラントを分離する濾過技術も進展している。フィルターの網目を細かく高強度にし、捕集効率を高めた装置が開発されている。
装置メーカー各社は、ユーザーの個々の状況に応じて技術を最適に組み合わせ、搬送・処理のトータルシステムとして提案することに力を入れている。ただ、中小・零細などの多くの製造現場では、シャベルなどを使って切りくずを取り除く、人手に頼った作業が今なお行われている。
クーラントが付着したままの切りくずが、ドラム缶などに山積みにされ屋外に放置されているケースは少なくはない。屋外ではクーラントが大気中へ蒸散したり、漏れて土壌を汚染したりする恐れもある。搬送・処理装置などの導入は、環境配慮や近年の働き方改革の観点からも、積極的に対処するべき課題といえそうだ。
(日刊工業新聞 2020年9月7日付 8面より)
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