工作機械は日々、高速化や高精度化、機能の複合化が進み、その性能は進化し続けている。だが工作機械に必要なのは高い性能だけではない。いつの時代も変わらず必要とされるのは、ユーザーの技能を最大限に引き出す「扱いやすさ」だ。そのため、市場にどれだけ高性能な最新機が出回っても、使い慣れた古い機械を手放さないユーザーは多い。ユーザーが愛する古い機械を長く、快適に使い続けるために、オーバーホールやレトロフィットなどの手段がある。
工作機械は老朽化するにつれて精度が落ち、新品購入時の精度表の許容値から外れていく。こうした際に機械を分解して点検、修理し、新品の性能に復元するのがオーバーホールだ。
オーバーホールのメリットは新品購入に比べて安価で短納期であること。例えば、新品への買い替えに多大なコストがかかる海外製の機械や大型機械のほか、メーカーのサービスがすでに修了しているケースなどはオーバーホールが有効だ。
一方、レトロフィットは数値制御(NC)装置のついてない機械をNC化したり、古いNC装置を最新のものに付け替えたりするなど、新品購入時にはなかった付加価値を持たせて古い機械を最新鋭機に変える。機械の生産性向上を図りたいときに役立つ手段だ。
オーバーホール・レトロフィット需要の背景には、古くても使い慣れた機械で作業したいというユーザーの要望がある。ユーザーにとって使い慣れた機械は品質や生産性を支える重要な財産であり、新品には換えられない価値がある。
日高機械エンジニアリング(HIMEC、石川県志賀町)は、グループの日高機械(石川県志賀町)から木材脱水装置や害獣処理装置、不燃ボードなどの開発品事業の一部を承継し業務を開始した。同町内に開発製造拠点の「富来工場」を置く。開発品事業と同時に工作機械のレトロフィットも手がける。
日高明広社長は日高機械専務を兼務し、田辺鉄工所(金沢市)、田鶴浜マシンウッド(石川県七尾市)を含む日高グループとの連携を強化し、日高機械が主力事業とする工作機械のレトロフィットの受発注で協力する。相互に製造を委託し合うほか、HIMECは新規顧客への提案、独自ルートでのレトロフィットのベース機の調達や販売業務を担う。
8月には日高グループが取り扱った中古機では「過去最大」(日高社長)となる独・フロリープの旋盤を取得した。支持荷重が60トン、ベッド上の振りが2500ミリメートル、芯間距離が12000ミリメートル、機械の総重量は120トンという「今では製造できない」(同)大型機で、タービンローターの加工に使用していたという。レトロフィット済みで現在でも高精度な加工が可能だが、顧客の要望に応じた新たな改造を検討している。
日高社長は、「先の事は分からないが、この大型旋盤を日本のモノづくりのために有効に使ってもらえるよう送り出したい」と語った。
OKITAは、プレス金型部品や機械部品の加工を手がける。マシニングセンター(MC)や数値制御(NC)旋盤などの工作機械を駆使した高精度な加工技術が評価され成長してきた。大手金型用部品メーカーが提供するネストガイドの70%は同社が供給するほどで、信頼は厚い。
ネストガイドを構成する部材は厚みや長さがバラバラ。また、加工時の段取り替えも多いため、加工プログラムの柔軟性が高く、作業性の高い汎用NCフライス盤を主力機種として活用してきた。しかし、同機を導入して30年以上が経過し「壊れる前に手当てが必要だ」(置田憲治社長)と考えていた。
代替機として、OKK製NCフライス盤「らくらくミル」を購入したが、同機専用NC装置だったため「自社独自の加工プログラムに最適化できるようにカスタマイズできないか」(同)と三菱電機メカトロニクスエンジニアリング(MMEG、名古屋市東区)に相談した。
MMEGがOKKと連携して仕様分析を進めた結果、同機へ標準NC装置を搭載できることがわかった。
そこで、制御装置を三菱電機製NC装置にリプレース。重宝している汎用NCフライス盤と同等の、使い勝手のいい加工機になり「今では、バリバリ仕事をこなしている」(同)と目を細める。これをきっかけに、別のNCフライス盤のリプレースも完了し現在もさらに1台検討中。「レトロフィットは機械を破棄せずに有効活用できる」(同)と高く評価する。
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▽事業内容=ネストガイド製造、金型用部品加工、金属加工
▽所 在 地=岐阜県郡上市八幡旭514
▽社 長 名=置田 憲治
▽電話番号=0575・66・1888
▽資 本 金=300万円
▽従業員数=14人
▽設立年月=1990年2月
ホーライは創立70年を超える老舗のリサイクル用機器メーカー。特にプラスチック向けの粉砕機や破砕機は幅広い業種で使用され、全国に顧客を持つ。
粉砕機は固定刃と回転刃でせん断する仕組み。刃物が摩耗すると振動や発熱が起こり機械寿命が縮まる。粉じんが発生して成形時に悪影響を与える恐れもある。中部地区の設備保守サービスを担う名古屋営業所には月30―40件の刃物研磨の依頼が入るという。福田憲博所長は「粉砕機は刃物が命」と強調する。
刃物研磨は音をよく聞きながら行う。勘や経験を頼る部分もある。ヘリカル刃や回転刃など、曲線を描く刃先には長年、豊田工機(現ジェイテクト)製の円筒研削盤を使用してきた。2019年、同機の経年劣化が目立つようになり豊幸(愛知県幸田町)に相談すると、損傷が激しく交換部品が多いためオーバーホールは高額になると査定された。
代わりに提案されたのが「リビルド機」。同社は自社でオーバーホールした「TOYODA」ブランド研削盤の販売サービスを手がけている。提案された1990年製の円筒研削盤は年式も対応可能な加工サイズも使用中のものとほぼ同じで、価格はオーバーホールするより魅力的だった。
納期の早さを決め手にリビルド機を選び、同年10月に納入。「メーカーのオーバーホールなら安心。メンテナンス保証も魅力」(福田所長)と、同社への信頼も購入を後押しした。リサイクル需要が伸び続ける中、同機が活躍する機会は今後も増えていくだろう。
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▽事業内容=リサイクル関連機器およびシステムの開発設計・製造・販売
▽所 在 地=(名古屋営業事業所及びサービス事業部)愛知県名古屋市熱田区一番1―14―27/(本社・工場)大阪府東大阪市高井田本通2―3―10
▽社 長 名=鈴木 雅之
▽電話番号=06・6782・1281
▽資 本 金=3600万円
▽従業員数=147人
▽設立年月=1960年7月
(日刊工業新聞 2020年9月10日付 10面~11面)
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